特集 2015年9月18日

40年前のガイドブックで博多を食べ歩く

40年前のガイドブックに載っているお店は今も残っているのか!
40年前のガイドブックに載っているお店は今も残っているのか!
古本屋で昭和53年に出版された、博多の美味しいものを出しているお店を紹介したガイドブックを手にいれた。1978年、いまから37年前、約40年前に出版されたガイドブックということになる。

このガイドブックに載っているお店は今もあるのだろうか。もし残っていれば、それは絶対に美味しいお店だ。ということで、古いガイドブック片手に博多を食べ歩いてみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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古いガイドブックの魅力

本屋に行くと多くのガイドブックが並んでいる。その地域の観光地や美味しいお店が紹介されている本だ。毎年新たな情報が載ったガイドブックが出版される。誰もが最新の情報が欲しいからだ。
これは約40年前のガイドブックです!
これは約40年前のガイドブックです!
ただ昔のガイドブックに載っているお店が、今も残っていればそれは間違いなく美味しいお店なのではないだろうか。激しい競争社会で生き残ったお店。つまり古いガイドブックも実は有益な情報になるのだ。
昭和53年(1978年)に出版されたガイドブックです!
昭和53年(1978年)に出版されたガイドブックです!
博多の美味しいお店が紹介されている、昭和53年に出版されたガイドブックを手にいれた。1978年、暴れん坊将軍とザ・ベストテンの放送が開始された年であり、サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でメジャーデビューした年。随分と前だ。
ということで、博多駅にやってきました!
ということで、博多駅にやってきました!

とんかつ「ビヤ樽」

この約40年前に発売されたガイドブックで博多を食べ尽くそうと博多駅にやってきた。私は福岡出身だけれど、生まれも育ちもだいたい北九州なので、あまり博多に詳しくない。全てはこのガイドブック頼みだ。
まずはこのお店!
まずはこのお店!
まずは外観が面白そうなとんかつ屋「ビヤ樽」というお店に行くことにした。紹介文を読むと、とんかつ屋だけれど、お店に入ると魚貝がずらりと並んでいるそうだ。「魚介」と書きたいが、貝が凄いらしいので、本ではあえて「魚貝」としているのだろう。
場所はここです!
場所はここです!
地図を見ると住吉通りと渡辺通りがぶつかる角の少し脇にあるようだ。住所にはサニー前と書かれている。気合いで歩ける距離のようなので博多の街並みを見ながら歩く。

いま、嘘ついた。博多は美人が多いと聞くので、街並みよりもすれ違う人を見ていた。美人な気がする。
交差点に到着
交差点に到着
地図にある住吉通りと渡辺通りがぶつかる交差点に到着した。ビヤ樽はその名前からも分かるように、ビヤ樽をあしらった一度見たら忘れない外観をしている。

しかし交差点から見える景色にビヤ樽が見当たらない。ビヤ樽みたいな人もいない。美人が多いのだ。
40年前のビヤ樽
40年前のビヤ樽
現在のビヤ樽
現在のビヤ樽
周りの人に聞き込みをしたが情報はなく、おそらくここだろうという場所を見つけた。そこは柵のある駐車場になっていた。ビヤ樽は今はもうないのだ。駐車場なのだ。その駐車場も柵があって入れない。40年という時間の長さだ。
ビヤ樽の住所に書いてあった「サニー」はあった
ビヤ樽の住所に書いてあった「サニー」はあった

