特集 2016年4月14日

短すぎるガードレールって何なの?

こういうやつだ
こういうやつだ
短すぎるガードレールがある。

いったいなんでそういうのがあるのかを調べていたら、ガードレールにもそれぞれ役割や種類の違いがあリ、それらの見分け方もあることを知った。

それがとても面白かったので、紹介したいと思います。
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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短いガードレールってあるよね

ふと見かけて、あのガードレール短いな・・と思うことは誰しもあると思う。
例えばこういうやつ
例えばこういうやつ
これもだ
これもだ
こういうのもある
こういうのもある
道ばたにたたずむ、短すぎるガードレール。それは本当に役に立っているのか?と思わずにいられない。

最後のやつなんか、交差点の角のそれぞれに律儀に立っている。何なんだろう、これ。そうは思いませんか。

たいていは「巻き込み防止用」だ

そこで調べてみた。それから詳しい人にも聞いてみた。そしたら、たいていは「巻き込み防止」のために設置されているということが分かった。
たとえばこれでご説明
たとえばこれでご説明
左の道の奥からくる車が左折するとき、ちょっと失敗して早めに曲がり過ぎても、とりあえずガードレールにぶつかってくれる。それから、画面手前から右折する車が遅めに曲がり過ぎた場合も同じだ。ひとまず歩行者は守られる。

もちろん、その目的ならガードレールは長ければ長いほどいい。でも横断歩道の前には設置できないから、上の写真の場合はこの長さがギリギリなのだ。
同じ目的でこういうのもある
同じ目的でこういうのもある
交差点の端にこういうの立ってることあるでしょう。ガードレールじゃなくて車止めなんだけど、これも意味は同じだ。
この例はどうか?
この例はどうか?
信号の柱をピンポイントに守っているように見えるんだけど、意味としては逆で、柱に直撃しないよう、車を守っている。ガードレールの役割は、衝撃を吸収して車を守ることなのだ。そしてこの場合は、歩行者の巻き込み防止の意味もある。

偉そうに言ってますが、ぜんぶ調べたことや教えてもらったことです。でも、ガードレールっていろんな意味があるんだな、と思った。
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ガードレールには実は種類がある

いままで無分別に「ガードレール」と呼んでいたけど、これまでに出てきた写真のうち、本当のガードレールは実は1つしかない。他のは微妙に意味や役割が違うやつなのだ。
まずこれ。ガードレール。
まずこれ。ガードレール。
よく見るやつだ。これがガードレール。主目的はあくまで車を守ること。歩道と車道の境界にあれば、結果として歩行者も守られる。
これはガードパイプ
これはガードパイプ
横に延びる部分がレールじゃなくてパイプになってる。ガードレールと目的は同じなんだけど、見通しがいいのでたとえば後ろに隠れた子どもを見つけやすい。
これは横断防止柵
これは横断防止柵
これも普通はガードレールっていうと思うんだけど、ガードレールでもガードパイプでもなく、横断防止柵という。

車を守るためではなく、歩行者が横断歩道のないところで思わず渡っちゃうのを防ぐためにある。ガードレールほど強くない。
左と右で種類と目的が違う
左と右で種類と目的が違う
面白いのはこういうところだ。これ、左と右で目的が違う。

左側の白いのは、巻き込み防止用のガードパイプ。右側の緑色のは、横断防止柵。見分け方としては、支柱が車道の裏側にちゃんと隠れてるのがガードパイプだ。

こんなのまったく意識してなかった。なんとなくガードレールだと思ってた。でも違うんだ。

本当のガードレールにも実は種類がある

これでガードレールが分かった。でも実をいうと、ガードレールの中にも種類があるのだ。
たとえばこのガードレール
たとえばこのガードレール
ふつうのガードレールだけど、実はこれは「B種」のガードレールだ。

ガードレールは、強くなる順にC、B、A、Sの4種類に大別できる。街でふつうに見かけるのはCかBだ。どうやって見分けるか?
「B」って書いてある!
「B」って書いてある!
ガードレールの支柱を覗き込むと、上に「B」と書いてあった。でもいつも書いてあるとは限らない。そういうときは、レールの厚みを計ればいい。
だいたい3ミリ
だいたい3ミリ
レールの厚みが約2ミリならC種、3ミリならB種、4ミリならA種だ。もちろん厚いほど強くなる。いつでもガードレールの種類が分かるように、メジャーは常に持ち歩こう。
これがS種です
これがS種です
S種の見分け方は、山が3つになっていることだ。街中ではそうそう見かけない。この写真も高速道路で撮ったものだ。

