特集 2015年5月16日

二俣川の運転免許試験場ちかく「キッチン合格」の物語

親子の絆

「お母ちゃんの話ばっかりしてないで店の宣伝もしてよ!」と威勢の良い声で憎まれ口をたたく娘。その言葉をさらっと流して、母・靖子さんは「よく似てるでしょ?」とこっそり筆者に耳打ちする。
忙しく手を動かしながらも、カウンター席を気遣う真由美さん
忙しく手を動かしながらも、カウンター席を気遣う真由美さん
真由美さんが「キッチン合格」の厨房に立つようになったきっかけは、靖子さんの病気だった。

もともと靖子さんには、10年前に胃がんで胃を全摘出した経緯がある。病気のせいで体重が以前より20kgも落ちたという。それを乗り越えて厨房に立っていた彼女の身体を、今度は大腸がんが襲った。2014(平成26)年5月のことだ。

必然的に休業状態となった「キッチン合格」。その状況を病気の母・靖子さんと、その母を看病する娘・真由美さんはどのような思いで見つめていたのだろう。

「店を閉めておくのはもったいない。じゃあ、誰がやるかっていったら私しかいなくて」と気負いなく、ごく自然な流れの中で店を継ぐことを受け入れたかのような娘の言葉。

一方で「私の病気があの子の人生を大きく変えてしまったわね」と、少し力なく語る母の姿・・・。2人のその言葉の裏には、さまざまな想いがあるのだろう。再オープンに至るまでの、母娘の迷いや葛藤は想像に難くない。

そして、迎えた同年10月。「キッチン合格」は、真由美さんという新たな「ママ」を迎えて再スタートを切ることになる。
まだ半年ながら、真由美さんの動きは実にスムーズ
まだ半年ながら、真由美さんの動きは実にスムーズ
「お客さんがね、みんな言うの。『ママ(靖子さん)と同じように動く』って。だから、あの子が店に立っていても違和感がないんじゃない?」と靖子さん。

お客さんとの距離感、商売のやり方、動き方・・・、そうした根底の部分で2人はよく似ているのだという。「その分、ケンカもすごいよ」とは、真由美さんの言葉。
日替わりでメニューを変えるのが、真由美さん流
日替わりでメニューを変えるのが、真由美さん流
店を引き継いだばかりのころは言い争うこともあった。
似ているとはいえ、40年以上店を守り続けた母親と、過去に二俣川の商店街で23年間に渡る居酒屋経営経験を持つ娘のやり方では、まったく同じというわけにはいかない。

それでも、今こうして母から娘へとよい形での代替わりを果たすことができたのは、やっぱり互いに認め合い尊重し合う部分があるからだと筆者は思う。
変わらないカウンター席と、新たに取り付けられた緑の暖簾(のれん)
変わらないカウンター席と、新たに取り付けられた緑の暖簾(のれん)
壁に飾られた靖子さんの写真には「ママは元気です」の文字
壁に飾られた靖子さんの写真には「ママは元気です」の文字
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