特集 2016年4月6日

なんと美しき寄生虫の姿!左仲博士の博物画を鑑賞する

孤高の寄生虫学者、左仲博士

「山口 左仲(やまぐち さちゅう/1894~1976)

戦前から昭和後期にかけて寄生虫の形態・分類学に関する膨大な論文を執筆し、絶大な業績を残した寄生虫学者である。生涯で発見した寄生虫の新種は約1,400種にものぼる。

「この絵が使われている論文がこれです」
え?これ1冊全部?
え?これ1冊全部?
--厚い!厚くないですか?
「これは魚に寄生する『吸虫』という種類の寄生虫をまとめたもので300ページあります」
--論文ってふつうこんなにボリュームがあるものなんですか?
「いやいや、今だとせいぜい10ページとかですよ。当時だってここまでのはないでしょう」
原画はこんな感じで印刷されている。
原画はこんな感じで印刷されている。
--ここになんか米粒みたいなのがぐわーっと描き込まれていますけど……
うおーびっしり。
うおーびっしり。
「これは卵です。1個1個、その方向性にまでこだわって描かれている。普通ここまではしません。ここに子宮があって、このあたりに卵を抱えている、という事がわかる程度に図示します。というか目的はそれを伝えることなんですから」

--ですよねえ、こう言っては何ですけどオーバースペックですよね。

「ここまでくるともう左仲さんのセンスというか形態へのこだわりですね」

この春は整理された原画の中から「吸虫」と「条虫」という種類の原画を展示する。
ほんの、ほんの一部です。
ほんの、ほんの一部です。
まだまだ展示を待っている原画たちがこんなに。
まだまだ展示を待っている原画たちがこんなに。
しかしあれだけの論文を執筆しながらこの精度にして膨大な量の原画をいったいどうやって描いたのか。
著書のごく一部。1000ページを超えるものも。
著書のごく一部。1000ページを超えるものも。
「実は左仲さんは自分では描いてないんですよ。画工を雇ってね、描かせていたんです」

--なんと、ディレクションですか。

左仲が描画を指揮している姿をとらえた貴重な写真が残されている。終戦後、進駐軍の依頼でマラリア対策のために蚊の研究をしていた時の様子だ。
Mosquito Fauna of Japan and Korea(1950、モノグラフ)より。立ち姿で監督しているのが左仲博士。
Mosquito Fauna of Japan and Korea(1950、モノグラフ)より。立ち姿で監督しているのが左仲博士。
「この写真は蚊ですけど、寄生虫を描く時も基本的には一緒です。顕微鏡を使って覗きながら描く」
展示されている左仲愛用の顕微鏡。プリズムと鏡を用いた「アッベ式」という描画法で覗きながらトレースする。
展示されている左仲愛用の顕微鏡。プリズムと鏡を用いた「アッベ式」という描画法で覗きながらトレースする。
「多い時で7人の画工を雇って絵を描かせていました。使っていた顕微鏡はドイツのカール・ツァイスのもので、当時は家が買える程の値段だったといいます」
左仲のスケッチ(左上)とそれをもとに画工によって描かれた画。各器官のサイズや構造まで細かく指示されている。
左仲のスケッチ(左上)とそれをもとに画工によって描かれた画。各器官のサイズや構造まで細かく指示されている。
--7人で、家が買えるような顕微鏡使って、それは効率的ですねー。ってちょっと待ってください。コスト感覚がおかしくないですか?左仲博士は石油王か何かですか?

「いや、もう資金はとにかく豊富でしたからね。養父がすごい人で」

--すごい養父!?
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