特集 2015年5月12日

おれたちのさか本そばのなぞ

これはおれたちのさか本そばっぽいな
これはおれたちのさか本そばっぽいな

姉妹店といえる雰囲気、となりのさかもとそば

テレビにも出ていた八幡山のさか本そばに来た。下高井戸から一番近いのはここだ。ここなら詳しい話も知ってるだろう。店のお父さんに話をきいてみた。

――ここって下高井戸の…?

「ええ、おおもとは下高井戸であたしんとこは10番目の支店です。店は10店どころじゃなくまだあります。あたしは本店直属の支店。本店から大岡山と蒲田に支店ができて、そこからまた支店、つまり孫店がいっぱいある」

それで大岡山が本店を名乗っているのか。まず下高井戸。次に大きな支店として大岡山と蒲田。そこからどんどん支流ができてるわけだ。方南町の別のさか本そばにも行ってきたんですけどあれは…?

「下高井戸の社長が方南町で修行してその後下高井戸に店出したんですよ。そしたら15や16のときなもんでお前にはのれんくれないってすったもんだあったんです。方南町は方南町で別のグループなんですけど」

えーっ! なにげなく行った方南町がそもそもの店だって!?(だがこれは後に別の証言が出てくるので断言できない)
座敷にテレビにおじいさんによくわからない陳列。あ、これはまぎれもなくさか本そばだな
座敷にテレビにおじいさんによくわからない陳列。あ、これはまぎれもなくさか本そばだな
お孫さんの道楽というが、お客さんがどんどん持ってきちゃうらしい
お孫さんの道楽というが、お客さんがどんどん持ってきちゃうらしい
さか本丼の始祖はここ。色々のって1000円だから出したくないらしい
さか本丼の始祖はここ。色々のって1000円だから出したくないらしい

さか本丼の起源はここだ

そしてさか本丼のオリジナルはここにあるようだ。

「さか本そばとかさか本丼はあたしが考えたんですよ。お互いのれん会でミーティングするでしょ。おれんとここんなのやってるよって伝わっていく。国領も武蔵野台も、烏山も…出してるかな(烏山は昔出してテ今やってないそうだ)。

カツ丼天丼のってこの値段でしょ。自分で作ったんですけどあんまり売りたくない(笑)。でも食材に何を使えっていうルールはないんです」

さか本そばにはさか本のれん会があって、そこで新メニューが伝わったりするそうだ。しかしこれってラーメン二郎ファンが交換しあうような情報ではないか。そしておれは今マニアになってないか。

店のマニアになるならせめてもっとメジャーなチェーンになればよかったという思いもある……
未曾有のごてごて感、そうだ、これがさか本丼だという味がする
未曾有のごてごて感、そうだ、これがさか本丼だという味がする
コーヒーがついてくる。さか本の情け
コーヒーがついてくる。さか本の情け

そして下高井戸本店に

さあ最後は本丸、下高井戸本店にむかう。気づくといつものような足取りではない。たんまり情報をつめこんできた。特に

・世の中にはいろいろなさかもとそばがある
・下高井戸がさか本のれん会の本店であるらしい


という認識がある。少なからず敬意のようなものをはらむ。これが聖地巡礼か。
そして本店下高井戸である。おれたちのさか本そばは総本店だったのだ
そして本店下高井戸である。おれたちのさか本そばは総本店だったのだ

巨人帽のおっちゃんが大将だった

店のご主人っていますかと巨人帽のおっちゃんにきくと「なにか用かい?」とこたえる。おかしいなと思ってるとこの人が店の主人であることに気づく。もしぼくがアメリカ人ならここでFワードを使っていただろう。なんてこった、この人、常連じゃなかったのか

巨人帽のお父さんの「うちはそういうのいいよ」というのを、ああだこうだとさか本熱を説き、なんとか取材に応じてもらった。

こういう交渉力はもっと世の中の役に立つここ一番で使えばよかったなと思う。
巨人帽のご主人。というかもうだれが店の主人なのかわからない
巨人帽のご主人。というかもうだれが店の主人なのかわからない

