特集 2015年5月16日

二俣川の運転免許試験場ちかく「キッチン合格」の物語

ママは元気です!

店を真由美さんに渡してからは、めったに店に顔を出すことがなくなったという靖子さん。引退したママの身体を案じるお客さんに心配をかけることのないようにと、写真に「ママは元気です」と書かれた小さな紙を貼った。

「ママ(靖子さん)に会いたい」という声で、懐かしい顔に会いに店を訪れるのも今の靖子さんの楽しみだ。
一方で「キッチン合格」のニューフェース・真由美さんの一日は大忙し
一方で「キッチン合格」のニューフェース・真由美さんの一日は大忙し
真由美さんが店を受け継いでから、大きく変わった点が2つある。
ひとつはメニューが日替わりになったこと(写真は白身魚煮定食・700円)
ひとつはメニューが日替わりになったこと(写真は白身魚煮定食・700円)
こちらはミックス(アジ、鶏カラ、カキ・900円)
こちらはミックス(アジ、鶏カラ、カキ・900円)
頻繁に通ってくれるお客さんのためにも、日替わりで和食中心の飽きのないメニューを提供したいというのが真由美さんの方針。
ごはんは何杯でもお変わり自由!(写真は和風ハンバーグ定食・900円)
ごはんは何杯でもお変わり自由!(写真は和風ハンバーグ定食・900円)
新がんセンターの開院以来「キッチン合格」の客層も少しずつ変わっている。
今は、免許試験場の利用者よりも、むしろがんセンターに来られる関係者の方や近くの現場などに来る職人さんたちが多い。
免許試験場の駐車場があった場所には、がんセンターが建っている
免許試験場の駐車場があった場所には、がんセンターが建っている
病院を訪れる人の事情はさまざま。患者の付き添いの息抜きに「キッチン合格」のコーヒーを飲みに来る人もいる。
靖子さんの病気を機に、店内には健康祈願のしゃもじも加わった
靖子さんの病気を機に、店内には健康祈願のしゃもじも加わった
「病気の母を看ていたから、私も付き添い人の気持ちに寄り添うことができる」と真由美さん。母親譲りの明るく気さくな語り口は力強く、なんだかこちらまで元気になりそうだ。

この日、筆者がいただいたのはもりもりパワーがわいてきそうなチャーシュー玉定食(800円)。
おでんと、チャーシューの横に添えられた玉子は全部で3個!
おでんと、チャーシューの横に添えられた玉子は全部で3個!
手間ひまかけて作られたチャーシューは、居酒屋時代からの人気メニュー
手間ひまかけて作られたチャーシューは、居酒屋時代からの人気メニュー
自慢のチャーシューは、箸でほどけるほどやわらかい
自慢のチャーシューは、箸でほどけるほどやわらかい
その味わいは、堅く緊張した心までほどいてくれそうな優しい味。いい意味で予想を裏切らない、懐かしい味。想いを込めて作られた料理には、その人の人柄が出ると筆者は思う。真由美さんの料理にも、それが感じられる。
もうひとつの大きな変化は、夜の部・居酒屋営業を始めたこと
もうひとつの大きな変化は、夜の部・居酒屋営業を始めたこと
現在、営業時間は昼の部が午前10時から午後2時まで、夜の部が午後5時から午後10時まで。お酒を飲む客が相手であることもあり、時間ぴったりで終らないことも多い。

仕込みの時間を入れれば、その労働時間はかなりの長時間に渡る。それにも関わらず「キッチン合格」の新事業として居酒屋営業を始めたのは、やはり真由美さんの経験に基づく強い想いがあるからだろう。

飲食店の立ち並ぶ駅前通りから少しばかり離れたこの地で新規客を定着させることは、簡単なことではない。今は、ランチタイムのお客さんや、昔の居酒屋時代のお客さんが、常連客の中心だ。
暖簾は居酒屋の雰囲気作りのためにと、広島の妹が作ってくれたのだとか
暖簾は居酒屋の雰囲気作りのためにと、広島の妹が作ってくれたのだとか
「昼間は体力勝負、夜は気配り。もちろん、この労働時間をずっと続けられるわけではないけど、今は手探り状態でいろいろ試しているところ」と真由美さん。

目下の悩みは、夏のメニュー作りで「暑くなってみんなの食欲が落ちた時に、どうやってそれを促進していくか」がテーマだという。

「キッチン合格」の新しいママの挑戦は、まだ始まったばかり。
真由美さんの作る「キッチン合格」が、どんなお店になるのか・・・。その先はまだ明らかではないが、どんな形であれ靖子さんの時代から引き継がれた、飾らない親しみやすい雰囲気はずっとそこにあり続けるのだろう。

いつまでも変わらず優しくも、少しずつ新しく変化する「キッチン合格」。
免許試験場に足を運ぶことがあれば、ぜひ一度のぞいてみてほしい。

取材を終えて

母から娘へと代替わりした「キッチン合格」。
母と娘、2人のお話を聞きながら、筆者は同居する母のことを思った。

母と娘とは、実に面倒な関係だと筆者は思う。
産まれてからずっと、一番近くにいる母親。
だからこそ、激しくぶつかることも、互いに頼り合うこともある。

靖子さんと真由美さん、2人にもきっと2人にしかわからない複雑な想いと、深い絆があるのだろう。

厨房で忙しく動き回る娘を見て「あたしによく似てるでしょ?」と耳打ちした靖子さんの表情はとても嬉しそうだった。

最後に一枚お二人の写真を・・・と言った時「えっ、写真撮るの?」と慌てたお二人の写真が下の一枚。
ホントに・・・動きまでよく似ています
ホントに・・・動きまでよく似ています
これからも明るい笑顔で!
これからも明るい笑顔で!

―終わり―
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