特集 2015年10月23日

果物をかわいいガスタンクにする

ガスホルダライズされたフルーツたち

まずはとにかくガスタンク化された果物たちを見てもらおう。
まわりに筋交いが入った柱を立てるだけで、あら、ガスタンクに。
まわりに筋交いが入った柱を立てるだけで、あら、ガスタンクに。
カキもガスタンク化。
カキもガスタンク化。
ミカンはよりガスタンク的フォルムをしているのでしっくりくる。と思う。
ミカンはよりガスタンク的フォルムをしているのでしっくりくる。と思う。
おどろいたのは、ラフランスがなぜかすごくガスタンク向きだったこと。比較的いびつなのになぜかガスタンクに見える(見えるんですぼくには)。
おどろいたのは、ラフランスがなぜかすごくガスタンク向きだったこと。比較的いびつなのになぜかガスタンクに見える(見えるんですぼくには)。
プロポーションといい、毛が生えてる点といい、チャレンジだったのはキウイ。
プロポーションといい、毛が生えてる点といい、チャレンジだったのはキウイ。
かわいい。自分でやっておいて言っちゃうのもなんだが、かわいい。

正直、みなさんにとってこれらがガスタンクに見えていただいているのかどうか自信がないのだが、かわいいのでいいことにしようと思う。というか、これが「かわいい」というのが共有されているのかどうかも微妙ですが。

あと、「ガスタンク化する」を「ガスホルダライズ」と呼ぶことにする。

一般的に「ガスタンク」と呼ばれているあれは、業界では「ガスホルダー」だそうです。

「ガスホルダー化」なので「ガスホルダライズ」。「ガスタンカイズ」でもいいんだけど「ダライ」のあたりの響きが気持ちよかったので。

「理想の構造物」ガスタンク

ガスホルダライズされた果物をご覧いただきたかっただけなので、この記事はこれで終わりにしてもいいんだけど、そもそも、なんでこんなことをしようと思ったのかの説明はしよう。

それは、ガスタンクがかわいいからです。
かわいい。そしてよく考えると不思議。
かわいい。そしてよく考えると不思議。
ルネッサンスの夢想的建築家の間では、球体の建築が究極とされた、という話を聞いたことがある。

完全無欠で真理を表す立体、それは球である、と。

当時の技術では巨大な球体をつくることはむずかしかったはずだ。しかし、今やそこらじゅうにその「理想の構造体」がしれっとあるのだ。ガスタンクとして。
京セラドーム大阪のとなりに、しれっと理想の構造体。しかもみっつも。
京セラドーム大阪のとなりに、しれっと理想の構造体。しかもみっつも。
こちらは長崎駅からほど近い場所にいらっしゃるガスタンク。路面電車と球体の組み合わせが旅情をかき立てる。「ぶらり日本一周・ガスタンク紀行」とかやりたい。
こちらは長崎駅からほど近い場所にいらっしゃるガスタンク。路面電車と球体の組み合わせが旅情をかき立てる。「ぶらり日本一周・ガスタンク紀行」とかやりたい。
住宅街のすぐそば、国道の脇、川のそば、実に全国いろいろなところにひょっこりと顔を出すガスタンク。

みんな見慣れちゃってスルーしてるけど、あれ、そうとう不思議な風景だよ。ルネッサンスの人連れてきたらびっくりすると思う。

とはいえ、他に類のないフォルムと、のっぺりとした大きな表面積を持つことが醸し出す違和感というものはある。それを軽減しようとしてか、いきおい表面に絵が描かれちゃうタンクがある。

岩手と千葉のスイカ柄のガスタンクは有名だ。岩手のやつは先日解体されちゃったようですが。

ぼくは見かけるたびに写真を撮っているのだが、そういう「ガスタンク観賞」をしている人はぼくだけではない。誰あろう、我らがデイリーポータルZのウェブマスター林さんもその一人だ。その名も「ガスタンク2001」というサイトを作っている。

ガスタンクのおもしろさは「気体貯めてんだろうなー」って直感的に分かる形をしている点にあると思う。

よし、クッション材をガスホルダライズしよう

で、そんなガスタンク趣味をもつぼくは、ある日「あ、これガスタンクみたいだ」って思ったのだ。果物見て。
果物買うと、傷むのを防ぐためにこういうクッション材に包まれているじゃないですか。
果物買うと、傷むのを防ぐためにこういうクッション材に包まれているじゃないですか。
そのクッション材の網目がですね、
そのクッション材の網目がですね、
ガスタンクの柱の筋交いに見えたんです。見えちゃったのです。
ガスタンクの柱の筋交いに見えたんです。見えちゃったのです。
「恋に落ちると、街中で見かける後ろ姿がしばしばその人に見えちゃう」ということがあるらしい。同じ理屈だ。ガスタンクを愛でていると、見えちゃうのである。いろんな物がガスタンクに。

