特集 2015年9月30日

山口ミニメーカーフェアで「わけのわからない楽しさ」を体験した

なぜこんなものを作ったのか?
なぜこんなものを作ったのか?
面白いんだか、怖いんだか、きもちいいんだか、不安なんだかよくわからないけど、そんな感情がいっぺんにくると「わー、なんだこれ!」と笑ってしまうときがたまにある。

感情の奥底にうったえかけてくるような、えたいのしれない、わけのわからない楽しさ。

というわけで(どういうわけだ?)先日、山口で行われたミニメイカーフェアのわけのわからない楽しさのリポートです。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

隔年でやってる山口のミニメイカーフェア

先日、DIYの祭典であるメイカーフェアが、山口県山口市で行われた。当然、我々デイリーポータルZも、札束風呂やヘボコンを引っさげて山口まではせ参じた。
すでにおなじみ、札束風呂
すでにおなじみ、札束風呂
デイリーポータルZからは編集部の林さん、石川さん、安藤さんと、ライター、べつやくさん、私西村が参加。
デイリーポータルZからは編集部の林さん、石川さん、安藤さんと、ライター、べつやくさん、私西村が参加。
デイリーポータルZのブースでは、札束風呂や、ドローン本当に頭をつかうゲームなどを展示した。

写真が無いのは、写真をうっかり撮り忘れていたからだ。

メーカーフェアのリポートなので、自分のところの紹介はそこそこでもいいだろう。すみません。

それよりなにより銀色の象はなんなんだ

メイカーフェアが行われている山口情報芸術センターにはめちゃめちゃ広い芝生の広場があるのだが、そこでひときわ異彩を放っていたのがこの銀色の象だ。
なんなんだこの象は
なんなんだこの象は
象からのびるひもを引っ張ると鼻がくるんとまわる。なんてことはない。仕組みとしては単純なのだが、原始的な楽しさがある。
ひもを引っ張る順番をこどもがなかなか譲ってくれない
ひもを引っ張る順番をこどもがなかなか譲ってくれない
この象を作ったのは、山口県周南市在住のこのおじさん。山崎和雄さんだ。
とにかくなんでも作っちゃうのがすきなおっちゃんみたいだ
とにかくなんでも作っちゃうのがすきなおっちゃんみたいだ
--この象、おとうさんが作られたんですよね? どうして象なんですか?
「動物園の象が死んでいなくなって、新しい象がなかなか来ないから、代りに作ったんだよ。でもね完成したとたんに象が来たの」

徳山動物園で2012年、それまで動物園にいた象のマリが亡くなったあと、市民をあげて、新しい象を呼ぼうという話があったらしい。

しかし「象がこないから作っちゃえ」って発想がなかなか無いというか、あさっての方向を向いており、とっても爽快である。
自作のオブジェ「もしかしてこれ炭素の結晶モデルですか?」って聞いたら「いや、サッカーボール」といわれた
自作のオブジェ「もしかしてこれ炭素の結晶モデルですか?」って聞いたら「いや、サッカーボール」といわれた
山崎さんは、自宅近くに自作のUFOなどのオブジェを置いた「宇宙の駅」という場所を作っており、その界隈では有名な方らしい。

山崎さんの作ったものは象だけではない、このやたらでかい木馬もそうだ。
やたらでかい木馬はこわおもしろい
やたらでかい木馬はこわおもしろい
山崎さんのつくったこの木馬。乗ると見た目以上にこわい。しかも、前後にかなり揺れる。自分の意のままにならないダイナミックな動きに身の安全を委ねなければいけないという状況は、遊園地の海賊船みたいなスリルがある。

あと、目線って自分の身長より高くなるとそれなりにこわくなるんだな。という、いらん気づきを得た。
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結果にコミットしたら恥ずかしくなった

