特集 2015年1月6日

海岸で凧揚げしているみたいにカニを捕る

凧が海に落ちて途方に暮れている風ですが、実はカニを捕っています。
凧が海に落ちて途方に暮れている風ですが、実はカニを捕っています。
あけましておめでとうございます。

さて正月といえば凧揚げですね。あれはとても楽しいものですが、凧は蛸じゃないのでいくら揚げても食べられません。

そこで凧を揚げる振りをして、美味しいカニを捕ってみてはいかがでしょうか。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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漁網店でカニを捕る網を買う

凧揚げの振りをしてカニを捕るためにまずやってきたのは、千葉県白子町にある森川漁網店。

その名の通り、漁で使う網を扱う専門店で、オーダーメイドの投網、カモ猟で使用する網、潮干狩りの貝を入れる網、あるいはベランダのハト避けネットなど、網に関するものはタイツ以外なら大体揃うお店である。
プロもアマも訪れる森川漁網店。以前、投網入門でお世話になったお店です。
プロもアマも訪れる森川漁網店。以前、投網入門でお世話になったお店です。
オーダーメイドの投網を作ってくれる、日本に数少ない職人さんがやっています。
オーダーメイドの投網を作ってくれる、日本に数少ない職人さんがやっています。
投網を投げた後に網をすぼめるためのリングなど、謎の道具が売られていて楽しい。
投網を投げた後に網をすぼめるためのリングなど、謎の道具が売られていて楽しい。
体を洗う用の網とかもあったよ。
体を洗う用の網とかもあったよ。
そろそろ投網も買いたい年頃だけれど、今日ここで買うべきは森川漁網店オリジナルのカニ網である。

海でのカニ捕りはそこそこメジャーな遊びなので(狭い世界の話ですが)、釣具屋などでも似たようなカニ網は売っているのだが、やはり外房の砂浜専用に開発されたオリジナル商品で攻めるべきだろう。

網の大きさ、オモリの重さなど、すべてのパーツが市販品とは一味違うのである。
このバブル時代のソバージュヘアみたいなやつがカニ網。せっかくなので特大サイズをおすすめします。
このバブル時代のソバージュヘアみたいなやつがカニ網。せっかくなので特大サイズをおすすめします。
そしてこのカニ網と一緒に買いたいのが、凧揚げ用の糸と糸巻である。

普通は竿とリールを使用したり、空のペットボトルに糸を巻いたものなどを使うのだが、森川漁網店のオススメは、この凧揚げ用の道具なのだ。
100メートルの糸が巻いてある。カニ捕りに飽きたら凧揚げで使うのもいいだろう。
100メートルの糸が巻いてある。カニ捕りに飽きたら凧揚げで使うのもいいだろう。
ついでにエサも買っておこう。
ついでにエサも買っておこう。
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凧を揚げずに網を流す

道具を一通り揃えたところで、講師役である森川漁網店の森川さんとやってきたのは、荒波が押し寄せる白子町の海岸である。

この日は低気圧の影響で波が高すぎて、サーファーも寄りつかない荒れっぷり。こんなダイナミックなロケーションで、あの網と凧揚げ用の糸を使って、カニを捕まえてやるのである。

この今後の展開がまったく想像つかない感じが、一部のマニアにはたまらないのだ。
ザパーン。
ザパーン。
この日は「HUNT Vol.06 」という雑誌の取材があり、カメラマンの山田芳郎さんに素敵な写真をいただいたので一部使わせてもらいました。HUNTの記事も合わせて読もう。
この日は「HUNT Vol.06」という雑誌の取材があり、カメラマンの山田芳郎さんに素敵な写真をいただいたので一部使わせてもらいました。HUNTの記事も合わせて読もう。
カニ網の構造は、一番上にオモリが付いており、エサを入れる小さな網と、カニを引っ掛ける大きな網がつながっている。

エサは動物性で匂いの強いものなら何でもいいのだが、森川さんが投網で捕まえてきて店でカニのエサ用として売っている、ボラの子供を使用。腕に覚えがあれば、投網を買って自分で投げて捕るのもいいだろう。

