特集 2017年11月13日

いま私たちがスイートポテトを食べる意義

いまスイートポテトについて語ろうか
いまスイートポテトについて語ろうか
ここ数年、焼き芋機で上手に焼いた焼き芋を売るスーパーが増えている。労せず手軽においしい焼き芋が食べられるようになった。

紅はるかやシルクスイートのようなねっとり甘い品種の芋が気軽に手に入るようにもなっている。なんとありがたい時代だろう。

そんな甘くておいしい焼き芋を食べるごとについ「あー、もうこれスイートポテトいらないな~」と声にまで出していってしまう。

もちろん焼き芋とスイートポテトは違うものだということは分かっているが、承知の上でなおそう思うのだ。

いま改めて、スイートポテトを食べ見直してみたい。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:エンジニアがいらないものを持ち寄ったら懐かしいだけじゃなかった

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

焼き芋2品種とスイートポテト5品を食べた

用意したのは焼き芋を2品種とスイートポテトは5品。

焼き芋は、輪切りにしただけのものに、スイートポテトの仕上げである「卵黄を塗って焼く」を施したものを作って見た目はスイートポテトのようにした。同じ土俵で食べ比べてみたい。
ねっとり甘い品種の「紅はるか」と関東ではおなじみ「なると金時」
ねっとり甘い品種の「紅はるか」と関東ではおなじみ「なると金時」
ホイルにまいて160度のオーブンで60分焼いたよ
ホイルにまいて160度のオーブンで60分焼いたよ
切って、卵黄を塗り
切って、卵黄を塗り
焼き目をつける。おお、スイートポテトっぽい
焼き目をつける。おお、スイートポテトっぽい
スイートポテトは専門店である「らぽっぽ」と「松蔵」、スイートポテトが有名な洋菓子店「シェ・リュイ」から1品づつ(後半でセブンイレブンのものもご紹介しますね)
スイートポテトは専門店である「らぽっぽ」と「松蔵」、スイートポテトが有名な洋菓子店「シェ・リュイ」から1品づつ(後半でセブンイレブンのものも2品追加した)
そして試食する人間サイドは、デイリーポータルZの芋担当者(好きというだけです)3名が集まった。
左からべつやく、筆者古賀、石川
左からべつやく、筆者古賀、石川
芋への思いの熱い3名がそろったのでここからは対談形式でお伝えしていこう。

焼き芋とスイートポテトの違いをわかっておきたい

焼き芋っていまやもうすごく甘いじゃないですか。だから食べるたびに「スイートポテトはいらない」って思ってしまうんです。

もちろん焼き芋は焼いた芋でスイートポテトはお菓子で全く違うものなんですけれども、あらためて違うものであるということや役割の違いを分かっておきたいなと思って。
すみません、スイートポテトってどういうお菓子なんでしたっけ。原料は。
やわらかくしてつぶしたサツマイモに砂糖とあと生クリームとバターとバニラエッセンスを混ぜて成型して卵黄を塗って焼くのが一般的なレシピかな。
じゃあバターと砂糖と生クリームを引いたものがこれってことですか。
これ(スイートポテトからバターと砂糖と生クリームを引いたもの)
これ(スイートポテトからバターと砂糖と生クリームを引いたもの)
そうです。スイートポテトからしたら、足りてないのが焼き芋なんですよね。

まずはなると金時からいきましょうか。
(もぐもぐ)スイートポテトだと思って食べると甘くないですね。
焼き芋をスイートポテトっぽくしただけのもの、試食
焼き芋をスイートポテトっぽくしただけのもの、試食してるだけなんですが2人とも顔があほになった
甘くない!でもしっとりはしてる。
卵黄がはがれちゃうとこれただの芋ですね。
硬さがあるのでフォークを入れると卵黄部分がもっていかれてしまう! ただの芋だ
硬さがあるのでフォークを入れると卵黄部分がもっていかれてしまう! ただの芋だ
紅はるかのほうはどうかな。……あれ? あんまり甘くない……紅はるかなのに!?
「焼き芋がスイートポテト並みに甘い今、スイートポテトはどうなっているのか」を考える記事だというのに用意した焼き芋が甘くないという痛恨のミス。

しかし、だからこそ次に食べるスイートポテトの良さに気づけるのではないか。
ちなみに紅はるかは本気を出すとめちゃめちゃに甘い(べつやくさんによるこちらの記事</a>より)
ちなみに紅はるかは本気を出すとめちゃめちゃに甘い(べつやくさんによるこちらの記事より)

甘いのではなく風味があり柔らかいのがスイートポテト?