S種の中にもさらに最強に強まったSS種というのがあって、レールの上にさらにパイプが通っているらしい。でも残念ながらまだ見たことがない。
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メーカーを見分けよう

「ガードレールマニアックス」みたいな内容になってきた。でも面白いんです、これが。もうちょっとだけ、ガードレールについての耳寄り情報をお届けしたい。

支柱を上から覗くと、こんなマークが書いてあったりする。
これは何だ
これは何だ
とうぜん気になると思う。これは神戸製鋼グループの「神鋼建材工業」のマークだ。

つまりマークを見ればメーカーが分かる。便利!
こういうのもある
こういうのもある
Sのマークは昔の新日鉄グループだ。いまは「日鐵住金建材」という会社になり、ロゴも変わっている。
じゃあこれは?
じゃあこれは?
残念ながらどこにもメーカーのマークが書いてない。

でも大丈夫。特徴的な上部のフェンスを見れば、これがJFE建材のオリジナル商品、「セーフティガードレール」だということが分かるだろう。もう商品単位で覚えちゃうのだ。

ただ、日鐵住金建材も「一体型ガードレール」というよく似た商品を出しているので、初心者泣かせといえる。そっちは足元にもフェンスがあるので気をつけよう。

継ぎ目に気をつけよう

他に気をつけたいのは、継ぎ目の部分だ。
レールの継ぎ目ですね
レールの継ぎ目ですね
この部分、レールどうしが一部重なっている。そして重ねる順番は、進行方向のレールが奥に隠れるようにするのだ。これが大事。

もし逆にして進行方向のレールが出っ張ると、車がレールに擦ったとき、車体の外側が薄くはがれて継ぎ目に刺さってしまう。何年か前にそういう事件があったでしょう。

ガードレールの継ぎ目にだれかがいたずらで金属片を挿したのかと思ったら、施行ミスだったという話。みなさんも工事を受注する際は気をつけましょう。
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新幹線は特別に守られている

短すぎるガードレールから始まってメーカーの見分け方まで分かるようになったが、最後に新幹線の話をしたい。

新幹線のガードはすごいのだ。新幹線は、線路が高架だったり地下だったりするのでそもそも近づくことができない。たまに地上から近づける場合は、隣の道路に設置されるガードレールは最強のS種になったり、あるいは二重になったりする。
これがその現場です
これがその現場です
新幹線が地上に顔を出す、JR日暮里駅。その上を通る橋は、ここだけ妙にフェンスが高い。
上から見るとこんなふう
上から見るとこんなふう
日暮里駅のこの橋の上からはたくさんの種類の電車が見られるので子どもたちに人気の場所だが、新幹線の通るところだけフェンスがじゃまで非常にみづらい。
非常にがっちり
非常にがっちり
車道の外側はガードパイプでがっちり守った上、歩道の外側も改めて分厚くガード。

絶対になにも落とさせないぞという強い意思が伝わってくる。
これも高すぎるフェンス
これも高すぎるフェンス
田町と品川の間にある札の辻橋もそうだ。

ここを通るたびに、フェンスが高くて新幹線が見づらいなと思ってたんだけど、逆だった。新幹線が通るからこんなふうになってたのだ。

ちなみにこういうのを落下物防止柵というらしい。この場合は人や車両が転落するのも防止しているんだろう。まったく分かってなかった。

短すぎるガードレール、ちゃんと意味がありました

なんとなく道路の脇に柵あるよね、と思っていたが、ガードレールや新幹線の上の落下物防止柵などなど、それぞれちゃんと役割があってそこにいるんだということに気がついた。

短すぎるガードレールにもちゃんと役割がある、ということを知りました。

なお、内容の多くの部分を知人の大貫剛さんに教えていただきました。ありがとうございました。

本が出ます

去年「街角図鑑」という、街で見かけるパイロンとかガードレールみたいななんでもないものを集めて図鑑にしたいね、という記事を書いたのですが、そんな本が本当に出ることになりました。
当サイトからはライターの伊藤さんと大山さんも執筆しています。発売は4月28日で、予約受付中です。よかったら読んでみて下さい。
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