さか本の全貌

ご主人の助け舟と主に店のお母さんの話でさか本の全貌がおぼろげながらわかってきた。

お母さん「そうです、ここが本店。亡くなったおじいさんがもともと考えたんです。さか本そば

おじいさんも他の店で働いて。方南町? おじいさんがはたらいてたお店はもうないと思うけどね。6年前に91で死んでその若い頃だからね。そこのご夫婦がなくなって名前だけいただいてって。うちは小林って名字です。」

お母さんがおじいさんと呼ぶのは親にあたる先代のことのようだ。そういやなんか写真飾ってあるなと思ってたらこれが関東のさか本そばの創始者だった。偉人だ。なんてこった、偉人じゃないか。

そしてさか本そばはできたときからさか本さんじゃなかった。こんなにあるのにさか本はどこにもないのだ(あるかもしれないけど)。
いろいろなものが飾られてるなと思っていたが店の創始者のお供えがビールケースの上にあった
いろいろなものが飾られてるなと思っていたが店の創始者のお供えがビールケースの上にあった

さか本そばはさか本ビルである

――ここなんでこんなに広いんですか?

「おじいさん、すごく働き者だったからね。ただお仕事だけして、ビルも建てたりアパートも建てたりね。ここはおじいちゃんが2軒買って広くしたんです。真ん中のスペース? これ上がさか本ビルの階段になってるんです」

さか本そばはそば屋である前にさか本ビルだった。広いなとは思っていたが、縦にもガンガン伸びていったとは。2次元だと思っていたものが3次元だった静かな衝撃。
さか本そばはそば屋である前にさか本ビルだった
さか本そばはそば屋である前にさか本ビルだった

10年はたらくと店を持つシステムを考案した

――なんでこんなにさか本そばがあるんですか?

「みんなうちで10年働いて支店になってるからね。さか本がたくさんある。そういうのはおじいちゃんが最初に考えて。味とかメニューはやっぱりここで働いてたから同じになるんじゃないかなあ。中華? そう、中華も最初からあったと思うね。

大岡山は兄弟なのね。おじいさんの弟さん。大岡山の方も10年くらい働く(システムになってる)んじゃないかな」

10年働いたらのれんをもらえるシステムがあたってこんなに店があるのか。でも他の店にも起こりそうな話なのに、なぜさか本だけこんなに店があるのだろう。

シェイクスピアが陳腐に見えるのは、後につづくものがみんなシェイクスピアを真似したから。そんな話をTwitterで見た。もしかしたらさか本グループがシェイクスピア…なぞは尽きない。
開店直後、もう完全にミーティング感がある
開店直後、もう完全にミーティング感がある
本店下高井戸のさか本丼。グリーンピースが入っている。たべすすめてるとうずらが出てくる。これが最高なんだというわけではないが、掘り当てた感じはある。
本店下高井戸のさか本丼。グリーンピースが入っている。たべすすめてるとうずらが出てくる。これが最高なんだというわけではないが、掘り当てた感じはある。

味のいい店でなく、味のある店を残そう

お母さんはいう。

「昔からやってるからねえ、おじいさんが。あたしたちはもう後ついでるだけで。ねえ」

さか本が「ある」ということ。そんなわれわれの喜びは「ただ後をついでいる」というお母さんの発言にもあらわれている。ただ後をついで、ただそこにあるから偉いのだ。

味のいい店は残るかもしれないが、味のある店は代替わりでなくなってしまう。「広いので休憩にご利用ください」なんて店が他にあるだろうか。(ところでノマドワークの方々もここで仕事すれば消耗しないですむだろう。)

そんな一風変わった店は継ぐことによって時間が経ち、また味が出てくる。さか本そばの希少価値はこれからも高まっていく一方だ。

へんだなあと思っていたわが町のそば屋は関東の一大そば屋チェーンの総本山だった。なぞはまだまだ残る。これからもおれたちはさか本そばに行く(たまにな!)。
  さか本丼をたべすすめるとほんとに何をくってるのかわからなくなる
さか本丼をたべすすめるとほんとに何をくってるのかわからなくなる
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