次は「あざみ食堂」

次はビヤ樽の隣のページあった「あざみ食堂」に行こうと思う。味噌汁と甘鯛が美味しいそうだ。コーヒーの一杯立てと同じように、味噌汁が一杯立てらしい。昔は遊郭の中にあったと書いてある。ぜひ食べてみたい。
あざみ食堂
あざみ食堂
場所はここ!
場所はここ!
地図を見れば先のビア樽の近くなので、すぐに見つかるだろうと勝手に決め付けていた。「みなみ東映裏」と住所に書いてあるので、目標とする建物もある。完璧ではないか。甘鯛がすでに私の喉元で跳ねている。ピチピチ。
東映と書いてある、
東映と書いてある、
ホテルはあった
ホテルはあった
「みなみ東映」という名は見つからなかったけれど、「福岡東映ホテル」はあった。当時は映画館だったようだけれど、今はホテルになっているようだ。名前に名残があってよかった。
ただ裏に来ても「あざみ食堂」がない!
ただ裏に来ても「あざみ食堂」がない!
裏に来たが「あざみ食堂」は見当たらなかった。入ることに躊躇しそうなオシャレなレストランはある。ただ名前も違い、目的のアザミ食堂はないのだ。私は味噌汁と甘鯛を食べたいのだ。喉元で甘鯛が味噌汁に溺れているのだ。
聞き込みをした
聞き込みをした
突然の訪問だったけれど、とても丁寧に教えてくれた。「あざみ食堂」のことは知らないけれど、住所的にはここで間違いないだろう、という場所を教えてくれたのだ。では、その場所に行こうではないか。私はその場所を知っている。
40年前の「あざみ食堂」
40年前の「あざみ食堂」
現在の「あざみ食堂」
現在の「あざみ食堂」
やはり先ほどの場所だった。今はビストロアトリというお店になっている。自家製マルゲリータやアリアータを食べることができるお店だそうだ。つまり「あざみ食堂」はないのだ。福岡も移り変わりが激しい場所のようだ。
次に行きましょう!
次に行きましょう!
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大衆酒蔵「モロオカ」

次は日がまだ高いけれど、あんまりにも食べ歩けていないので、もはや酒を入れようと思う。九州の酒は美味しいと聞く。私は九州出身だけれど、18歳で上京したので、九州の酒の味を知らない。ここらで堪能しておこうではないか。
大衆酒蔵「モロオカ」に行きます
大衆酒蔵「モロオカ」に行きます
向かう先は「モロオカ」というお店。営業時間を見たら、昼前の11時から営業しているそうだ。しかも定休日は「競艇がない日曜日」と書いてある。ここに来る層が手に取るように分かるお店だ。
場所はこの辺!
場所はこの辺
200円で食べて飲める清潔なお店とある。最高ではないか。またこの当時の流行りなのか、住所を見ていると「フタタ裏」と目印になる建物についても書いてある。迷わなくていい気がする。
ということで、フタタ横の、
ということで、フタタ横の、
路地を入る
路地を入る
現在の時間は昼を過ぎたあたり。古いガイドブック通りならば、もう営業しているはずだ。刺身、なまこ、酢がきなど酒の肴は大体揃っているそうだ。期待を胸に「モロカオ」にたどり着いたのだ。
40年前のモロオカ
40年前のモロオカ
現在のモロオカ
現在のモロオカ
モロオカは存在した。外観は当時の最大の特徴である酒蔵の感じは完全になくなっていた。カタカナ表記だった店名も平仮名になっている。ただお店はあるのだ。問題はシャッターが閉まっていることだ。
閉まっている
閉まっている
後で確認したら、こちらのお店、現在は夕方頃からの営業で、定休日も「競艇がない日曜日」ではないそうだ。土日が休み。ぜひ行ってみたかった。家が近ければいいのだけれど、旅先でのお店は縁である。酒に見放されたのかもしれない。
気を取り直して次へ!
気を取り直して次へ!

