特集 2016年6月7日

「ヘボい」が海を越えた日~ヘボコン・ベイエリア レポート

女の子がすごい

MFTでやるときも出場者の半分くらいは子供になるのだが、MFBAではそれどころではない、出場者の大半が小学生くらいの子供であった。
こうして見ると試合中も前列はみっしり子供である
こうして見ると試合中も前列はみっしり子供である
試合後に撮った記念写真。この回は全員子供だ
試合後に撮った記念写真。この回は全員子供だ
参加したがる子供は日本だと大半は男の子なんだけど、アメリカでは女の子のほうが多かった。
そしてさらに印象的だったのが、材料置き場に一緒にゴーグルを置いておくと、みんなちゃんとつけてから作業を始めること。
みんなは言い過ぎた。でも真ん中の二人はつけてるよね。
みんなは言い過ぎた。でも真ん中の二人はつけてるよね。
家でか学校でかはわからないけど、ふつうに工作をしたり、工具を使ったりする習慣があるのだろうなと思った。さすがDIYの本場。ヘボコンをやってみてわかる、国民性の違いである。

接着はテープ

不器用な人が物をくっつけようとしたとき、もっとも簡単で、そして見た目が悪くなる方法がこれである。接着剤を使わず、テープで済ます。
紐で結んだうえに、さらに貼る
紐で結んだうえに、さらに貼る
ラメ入りテープは装飾効果もある
ラメ入りテープは装飾効果もある
配線もテープでやる
配線もテープでやる
ヘボコンというのは「自分の不器用さを積極的に楽しんでいこう」という趣旨のイベントである。それに関しては説明してはいるものの、つたない英語だし子供はあんまり話聞いてないしで、伝わっていたのかどうかちょっとよくわからない。

しかしながら、ロボットのテイストだけは完全にいつものヘボコンになっているのが最高だった。やはりヘボは国境も言葉の壁も超えるのだ。

紐ブーム、テーブル叩きブーム

ヘボコンは基本的に相撲のルールを踏襲しているので、相手を押し出したり倒したりしたら勝ちだ。しかし今回は材料も限られており、また安いおもちゃは馬力も弱いため、土俵の真ん中で拮抗して膠着状態になってしまう試合が続出した。
そんな中で自然に流行したのが、紐である。
鵜飼の鵜匠のごとく巧みなヒモ遣いで敵を煽る
鵜飼の鵜匠のごとく巧みなヒモ遣いで敵を煽る
ほとんど標準装備みたいになってきた
ほとんど標準装備みたいになってきた
紐は、以前よりロボットを後退させるのに使うことが認められていた。しかし今回はエスカレートして、紐でロボットを持ち上げて敵を転倒させる作戦まで登場。司会者に「No lift!!」と突っ込まれる事態が頻発した。

そしてもう一つ、テーブルをバンバン叩いて衝撃を与え、膠着状態を解消する方法も編み出される。
最初は、動かなくなったら1回叩いてみるくらいだったのが、じょじょに叩くのがふつうみたいな感じになってくる。日本人ボランティアの間では「ほぼ紙相撲ですね」と話題になっていた。

形あるものはバラす。バラバラにしてから使い道を考える

これも日本とは違った傾向で、みんな「とにかく分解する」のだ。

日本だと、電動のおもちゃなりタミヤのキットなりをベースに、そこに追加の機能や飾りを追加していってロボットを作り上げることが多い。
でもアメリカ人は違う。目の前に動くおもちゃがあると、とりあえずバラすのだ。
電動のネズミが上下真っ二つになって使用されている
電動のネズミが上下真っ二つになって使用されている
空に向けて掲げられたコントローラは銅線がすべて切られ、電車も壁を破られ別のモーターが積まれている。豪快。
空に向けて掲げられたコントローラは銅線がすべて切られ、電車も壁を破られ別のモーターが積まれている。豪快。
いろいろなものが分解され、再び合体している
いろいろなものが分解され、再び合体している
ハンマーから棒を抜いて使っていた。どうやってやったんだそれ…
ハンマーから棒を抜いて使っていた。どうやってやったんだそれ…
あふれる独創性。これがDIYの本場アメリカか!と当初は素直に感動したものである。
しかし、それがのちのち、運営に牙をむいてくるとは、予想だにしていなかった……。

深刻な材料不足に

ヘボコンは技術力のない人のためのイベントなので、ロボットの自作といってもイチから作ることはない。
基本は市販の電動おもちゃの改造である。

そのためには材料のおもちゃが必要不可欠。
事前に日本の100均や中国の通販でそれなりに確保していたのだが、それでも十分ではない。一度使ったおもちゃの再利用をお願いしていた。