なかなかに素っ頓狂な連想に思えるかもしれないが、果物が球体に近い形をしているという事実は、神がつくりたもうた真理の象徴なのではないか。

ないか。

で、まあ、せっかくなんだからこのクッション材をガスホルダライズすればいいじゃないか、と思ったのでした。
そんなわけで、リンゴのサイズにあわせて柱を切る。
そんなわけで、リンゴのサイズにあわせて柱を切る。
ABS樹脂の棒材を買っちゃったので、なんか切断面がきれいにならないぞ。
ABS樹脂の棒材を買っちゃったので、なんか切断面がきれいにならないぞ。
と、意気込んだはいいが、ぼくはそれほど工作経験がないので素材選択を誤った感がある。

以前同じように土木構造物をモチーフに工作した、ガントリークレーンの形の指輪「キリング」の際は素材で悩む必要はなかった。指輪なので当然シルバーになる。
これが「キリング」。指輪のように最初から素材の選択肢が限られてるのって、ある意味楽なんだな、と今回気づいた。
これが「キリング」。指輪のように最初から素材の選択肢が限られてるのって、ある意味楽なんだな、と今回気づいた。
ところが今回のように、純粋な「工作」となると、素材選びが問題になる。たぶん、ここに工作経験の差が出るのではないか、と思った。

一瞬、今回もシルバーで作ろうかと思ったが、これだけの大きさの物を銀でそろえたら材料費だけでどれだけになることやら…
やはり土木・インフラ構造物がモチーフともなればしっかり作りたい。ならば金属か。彫金の技術でできるし、と思ったが、疲れるんだよね、金属加工って。
やはり土木・インフラ構造物がモチーフともなればしっかり作りたい。ならば金属か。彫金の技術でできるし、と思ったが、疲れるんだよね、金属加工って。
扱いやすいのは木材だが。なんかなー、木使うのは違う気がするんだよなー、ガスタンクに。
扱いやすいのは木材だが。なんかなー、木使うのは違う気がするんだよなー、ガスタンクに。
木材コーナーで小一時間悩んだが、やめた。切るのもつなぐのも比較的楽だし、丈夫だしいいんだけど「インダストリアルなモチーフをその対極とも言える木の温もりで表現することで」云々、みたいでやだな、と思っちゃったので。

いや、だれもそんな批評しやしないのは分かってるんですが、なんかぼくの中の「工業製品万歳魂」がどうしても許さなくて。っていうか、木材だって十分工業製品なんですけど。それはわかってるんですが。
悩んだ末、樹脂にしました。
悩んだ末、樹脂にしました。
おそろしく共感して頂きづらい葛藤の末、樹脂にしたんですが、樹脂による工作経験がないので、これでよかったのかどうか。ABS樹脂と塩ビにしちゃったんですよ。接着うまくいくのかなあ。ウレタンの方が簡単だったかな。

って、いま書いてて気がついたんだけど「クッション材をガスホルダライズ」って言ってるんだから、あのクッション材の素材でやるべきだったのかも。しまった。

そして工作記事の経験もあまりないので悩む

タンク外周の保守点検用キャットウォーク的な場所のために、サークルカッターで塩ビ板(だからどうして塩ビ板にした)を輪に切る。
タンク外周の保守点検用キャットウォーク的な場所のために、サークルカッターで塩ビ板(だからどうして塩ビ板にした)を輪に切る。
同様に筋交いも切り、貼り付けるのだが、
同様に筋交いも切り、貼り付けるのだが、
案の定、接着剤も両面テープもうまく付かないので、耐久性と仕上げのきれいさを度外視して、表面を荒らしてグルーガンで強引にくっつけた。
案の定、接着剤も両面テープもうまく付かないので、耐久性と仕上げのきれいさを度外視して、表面を荒らしてグルーガンで強引にくっつけた。
柵も必要だろう。建築・構造物がそう見えるのは柵があるからだ。
柵も必要だろう。建築・構造物がそう見えるのは柵があるからだ。
とはいえ、柵、めんどくさい(なので他のやつは結局省略した。無念)。
とはいえ、柵、めんどくさい(なので他のやつは結局省略した。無念)。
工作経験が乏しいということは、工作記事の経験も少ないということだ。