ここから間髪いれずにスイートポテトいってみましょう!
まずは「らぽっぽ」のスイートポテトから
まずは「らぽっぽ」のスイートポテトから
らぽっぽは大学時代によく食べましたよ。関西はけっこうあって、行く先々にあるんですよ。
今日は新宿の駅の中にあるとこに行きました。
新宿駅の構内にある店、とおくからかおりがして近くにあることをめちゃめちゃにアピールしている
新宿駅の構内にある店、とおくからかおりがして近くにあることをめちゃめちゃにアピールしている
切れ味は焼き芋にくらべるとこっちのほうが断然いいね、柔くてスプーンでさくっと切れる。あれ、でもそんなに甘くないね。
ほんとだ甘くない!
洋菓子っぽいかおりはしっかりする。生クリーム感もあってなめらかだね。
リッチさはありますよね。
それにしても甘くない! われわれは「スイート」という言葉にだまされてたのかもしれませんね。これは「芋に風味をつけたもの」ですよね。
あと「やわらかくて食べやすくしたもの」。
甘くないスイートポテトというものがあるのか。まずはそれに3人して衝撃を受けた。

焼き芋との違いは「より甘い」のではなく「風味がありやわらかい」という点だった。意外だ。

ただ甘いだけではない「お菓子」というもののギミックを感じる。

レゲエのスピリットで芋をリスペクトするスイートポテト

続いてもスイートポテトの専門店から、松蔵のもの
続いてもスイートポテトの専門店から、松蔵のもの
松蔵は流行りましたよね。
あ…こっちもあまくない…?ガツーンとした甘さがない…。蜂蜜??自然の甘さというか…。
こっちもやっぱりなめらかですね。あとなんだろう、酸味があるね。
酸味ありますね。さわやかにしてるんだ。
そういえばレモン風味のスイートポテトって文化ありますね。まさに「芋に風味をつけたもの」だ。
あと、これは商品として芋の味を大事にしてる感じはあるね。
芋からの逸脱がないですね。
すっごい甘くして、おいしくしてやる、みたいな野心みたいなものがない。
チラシには甘いのがお好きなら蜂蜜や黒蜜を、って書いてあります。
専門店だけあっていろいろなスイートポテトがある
そしていろいろな食べ方を紹介。「芋そのもの」として扱っている感が強い
甘くない自覚があるんだ。

あ、あとこれ、皮のところは芋のままなんだね。
裏っ返すと、芋!
裏っ返すと、芋!
芋をよく揉んでまた芋にもどしておきましたっていう感じだよね。
蟹グラタンみたいな状況。
芋へのリスペクト感じますね。
こっち(らぽっぽ)は形に芋へのリスペクトを感じないもんね。松蔵はリスペクトを感じる。
リスペクトって形を似せるっていことでいいんですかね!? もっとスピリットの部分を論じないといけないんじゃないですか!?
Wikipedia見るとスイートポテトってもともと、芋をくりぬいてその皮に詰めてたって書いてある。
えっ、そういう工夫をしたのって最近のことだと思ってました。

いわゆる昔ながらのスイートポテトってらぽっぽのやつみたいに画一的な形に成形されたイメージですよね。それ以前に皮付きの時代があったのか。

あ! チラシ、裏面に太陽と土にありがとう、って書いてある。
「太陽と土にありがとう」
「太陽と土にありがとう」
レゲエの世界観じゃないですか!
スイートポテトと絞り染めに親和性あったとはね…。
つまりこれスピリットの部分も完全に芋をリスペクトしてるってことですよね。
お菓子でありながら、形状、味、そしてパッションまでも原料である芋に寄せてきているというパターンである。こういうスイートポテトもあるのか。

足元を芋にくくりつけてあとは自由なスイートポテト

続いては代官山の「シェ・リュイ」。有名な洋菓子店のやつです。
フランス料理の店がやってる本気の洋菓子店のスイートポテト
フランス料理の店がやってる本気の洋菓子店のスイートポテト
あっ!これもリスペクトしてますよ芋を。めっちゃめちゃにリスペクトしている…!
裏がまんまお芋!
裏がまんまお芋!
皮を残すということが芋に対する敬意なのか。
あ、これ2層になってるんだ。下は皮だけじゃなく芋の部分が厚くとってあって、その上にスイートポテトが乗せてある。
下が焼き芋で上にスイートポテトが盛ってある
下が焼き芋で上にスイートポテトが盛ってある
これもあんまり甘くない。こっちも酸味みたいなさわやかさはあるなあ。
これ上はすごく洋菓子味ですよね。
なんかこう…らぽっぽと松蔵は芋から逸脱しないように慎重に作ってると思うんですけど、これは足元だけ(芋に)くくりつけてあって、体はもうばーっていってる感じがするんですよね。
スイートポテトという名前を冠するために足元だけ芋にしばりつけてあるんだ。
きびしく洋菓子性を追求しているのがわかる味である。しかし自由に飛び立ってしまうわけではなく、きちっと律儀に足元は芋においているのだ。芋に対しての義理がたさがある。