ところが、である。
「残骸」といった趣の作業場
「残骸」といった趣の作業場
みんながおもちゃをバラバラにするので再利用が困難となり、深刻な材料不足に陥ったのだ。

仕方がないので二日目は電動の材料を配給制にしたうえで、本当にスカスカになってしまった第6トーナメントは、リカバリ力の高い大人専用トーナメントとすることで乗り切った。
最初はこんな感じで潤沢な資源を使い凝ったロボットが作られていたのだが
最初はこんな感じで潤沢な資源を使い凝ったロボットが作られていたのだが
最終トーナメント、スカスカの材料の中から何とか生まれてきたマシン。見ただけで泣ける。アメリカの地で「侘び寂び」が自然発生した瞬間
最終トーナメント、スカスカの材料の中から何とか生まれてきたマシン。見ただけで泣ける。アメリカの地で「侘び寂び」が自然発生した瞬間
そんなぐあいで6回のトーナメントを行い、怒涛のうちにヘボコン・ベイエリアは幕を閉じた。

次のページでは活躍したロボットの紹介をする予定ですが、そのまえに今回のトーナメントとは離れて、個人的な体験を少し。

世界と対峙すること

今回、僕はヘボコンをやるために、アメリカに来たつもりだった。でも、とんでもない。そこには、「世界」があったのだ。

Maker Faireというイベントはいま世界で130以上のイベントが行われていて、今回出展したMFBAは、その発祥の地であり、総本山であり、そして世界最大のMaker Faireでもある。
だから言ってみれば聖地みたいなもので、ここにはアメリカ人だけじゃなく、世界中からものづくりを愛する人が集まってくるのだ。

ヘボコンは僕が一昨年始めたイベントで、いま25カ国くらいで開催されている。海外のイベントを開催しているのは現地のオーガナイザーで、僕はそのとりまとめをしている。とりまとめといっても、基本的に海外イベントとの接点は、Facebookメッセンジャーの、片言の英語でのやり取りだけだ(一度だけ香港に見に行った。あれも本当に楽しかった)。チャットで会話して、イベントが終わったら写真や動画を見せてもらう。それだけ。だから正直、世界にヘボコンが広がってるといっても、ちょっとピンと来ていないところがあったのだ。

でもMFBAでヘボコンをやっていると、いろんな人に声をかけられた。ネットでヘボコンのビデオ見たよ!という人、海外のイベントに参加したんだよ、という人。それから、海外でイベントを開催したオーガナイザーも、何人か会うことができた。
ミュンヘンからやってきたオーガナイザーとTシャツの交換をしたところ
ミュンヘンからやってきたオーガナイザーとTシャツの交換をしたところ
いままで、外国の盛り上がってるヘボコンの映像を見て「おー」くらいに思っていた。「なんかすごいことになってるんだなー」って、ちょっと他人事みたいな感じである。僕にはわからない言葉をみんな喋っているし、見たことのない場所で、歓声のテンションもちょっとなじみのない感じだ。映画の中の話みたい。

それが、ここに来てみたら急に目の前にその人がやってきて、握手を求められて、なんなら「最高の楽しみを思いついてありがとう」くらいまで言われるのである。英語でバーッて話されて半分くらい何言ってるかわかんないんだけど、それでも、この人はこれだけの熱意でヘボコンのことを話してくれている。目の前にいる人は違う大陸から来て、全然違う言葉を話す人で、それでもヘボコンを愛してくれているのだ。
右上にいるのがバレンシアのヘボコンの発起人のデイビッド。いま世界中で使われてるマイコン、Arduinoの創立者の一人でもある。
右上にいるのがバレンシアのヘボコンの発起人のデイビッド。いま世界中で使われてるマイコン、Arduinoの創立者の一人でもある。
このときようやく、僕はいま世界中で何が起こっているのか理解して、全身の毛が逆立つような思いがした。こういう人たちが世界におそらく何千人もいて、ヘボコンっていう一つのイベントを通して、同じ楽しみを味わったのだ。言葉が通じなくても、同じヘボいロボットを見て、笑ったのだ。

理屈では知ってたことだったから、新しく感想とかはない。ただ衝撃だけがあった。めちゃくちゃあった。それをしいて言葉で表すとすると、「やばい」だろうか。

世界、やばい。

これがアメリカに行って、僕が持ち帰った感想である。
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