その辺で捕まえた魚をエサにカニを捕って、それを昼飯にでもすれば、究極の地産地消遊びの成立だ。
エサ用の赤い網に小魚をたくさん詰めておく。オモリの下で網がいくつかに束ねられて絡みにくくなっているのが、森川流カニ網ニューモデルの特徴だそうです。
エサ用の赤い網に小魚をたくさん詰めておく。オモリの下で網がいくつかに束ねられて絡みにくくなっているのが、森川流カニ網ニューモデルの特徴だそうです。

森川流カニ網の使い方

我々が狙うカニが潜むのは、この荒れた海の底。そいつをエサの匂いで誘い出し、網で絡め取ろうという作戦だ。

カニ捕りにおける大きなポイントは、引き潮の時間を狙うこと。潮が引いている時間であれば、波打ち際に投げ込んだカニ網が、どんどんと沖へと流されてくれるのだ。

凧揚げが風の力で凧を揚げるのに対して、カニ捕りは潮の力で網を流すのである。潮が満ちてくる時間だと、いくら投げても打ち上げられるので気を付けよう。でもプロになると離岸流を見つけて、満ち潮の時間でも攻めるらしいぞ。
潮が引いたタイミングで走り込んで、素早く網を投げ込む。
潮が引いたタイミングで走り込んで、素早く網を投げ込む。
ボーリング風の美しいフォームで網を投げ入れる森川さん。きっとストライク。
ボーリング風の美しいフォームで網を投げ入れる森川さん。きっとストライク。
ザバーンと打ち寄せる波が、カニ網を沖へと運んでいく。もちろん靴がびしょ濡れになった。
ザバーンと打ち寄せる波が、カニ網を沖へと運んでいく。もちろん靴がびしょ濡れになった。
このように格好付けて海へとカニ網を投げたけれど、どうがんばっても数メートルしか飛ばないので、潮が引いたタイミングで置いてくるくらいの感覚でも全然問題ない。

でも投げた方がおもしろいので、我々はこれからも迷わず投げるのである。

糸をドンドンと出してカニを引っ掛ける

この日は干満の差が一番大きい大潮ということもあり、沖へと払い出す潮の流れはかなり強く、網はどんどん流されていく。凧揚げのようでもあり、リードを長めにした犬の散歩のようでもある。

こうして網が引っ張られるだけ糸を出していくと、カニが潜む海底を素敵な匂いを放ちながら移動するという漁法なのだ。ルンバがゴミを拾うが如し。
凧揚げ気分で糸をどんどんと出していく。
凧揚げ気分で糸をどんどんと出していく。
ほら、凧揚げをしているようにしか見えない。
ほら、凧揚げをしているようにしか見えない。
糸が100メートル全部出たら、さっさと巻き取って網を回収。往復で200メートル移動する網の道すがら、うまいことカニがいれば網に引っ掛かってしまうという寸法だ。
その奥で地元のおじさんが釣竿を使ってカニ網を流していた。要するにスタイルはなんでもいいのである。
その奥で地元のおじさんが釣竿を使ってカニ網を流していた。要するにスタイルはなんでもいいのである。
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ドキドキしながら網を引き揚げる

これが凧揚げであるならば、海に落ちた凧を回収するのはあまり楽しい作業ではないけれど、我々がやっているのはこう見えてカニ捕りなので、回収作業は楽しいの一言。

引っ張る網の重さでカニの有無を判断できるほどの名人ではないのだが、なんとなく一流し目から重いような気がする。
砂浜でキャッキャするおじさん二人。
砂浜でキャッキャするおじさん二人。
100メートルの糸を巻き上げると、産卵のために上陸したウミガメのように、海から網が上がってきた。

ちなみに昨日森川さんがやったところ、なんと一匹も獲れなかったそうだが、さてどうなっていることやら。
ようやく上がってきた!
ようやく上がってきた!
なんとカニがいっぱいついている!
なんとカニがいっぱいついている!
やったー!
やったー!
森川さんの網にもたくさんのカニ!
森川さんの網にもたくさんのカニ!
どうやらうまいことカニの群れている場所を網が流れてくれたようで、一流し目から大漁である。

ホンダ風のロゴがかわいいヒラツメガニ

この捕れたカニはヒラツメガニという種類で、その丸っこい姿から地元ではマルガニとも呼ばれている。東京の魚屋などでは見かけないけれど、捕れる地方では身近な食材として愛されているカニである。