甘いスイートポテトはコンビニにある

それにしても…どれも甘くないね…。
こんなに甘くないものなのか…?
改めて、スイートポテトと言うのは「焼き芋を甘くしたもの」ではないんだなあ。
「甘さ」をやってるんじゃなくて「お菓子」をやってる。
概念が完全に覆されたね。焼き芋の甘いやつのほうが完全に甘い。
あ、でもコンビニのスイートポテトはちゃんと甘いよ。
撮影終了後セブンイレブンで買ってみました。あ、甘い。私の頭にあったスイートポテトはこれだ。
撮影終了後セブンイレブンで買ってみました。あ、甘い。私の頭にあったスイートポテトはこれだ。
ちなみに芋餡を使った「和風スイートポテト」もあった。栗饅頭の芋版だと思うのだが、「スイートポテト」をうたうということはやはりスイートポテトに人気があるのか。
ちなみに芋餡を使った「和風スイートポテト」もあった。栗饅頭の芋版だと思うのだが、「スイートポテト」をうたうということはやはりスイートポテトに人気があるのか。
甘いスイートポテトというのはもちろんあるわけですよね。その一方で甘くないスイートポテトというものがこうやって存在しているのが驚きだ。
あなた(芋)にとって私(スイートポテト)ってなんなの!?
もしかして…私(スイートポテト)のことはあなた(芋)にとって遊びなの!?

いや、なにしろ、スイートポテトを考えるポイントとして2軸あることが分かりましたよね。

ひとつは、形。皮の有無を焦点とした芋の形との距離感。芋そのものっぽさを抜くか保つか。
もうひとつは、甘さ。
こんなかんじか
横の甘さ軸と縦の形軸
焼き芋はかつて甘くなかった。スイートポテトは甘かった。
座標の2か所しか埋まっていなかった状態だったのだ。

しかし今焼き芋は甘くなり、そしてスイートポテトは甘くないものがある。
座標の4面がすべて埋まった状態である。

試食を通じ、いよいよ表題の「現代を生きるわれわれのスイートポテトを食べる意義」について考えていこう。

ポイントは「ゴリラ」であった。
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現代を生きるわれわれはスイートポテトを食べる意味が、本当にないのか?

スイートポテトって、戦時中に芋ばっかり食べさせられてた人たちが芋はもう食べあきたけど、こういうお菓子なら買うぞみたいなことですかね(※ちなみに事実としてはスイートポテト自体は明治時代からあり、作られた理由については現在不明のようです)
うちの父親はそういう理由で芋的なものは食べないね。
芋を劣ったものとして考える部分はイメージとしてある。「イモっぽい」とか。
スイートポテトにすることで良い芋じゃなくても、くそまずい芋でも美味しく食べられる手段だったってことですよね。
くそまずい芋…!
くそまずい芋…!
基本的には「工夫」ですよね。
ごめん「くそまずい芋」がちょっとパワーワードすぎて。
でもさ、そういう意味ではいま芋自体が進化しすぎてるんじゃないかな。焼き芋がかつてなくうまくなってる。
焼き芋が進化して「良いもの」になった結果スイートポテトの良さが陰るようになってきたのか。
だからといって、現代を生きるわれわれはスイートポテトを食べる意味が、本当にないのか?
そう!そこだよね。現代を生きる我々がスイートポテトを食べる意味…それは…。
酸味…?
意外な「味」がきたね。
芋ってさわやかさからは遠いけど……でも酸味を足してさわやかにしたところで、はたしてそこに尊さってあるのかな?
酸味を足す理由としてはやっぱり芋くささからの脱却…なんですかね。
スタイリッシュ要素としての酸味か。
酸味足すとゴリラ感なくなるもんね。
そうか!ゴリラ感か!!こっち(焼き芋)にはゴリラ感ありますもんね!!
焼いただけの芋にある最大の弱点、それは「ゴリラ感」!
焼いただけの芋にある最大の弱点、それは「ゴリラ感」!
そうだよ! 焼き芋はゴリラのお食事感あるんだ…! ゴリラ感の有無だよ!
芋っぽさとはすなわちゴリラ感…!
芋っぽさとはすなわちゴリラ感…!
芋っぽさ=ゴリラ感!!
芋っぽさ=ゴリラ感!!
焼き芋が恥ずかしいっていう「体」ってありますよね、ドラえもんとかサザエさんとか、女性キャラが焼き芋を買うのを恥ずかしがるシーンってある。あれはゴリラ感と…あとはやっぱりおならのイメージなのかな、マンガの表現として。スイートポテトにはおならのイメージないですもんね。
こっち(焼き芋)にはある。
スイートポテトを食べる意義というのが少しずつ3人のなかで浮き出るようになってきた。
以降、まとめていこう。
2017年現在におけるスイートポテトの意義