さて、屋外の展示でもうひとつふれておかなければいけないのはこちらだ。
阿蘇カラクリ研究所の福山さん
阿蘇カラクリ研究所の福山さん
当サイトでも過去に登場していただいたことのある阿蘇カラクリ研究所の福山さんだ。
結果にコミットしそうな回転台きた
結果にコミットしそうな回転台きた
阿蘇カラさんの新作はこちら「結果にコミットしそうな回転台」だ。

こちらに乗ってください。と促されるまま回転台に乗るとどこかで聞いたことがあるあの音。
!
!
!
!
恥ずい。

おもしろいなーってなったあと、恥ずい。という感情が万里の波濤を越えてやってきた。
そもそも、ぼくもライザップ、あ書いちゃった。まいいや。ライザップのCMのマネをしたくて、回転台に乗せてくれてクルクル回してくれる立体駐車場はないかな? なんて思ってた矢先だった。

でも実際にやってみるとびっくりするほど照れてしまうことがわかった。

ボルトより象のほうが早い

こちらの「どうぶつとダッシュ」(宇部市公園整備局 動物園リニューアル推進室/株式会社アワセルブス)という展示。これも面白かった。

手前のタッチパネルで動物を選ぶと、その動物とダッシュで競争ができるのだ。
子供たちがずーっと走ってた
子供たちがずーっと走ってた
動物を選べという
動物を選べという
位置について、ようい
位置について、ようい
ドンッ!
ドンッ!
はいまけー
はいまけー
うっかり軽い気持ちでチーターと競争してみたけれど、早すぎるぞチーター!あたりまえである。時速113キロメートルなのだ。

ちなみに人類最速のボルトは時速37キロメートルぐらいらしいので、もう格が違う。というよりも、たいていの動物はボルトより早い。象でさえ全力で走ると時速39キロメートルらしいので、ボルトより象の全力疾走の方が早い。
ボルトが勝てるのはシロテナガザルぐらい
ボルトが勝てるのはシロテナガザルぐらい
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寝ながらコントロール

むかしから「寝ながらできればなー」なんて思ってたもののひとつに「ゲーム」は無いだろうか?

現状でもまあ出来ないこともないけれど、寝ながらやるゲームは無理な姿勢になってしまうことは否めない。

そこで「寝コン」(EnterMaker)の登場である。
寝ながらゲームを操作できるんです
寝ながらゲームを操作できるんです
究極のぐうたらに一歩近づく
究極のぐうたらに一歩近づく
仕組みとしては単純で、ベッドの両サイドに十字キーの左右のスイッチが入っており、天井に投映されたゲームを操作できるというものだ。
ゲームは単純だが、操作感がおもしろい
ゲームは単純だが、操作感がおもしろい
左右にちょっと体重をかけるとゲーム画面の人間もその方向に動く。微妙な体重のかけ加減のみでゲーム中の人間を遠隔操作するというもどかしいおもしろさがある。

これは、介護みたいな真面目な用途にも使えそうだなという気もするが、やはり、寝たままいろんなことができたらいいな。という、横着が煮詰まったような人間の夢に一歩近づいたと考えるほうが楽しい。 これが進歩なのか退化なのかわからないけれど。

ラジオを聞くのはかなりしんどいことがわかる

さて、さっこん電力の消費に関してはさまざまなことが言われている。

しかし、電球をつけたり、ラジオを聞いたりする電力がどれほどのものなのか。感覚としてわかりにくいというところがある。

ひのでやエコライフ研究所のブースでは、それが自転車をこぐことで体験できた。
ママチャリが発電機につながっている
ママチャリが発電機につながっている
一生懸命自転車をこぐと発電量が上がって電球がつ
一生懸命自転車をこぐと発電量が上がって電球がつく!
電球はわりとすぐつくけれど、扇風機やラジオまで動かそうとすると、そうとう一生懸命自転車をこがないと動いてくれない。

電力は、タービンが回っていないとすぐ消えてしまう。しかも、回転数が一定していないと、電気がついたりきえたりしてしまう。

自転車をこいで思い知る、発電所の偉大さ。昼夜関係なく1年365日発電している発電所は本当に偉い。
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歯ぎしりで移動

