特集 2015年12月29日

ヘボコン総集編2015~山口/富山編

富ヘボコン
次にレポートするのは、10/12に開催した、技術力の低い人限定ロボコン in 富山、通称:富ヘボコン。ヘボコンが世界に広まるきっかけとなった文化庁メディア芸術祭、その巡回展の一環で呼んでいただいたものである。
百貨店と商店街の間の広場で開催。初の完全野外イベントでもあった。
百貨店と商店街の間の広場で開催。初の完全野外イベントでもあった。
このイベント、個人的にいろんな意味で忘れられないイベントとなった。その最初の理由が、これだ。

黒船到来

今年の夏ごろ、編集部あてに1通の英文メールが届いた。差出人はアメリカのジャーナリスト、スティーブ。秋ごろに日本をめぐって取材旅行をする予定であり、その一環としてヘボコンを取材したいのだという。

その後何度かのやり取りで、彼は大手科学雑誌Popular Scienceの記者であるということがわかり、そして、取材がてらこの富ヘボコンに出場者として参戦することも決まった。

世界に広がるヘボコンであるが、日本の大会にわざわざ海外から出場者が来るのは初めてのことだ。
イベント前日に食事がてらインタビューを受けた時の様子。記念にあげたヘボコンシールとDPZシールをさっそく取材ノートに貼るスティーブ
イベント前日に食事がてらインタビューを受けた時の様子。記念にあげたヘボコンシールとDPZシールをさっそく取材ノートに貼るスティーブ
富山のうまい魚(ただの自慢)
富山のうまい魚(ただの自慢)
直前まで原発の取材で福島にいたというスティーブ。一夜明けてヘボコンである。取材テーマの落差が激しすぎやしないか。

材料は秋葉原と富山のホームセンターで調達ずみとのことだが、前日時点でまだロボットは製作中。その割にはけっこう遅くまで一緒に飲んでいた。

ちゃんと完成するんだろうか?そんな心配をよそに、翌朝になって彼が披露したのが、このマシンである。
命名「ペリ子」
命名「ペリ子」
「秋葉原でパーツを買った」って、電気街のほうかと思ったらこっちか!

スティーブいわく、この子の名前はペリ子で、アメリカからやってきた。もちろん由来はあのペリーである。

船のほうは電動でオールをかいて進むおもちゃを元に、黒船にちなんで黒くペイントしてある。わざわざ水しぶきがついてるのも、要らん芸の細かさだ。
反対側には「SARATOGA」と書いてある(米海軍の空母)。大砲からは愛を発射し、平和的に日本のロボを攻撃する。…という、設定だ。

コンセプト、そして相撲に関係のない設定をガンガンに盛ってくる感じ。このアメリカ人、完全に日本のヘボコンカルチャーになじんできている…!
元のおもちゃは水上用。土俵(ベニヤ)の上ではオールをかいても前進せず、「ホテルでは動いたのに!」とか言いながら急きょタイヤをつけ始めるスティーブ。
おもちゃは水上用。木の板の上ではオールをかいても前進せず、「ホテルでは動いたのに!」とか言いながら急きょタイヤをつけ始めるスティーブ。
最終的には車輪をつけて前後に動きやすくし、オールで地面を押して進む方式に。
最終的には車輪をつけて前後に動きやすくし、オールで地面を押して進む方式に。
しかし、この改造が、実戦では完全に裏目に出ることになった。

ペリ子、来襲

スティーブの初試合は1回戦第5試合。対するはこちらのロボット
エレクトリックさつまいも(たぬきだらけ)
エレクトリックさつまいも(たぬきだらけ)
隣の石川県をアピールするためにやってきたロボ。アンテナも基板ももちろんどこにもつながっておらず、飾りである。前面には主砲として、3Dプリンタで作った銃(の文字)。
足回りはヘボコンでよく使われるキャタピラのキットだが、作り方が間違っているのか、なぜかこのマシンだけ歯医者のドリルみたいな甲高いモーター音を立てる。

そんな2体の戦いを、(3秒で終わる試合だがあえて)動画で見ていただこう。
ペリ子を、一瞬のうちに黒船ごと場外へ押し出したエレクトリックさつまいも。車輪をつけて動きやすくしたのが完全に裏目に出た。
スティーブいわく「戦うまでもなく、相手を見た瞬間に『終わったな』と思った」とのことで、まさにその予感通りの結果となった。
取材チームの皆さんと一緒に
取材チームの皆さんと一緒に
黒船を名乗りはるばる米国からやってきて、3秒で敗退したスティーブ。

終了後に改めて話をしたところ、「僕は本当にヘボコンの精神にのっとったロボットが作れていたのか」「ちょっと高度すぎたのではないか」等と心配していた。3秒で負けたくせに!