・ゴリラの食事っぽさを消すことができる
・おならのイメージを消すことができる

スイートポテトは良い場所で売れる

洋菓子店のスイートポテトはケーキに並べるからけっこう高いんですよね。あ、これ400円だ。立派ですよ。芋なのに。
「シェ・リュイ」のスイートポテトは税込み399円。お店のたたずまいもすてきです
「シェ・リュイ」のスイートポテトは税込み399円。お店のたたずまいもすてきです
やっぱり一手間加えて洗練させてってことだよね。
ケーキ屋さんに芋そのまま並べといてもね…。
買ったところで、あのおたく、ゴリラのお客様でもいらっしゃるのかしら? ってなっちゃうからね…。
2017年現在におけるスイートポテトの意義

・芋なのに立派に洋菓子店に並べられる
・ゴリラのお客様を招くわけではないというアピール

我々はゴリラにも人にもなれる

そう思うと、なぜせっかく芋感をそぎおとして洗練させたスイートポテトがまた芋の皮をつけて売られているのかという問題があがりますよね、なぜゴリラ方向に戻ってこようとしているのか。
退化だよね…。
われわれは土から離れては生きられない、みたいなことですかね。
レゲエのスピリットだ。
芋との違いをはっきりさせないといけないとは思うんだよねスイートポテトは。
芋に歩み寄っちゃいけない。
芋が食べたいなら芋を買えばいいわけだからね。
それでもスピリットはレゲエなのでつい芋をリスペクトしてしまう。
焼き芋を愛する私たちはもはやゴリラでいいんですよね。
何を求められているのかって問題なのかな、そして私たちは何を求めているか。
ゴリラなのか、洗練なのか。
芋なのか、菓子なのか。
いや、芋菓子か、スイートポテトに求められるのは。わかんなくなってきたな。
でもなにしろ私たちは今やゴリラにも人にも自由になれるってことですかね。
2017年現在におけるスイートポテトの意義

・ゴリラと人間を自由に行き来するための選択肢のひとつとしての存在

スイートポテトの先にあるなにか

……!もしかして……さらにその向こう側になんかあるんじゃないですか?
芋があって、スイートポテトがあって、その先になにかが。
栗だったら栗があって、くりきんとんがあって、モンブランがある…!
進化系があるのか、なんだろうそれは。
芋のモンブランてたまにあるけどね…。
モンブランに芋が擬態するのは栗へのあこがれだから、芋の純粋な進化ではないよね。
モンブランみたいな、もっと独自なデコラティブな世界がスイートポテトの先にはあるのかな。
うーん……でもケーキにはなるまいみたいなのはちょっとあるんじゃないですかね…芋には。
芋はケーキの世界に出ていっちゃうとそこはもう栗のほうが分がいいから。芋のところに強くアイデンティティを持っておかないと。
芋にアイデンティティを置きつつスイートポテトの先って行けるのかな…。
あ! でもだからさっきのスイートポテトは洋菓子感を強めながら芋に足をくくりつけていたのか。

スイートポテトって芋との距離感がすごい難しい食べ物なんですね。

2017年現在におけるスイートポテトの意義

・スイートポテトのその先を見据えた過渡期としての存在
・ケーキにはなるまいという芋に残された意識
芋との距離感をどうとるか。スイートポテトのスタンスは商品ごとにも違い、我々芋ファンにいろいろな選択肢を提供しているということが分かってきた。