釜飯「ビクトリア」

次はその名前に惹かれて、釜飯のお店「ビクトリア」に行くことにした。博多の釜飯の元祖だそうだ。昔は、釜飯は出てくるまでに時間がかかるらしく、商談やランデブーにちょうど良かったらしい。ランデブーに時代を感じる。
ここに行きます!
ここに行きます!
ここにあります
ここにあります
ガイドブックを読むと「都心一流商店街のどまんなか」にあるそうだ。博多にあまり行ったことがなかったけれど、地下道が札幌のように長く整っているなど、驚いた。やはり博多は大きく変わっているのだ。ないお店が続くのも頷ける。ビクトリアはどうだろう。
40年前のビクトリア
40年前のビクトリア
現在のビクトリア
現在のビクトリア
ついにあった。今も営業しているお店についに出会うことができた。40年前より外の釜が小さくなっているけれど、ビクトリアという釜飯っぽくない名前が輝いている。ちなみに昔は喫茶店も兼ねていたから、店名が「ビクトリア」らしい。
店内も釜飯屋さんらしくない
店内も釜飯屋さんらしくない
店内も釜飯よりもビクトリア寄りの内装だ。ガイドブックによれば、当時は「とりのソップかけ」が550年、釜飯が500円だそうだ。現在は両方とも930円になっていた。釜飯は種類も豊富で、頼むとすぐに運ばれてきた。ランデブーの時間がない。
とりのソップかけ
とりのソップかけ
釜飯
釜飯
このお店の常連さんに話を聞けば、昔はソフトクリームがあったり、子供が来ると風船がもらえた、などと教えてくれた。味については、ずっと美味しい! と言っていた。確かに食べるとわかるのだ。美味しいのだ。九州男児の私の笑顔が溢れるのだ。
釜飯、美味しい!
釜飯、美味しい!
ちなみに「とりのソップかけ」とは、白ごはんの上に、焼いてほぐした鳥のササミが乗っていて、そこに青じそやネギを乗せて、熱々の鶏ガラスープをかけて食べる料理だそうだ。スープ単体でも美味しくて、おかわりしてしまった。
とりのソップかけ、美味しい!
とりのソップかけ、美味しい!

最後はフグだ!

ビクトリアでは常連さんとお話をできたし、もちろん料理も美味しく、素晴らしい時間を過ごすことができた。ここから私の食べ歩きが始まるのだ。と言いたいが、東京に戻る時間が近づき、次が時間的にラストである。
ふぐ「ふぐ幸」
ふぐ「ふぐ幸」
食べ歩くつもりでお金を持ってきていたが、食べ歩けていないので、予算が残っている。ここは盛大にお金を使おう、とフグを選んだ。ちなみに書いた以外の店にも2店舗ほど行っているが、駐車場やビルになっていた。
 場所はここです!
場所はここです!
中洲にある「ふぐ幸」というお店だ。下関のフグのセリが始まる9月に開店し、翌年春の彼岸に閉店するお店だそうだ。4月から8月は休み。いかにも高そうだけれど、中洲に行ってみたいのでちょうどよかったかもしれない。
地図にある人形小路についたがない
地図にある人形小路についたがない
人形小路という細い道に「ふぐ幸」があるそうだけれど、見当たらない。私はピーンと来た。これないやつだ! と。ないのだ。フグ屋はあるのだけれど、名前が違う。聞き込みだ。
店主がいたお店に聞く
店主がいたお店に聞く
地図がざっくりなので、その付近にあるお店に入り話を聞いた。すると聞いたお店の隣が「ふぐ幸」だったと教えてくれた。偶然が教えてくれた、もうないという事実。20~30年前になくなったそうだ。今あるフグ屋は別のお店とのこと。
40年前のふぐ幸
40年前のふぐ幸
現在のふぐ幸
現在のふぐ幸
清水の舞台から飛び降りつもりでふぐを食べる選択をしたけれど、今はもうないのだ。少しホッとした気もするけれど、残念な気もする。

他にも博多の飲食店を紹介している古いガイドブックを持っているので、またいつか今度こそ食べ歩こうと思う。
楽しかったです!
楽しかったです!

移転も多い

古いガイドブックを開き、基本的には偶然開いたページに載っているお店に行くことにしている。なので、今回のようにない店が続くこともある。あとで、そのガイドブックに載っている他のお店について調べると移転しているところも多かった。やはり博多はこの40年で大きく変わっていたようだ。

ふぐ幸について教えてくれたお店もガイドブックに載っていた!
ふぐ幸について教えてくれたお店もガイドブックに載っていた!
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