「そんなことは絶対ない。あなたはこの上なくヘボかった」と声をかけておいた。こんな罵倒にしか見えないフレーズが励まし文句になるのだから、我ながら不思議なイベントである。(ちなみに日本で他にもたくさん取材をしたため、ヘボコンが記事になるのは来年の6月くらいとのことです!)

仮装大賞化するヘボコン

さて、富ヘボコンの見所はペリ子だけではない。

前々から思っていたのだが、ヘボコンはロボコンというよりむしろ「欽ちゃんの仮装大賞」に近いのではないか。素人がでてきてパフォーマンスを披露し、その工夫や完成度とともに、素人臭さや手作り感まで含めて楽しむバラエティ番組である。人が演じるか、ロボットが演じるかの違いだけだ。

そしてそれが回を重ねるごとにエスカレートし、ピークを迎えたのが、この富ヘボコンであったように思う。
気になるにもほどがあるロボット。おばちゃん82号(総曲輪ノリスターズ)
気になるにもほどがあるロボット。おばちゃん82号(総曲輪ノリスターズ) ※総曲輪(そうがわ)は地名です
ヘボコンでは毎試合、対戦の前にロボット紹介の時間がある。このロボットの紹介の様子を書き起こしで見ていただこう。
「このロボットはおばちゃん82号です。今は亡き総曲輪ビリヤードのおばちゃんをテーマにしていて…」
「このロボットはおばちゃん82号です。今は亡き総曲輪ビリヤードのおばちゃんをテーマにしていて…」
「遺影を使って…ちょっと暗い話ですいません。遺影を使わせていただいてですね、こうしてロボットにして…」
「遺影を使って…ちょっと暗い話ですいません。遺影を使わせていただいてですね、こうしてロボットにして…」
会場の空気を冷やしてしまったことを謝罪する出場者。しかしその後…
「でたー!本人登場!!」
「でたー!本人登場!!」
おばちゃん『ヘボコン最高ー!ご唱和ください』
おばちゃん『ヘボコン最高ー!ご唱和ください』
遺影を出しての謝罪からの本人登場、そしてキメ台詞(このあと毎試合でてくるたびに言った)。

ロボットバトルイベントで本人登場。「本人」とは何なのか、その概念について考えさせられる展開であった。

キャラで掴んだ勝利の味

おばちゃんのインパクトはこのパフォーマンスだけではない。このまま試合の様子もご覧いただこう。

対戦相手は宙2どりーむ(宙2どりーむ)。ロケットパンチ(吹き戻し)を5連装。二人のパイロットがそれぞれ左右の車輪を手回し発電機で操縦、シンクロ率が命。
試合の様子は動画で!
飛び出すロケットパンチ、おばちゃんの口から垂れるスライム、そして膠着する試合展開…。

結局、タイムアウトにより、判定は観客投票に。多数決により、おばちゃん82号の勝利となった。

あの『ご唱和ください』につられてみんなご唱和してしまったに違いないだろう。
他にも殺された姉妹の復讐に来た(設定)り
他にも殺された姉妹の復讐に来た(設定)り
先頭につるされたメザシを2回戦ではくさやに換装、匂いでステージの全員に無差別攻撃を仕掛けたり
先頭につるされたメザシを2回戦ではくさやに換装、匂いでステージの全員に無差別攻撃を仕掛けたり
もうヘボいとか技術力が低いとか、そういうのをすっぱりあきらめたうえで、浮いた労力をすべて「トリッキーなものを作る」に集中させている感があった。そしてそのエネルギーがあまり余ってパフォーマンスにまで。ここがヘボコンの一つの到達点か、という感慨を感じた大会でした。
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