むずかしいよねえ、工作の記事。特にDPZの場合「作り方説明」してもしょうがない。基本的に誰も作ろうと思わないものばかりをみんな作るので。

なので、乙幡さんの記事とかほんとすごいと思う。読んで笑える工作記事ってすごいよ。
で、そんなこんなでできたのが1ページ目のこのリンゴ・ガスホルダライザーだ。
で、そんなこんなでできたのが1ページ目のこのリンゴ・ガスホルダライザーだ。

クッションじゃないじゃないかこれ

で、作ってみて、いまさら気がついたのは、これぜんぜんクッションじゃない。
リンゴは生身のままテーブルに乗ってるだけだ。ガスホルダライザーはまるで接触していない。
リンゴは生身のままテーブルに乗ってるだけだ。ガスホルダライザーはまるで接触していない。
せいぜい転倒防止ぐらいだ。それもリンゴ側が本気で転がったらひとたまりもない。
ならば筋交いを内側に貼ることで、テーブル面から浮かせられるのではないか。
ならば筋交いを内側に貼ることで、テーブル面から浮かせられるのではないか。
ほら、内側の筋交いに支えられて、浮いている。
ほら、内側の筋交いに支えられて、浮いている。
カキ・ガスホルダライザーも同様にちゃんと浮かせたぞ。
カキ・ガスホルダライザーも同様にちゃんと浮かせたぞ。
そこで、ご覧のように筋交いを外側ではなく内側に貼ることで、そこに果物がやんわり乗っかって、クッションらしくなったのだが。

だけど、これ硬い塩ビの角に果物が当たっちゃって、ぜんぜんクッションじゃなかった。やはり木の方が良かったか。つくづくなぜ塩ビにした。

あと、ガスタンクを愛でる立場から言っても、筋交いに曲げの力がかかるってどうなのよ、っていうのもある。

今後の研究が待たれる。
まあでもかわいいからいいか。
まあでもかわいいからいいか。
果物のクッション材からあらぬ連想で工作したガスホルダライザー。

かわいいので満足なのだが、もっとガスタンクらしくなる食材があるのではないか。

タマゴってつまり「タンク」だもんなあ

工作中、冷蔵庫のドアを開けて「あっ!」ってなった。
工作中、冷蔵庫のドアを開けて「あっ!」ってなった。
フルーツ・ガスホルダライザーがそれらしく見えない大きな理由のひとつは「色」だと思う。

ガスタンクって一色だ。前述したようにイラストが描かれている場合もあるが、基本的には柱もタンク本体も同じ色だ。だいたい薄緑色。

リンゴ・ガスホルダライザーは赤に、ラフランス・ガスホルダライザーは緑に塗るべきではないのか。ええ、そのとおりだ。

でもほら、工作の中でも塗装って難しいじゃないですか。しかも今回考えなしにABS樹脂と塩ビの混合というやっかい素材選びをしてしまったのでなおさら塗るのがむずかしい。一瞬お隣さんにお願いしようかと思ったけど、それにしては本体の出来が悪すぎる。申し訳なさ過ぎる。

でも、これがタマゴなら解決だ。形はタンクそのものだし、色も白い。一石二鳥。
ただ、サイズが小さくなると誤差が目立つのよね。
ただ、サイズが小さくなると誤差が目立つのよね。
で、できたのがこれ。それなりにかわいいぞ。かわいいのでテーブルじゃなくて赤い椅子の上で撮影したぞ。
で、できたのがこれ。それなりにかわいいぞ。かわいいのでテーブルじゃなくて赤い椅子の上で撮影したぞ。
買ってきた材料が許す限りの数を作った。たくさんあるとかわいさも増す。100個ぐらい作りたい。
買ってきた材料が許す限りの数を作った。たくさんあるとかわいさも増す。100個ぐらい作りたい。
考えてみれば、タマゴは「タンク」そのものだ。ちなみに「卵形消化タンク」というタンクがある。ガスじゃないけど。

それにしても、こうして改めて見てみると、タマゴの形ってすごいな。こんなにきれいな形の物がスーパーに並んでるのって、ガスタンクがしれっと街の風景として存在してるのと似てる。
冷蔵庫のタマゴホルダーがこんなだったらいいのではないか。
冷蔵庫のタマゴホルダーがこんなだったらいいのではないか。

夏にスイカで再チャレンジだ

最後のタマゴは、なんか「逃げた」感じがする。素材選びをやりなおし、あらためてチャレンジしたい。ちゃんとクッション性も備えたフルーツ・ガスホルダライザーに。ゆくゆくはスイカも。
ガスタンクの写真を整理していたら、福島駅そばのこんなものが。まさにフルーツモチーフ。無意識にこれに連想させられていたのかもしれない。
ガスタンクの写真を整理していたら、福島駅そばのこんなものが。まさにフルーツモチーフ。無意識にこれに連想させられていたのかもしれない。
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