そしてここで芋とスイートポテトの関係性を語るうえで避けてはとおれない話題も出てきた。そう。芋羊羹である。

芋羊羹がサイコパス

芋の文化圏としては、唯一ゴリラっぽくないもの…なのかな…? スイートポテトは。
芋羊羹は? ゴリラ?
あ! そうか、芋羊羹があった! あれはゴリラではないですね。だってあの形!
形をソリッドにするという方向性の芋菓子
形をソリッドにするという方向性の芋菓子
芋羊羹は完全に未来食ですよね。
あんなエッジ立った食べ物ないよ。角が立ったうどんっていうけど、芋羊羹こそ角の立ちはすごい。
積み木ですよね。
サイコパスだよね。物として隙がない。箱にも隙間がない。
あんな未来みたいな形して賞味期限1日とか2日っていうのもすごい。おもいっきり有機物。
生命としての個性を完全に殺した上で、食べると味はすっごい芋じゃないですか。すごいですよね。
スイートポテトのなかでもらぽっぽのやつみたいにかっつり成形されてるソリッドなやつは概念として芋羊羹に近いですよね。形が芋に近い有機的なやつとはもうジャンルが違う感じがする。
芋からゴリラ性をぬいたときにあらわれる無機的な様相、その最たるところが芋羊羹なのだ。
それでは、芋はどこからゴリラではなくなるのか。芋のゴリラ性についてさらに理解を深めたい。

芋はゴリラ感が強いがそのままで超うまい

豚汁のさつまいもはゴリラですよね。
汁ですからね、ゴリラですよね。
芋の天ぷらとか?あれもゴリラだね。
天ぷらってけっこうしゅっとしたおしゃれな食べ物なのに芋の天ぷらだけはゴリラだね。
かぼちゃも若干…でも芋ほどじゃないね。
ざくっざくっざくっつって切ってバーって揚げただけのイメージだからですかね?
かぼちゃは二つの角度から切ってるじゃないですか。そこに知性を感じるんですけど、芋はほんと切っただけだから。
エビもむいただけなのにね。
エビは形がかっこいいからなあ。それにくらべて芋は…。
根っこだからね…。
どうしても「掘ってきました」って感じしちゃうんですよ。
でも掘ってきた中でもさつまいもは独自だよね。だってあとの芋はそんなださくない。
じゃがいももアイダホとか田舎のイメージはあるんだけど、さつまいもほどではないよ。
じゃがいもはポテトチップがおしゃれ。
ゴリラ感ないよね。
じゃかいもは北海道への圧倒的なあこがれがあるから。
そうか、しかし九州だってあこがれの地なのになんでさつまいもはゴリラなのか…。
持って「ヤーッ!」ってやったときに最高に頭が悪いよ、さつまいもは。
ヤーッ!
ヤーッ!
さつまいも持って「ヤーッ!」ってやる機会ありますかね?
ヤーッ!
ヤーッ!
さつまいもは大変においしい芋であり人気もあるはずなのだがどこか抜けたイメージがつきまとう。それが愛しさとも言える食材なのだ。

そしてスイートポテトは悩んでいる

ひとつ思ったんですけど、芋は焼いただけでおいしすぎるんじゃないですか。
食べ物としの完成度が高い。
じゃがバターはどうしてもバターが必要じゃないですか。
サツマイモは焼いただけで十分甘い。そこに対してどうするか、スイートポテトはいよいよ距離感みたいなもので相当悩んでいるはず。
そうだよね、で、いまさらにサツマイモ自体がどんどんおいしくなって近づいてきてるから。昔はスイートポテトにありがたみがあったのかもしれないけど。
昔はあっただろう「くそまずい芋」っていうのが今やないんだもんね。
でも、甘さ控えめみたいな風潮もあるから、スイートポテト側としてはがんがん甘くしていくわけにもいかないんだろうね。
板ばさみなんですね。焼き芋はどんどん甘くおいしくなっていくなる一方、スイートポテトは自然の味を大事に甘さ控えめでという圧もある。
そうかスイートポテトは悩んでいるのか……。
2017年現在におけるスイートポテトの意義

・それはスイートポテト自身もまた迷っているのだ

そして思う、スイートポテトは自由なのだと

最終的にスイートポテトの苦悩に思いをはせて終わったが、冷静になって考えてみれば、食べたスイートポテトはどれもおいしかった。

甘さを押さえ芋の味を活かし、上手に風味をつけてある。焼き芋とは違うお菓子としての良さが最大限に発揮されている。

焼き芋が甘くなり手軽に買えるようになっているのは事実だ。しかし焼き芋は常にゴリラ感と隣合わせである。

一方スイートポテトには自由がある。洗練の方向にもいけるし、ゴリラ感をあえて残しレゲエの世界に生きることもできる。

おそらく焼き芋はさらに進化する(ゴリラのままで)。スイートポテトはそれを横目に自由な姿で生きながらえるのかもしれない。
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