Assistech Design Labのこちらの車いす。こめかみの筋肉の動きをセンサーで感知し操作できる車いすだ。つまり、歯ぎしりで車いすが動く。
車いすに乗るのがはじめてなんです
車いすに乗るのがはじめてなんです
動かし方はそんなに難しくない。右側に曲がりたかったら右側を噛みしめる。左側だと左、前進は両方……といった感じだ。
不敵な笑いではなく、右側を噛み締めている
不敵な笑いではなく、右側を噛み締めている
うごくか?
うごくか?
おぉ……うごいた!
おぉ……うごいた!
歯を噛みしめると自分が動き出す。右側を噛むと右に、左を噛むと左に。

こめかみの筋肉で自分の体を動かしてると思うとなんだかわからないけれど、なんだか面白い。

てこの原理じゃないけど、てこの原理みたいな。ちょっと力で大きな動きを作り出すみたいな。そんなわけのわからない楽しさがある。

この車いす欲しい。と思った。

意味のわからなさのおもしろさ

「意味のわからなさ」でいうと、ヒャッカソンも意味がわからなくてよい。
あの有名なネットミーム「チャリ来た」の写真も撮れる!
あの有名なネットミーム「チャリ来た」の写真も撮れる!
ヒャッカソンは、100円ショップで売ってるグッズを使って、より便利なものやおもしろいものを作る。というハッカソンだ。
ウェアラブルチリンチリン
ウェアラブルチリンチリン
自転車のチリンチリンをリストバンドにくっつけたものだ。便利かどうかは不明だけれど、あのチリンチリンを腕につけることができるのだ。

おそらく、便利かどうかってのは正直もうどうでもよくて、この無理矢理くっつけちゃった、マッドサイエンスっぽさがおもしろいのだ。

そう考えるととこれもスゴイ。
目玉付きスリッパ?
目玉付きスリッパ?
このスリッパ、裏に握ると発電する発電機がついており、歩くたびに発電してスリッパの目玉が光るというものだ。
握ると発電する道具
握ると発電する道具
このつぎはぎっぷりは、完全にフランケンシュタインである。

しかし、人の死体をつぎはぎすると神にそむく行為だが、100円ショップグッズだとそんな心配もなく安心して改造することができる。

中国製3Dプリンタの活用方法

あいかわらず、メイカーフェアでの3Dプリンタ人気はすごい。

3Dプリンタのエリアでは、どのブースも、3Dプリンタの性能や扱い方について展示を行っていたのだが、ひとつだけコーヒーを無料提供しているブースを発見した。
どうみてもコーヒーれてますよねこれ
どうみてもコーヒーれてますよねこれ
プリンタが実に手際よくコーヒーをいれてくれる
プリンタが実に手際よくコーヒーをいれてくれる
プリンタでいれたコーヒーの味は?
プリンタでいれたコーヒーの味は?
うまい
うまい
コーヒーがおいしいのは、バリスタがお湯を注ぐタイミングや量を完全にシュミュレーションして再現しているからだという。
それでは私も頂きます
それでは私も頂きます
−−しかし、いったいどうして3Dプリンタでコーヒーいれてるんですか?
「中国製の安い3Dプリンタだと、どうしても精度が悪くて、ほかに使いみちないかなーとおもって、コーヒーいれるようにしたんですよ」

ザ・適材適所。である。

3Dプリンタも3Dプリンタとして「使えねぇな」と罵られるより、うまいコーヒーをいれてみんなに喜ばれる方が幸せだよな。

あ、なにかこみ上げるものは……でませんけど。

感情のまんなかをぐっとつかんでくる

いずれのブースの展示も、脳の感情を司ってるところをぐっとつかんでくるような楽しい展示ばかりであった。

やはり「作りたいから作った」という動機にかなうものはない。
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