背中にホンダそっくりの「H」のロゴがあるため、こいつをホンダガニとかエッチガニと呼ぶ人もいる。そういえばミニ四駆に乗せるのに最適な大きさかもしれない。
ホンダファンにはたまらない甲羅。
ホンダファンにはたまらない甲羅。
このようにカニを網で絡め取って捕まえるという漁法なので、捕ったあとは強力なハサミを持ったカニにおびえながら網から外すという作業が待っている。

さすがはホンダのロゴを背負うカニだけあって、小型ながらも指などを挟まれるとシャレにならない腕力なのだが、将来の夢が刺し網漁師の私としては、この複雑に絡みついたカニを外す作業は、面倒臭いけれど幸福な時間だったりする。
こうやって甲羅を持てば挟まれないけれど、挟まれるときは挟まれる。
こうやって甲羅を持てば挟まれないけれど、挟まれるときは挟まれる。
食べるには適さないけれど、トゲトゲのかっこいいカニも捕れた。
食べるには適さないけれど、トゲトゲのかっこいいカニも捕れた。
脚の形がキュート!
脚の形がキュート!

たくさんのカニが捕れました

こんな感じで網を投げたり巻き取ったりすること数回、食べる分としては十分な量のカニを捕ることに成功。

ちなみにヒラツメガニのシーズンは春と秋らしいので、この記事をみてすぐに真冬の海へと走っても、捕れる保証はないのであしからず。

その場合はカニ網を外して凧を上げて遊びましょう。
予想外の大量!
予想外の大量!
ここで近くに住む友人と合流し、彼の家でカニを料理させていただく。
ここで近くに住む友人と合流し、彼の家でカニを料理させていただく。
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ヒラツメガニを捌く

カニの美味しさは鮮度が命。その点は海から捕ってきたばかりのカニなので満点である。

小さくて甲羅が固いカニなので、食べられる部分は少ないけれど、ダシの旨さはなかなかのもの。その味を余すことなく楽しませていただこう。
海沿いに建つ友人宅のロケーションがすごい。でかい壺とかアンチョビを作っている浜名一憲さん。
海沿いに建つ友人宅のロケーションがすごい。でかい壺とかアンチョビを作っている浜名一憲さん。
砂をよく洗い流したカニの甲羅をパカっとはずし、エラを外して二つに割れば、下ごしらえは終了。あとは一般的な食材であるワタリガニとかと同じように扱えばOK。

中華風に炒めたり、味噌汁の具にしたり、唐揚げにして食べたりするのが一般的だが、今回はパスタとラーメンにして食べるのだ。
ホンダ車のボンネットを持ち上げるように、甲羅をパカっと開く。左右のエラ(ガニ)は食べないので外す。
ホンダ車のボンネットを持ち上げるように、甲羅をパカっと開く。左右のエラ(ガニ)は食べないので外す。
食べやすく、そしてダシが染み出しやすいように、包丁で二つに割る。
食べやすく、そしてダシが染み出しやすいように、包丁で二つに割る。

ヒラツメガニのパスタとラーメンを作る

まずパスタのソース作りから。トマトの缶詰とタマネギを細かく刻み、そこにカニを入れて軽く煮詰める。

カニの量が味に比例する料理なので、躊躇せずにたくさん入れよう。
人の家の台所に立つのが趣味。
人の家の台所に立つのが趣味。
ラーメンのスープは、近くのスーパーで適当に買ってきた食材と、捕まえてきたカニを一緒に煮込んだもの。

もちろん初めて作るタイプのラーメンだが、きっとうまいと信じている。
味噌は入っていないけれど、カニミソならたっぷりと入っている贅沢スープ。
味噌は入っていないけれど、カニミソならたっぷりと入っている贅沢スープ。
そしてわざわざ持参してきた製麺機をクルクルと回して麺を打つ。

この機械でパスタを作るのは初めてだったのだが、なんとなく形になってくれた。滑らかさが足りなかったので、次回はもう少しちゃんと捏ねよう。
皆さんおなじみの小野式製麺機一型両刃型。これがあればラーメンでもパスタでもなんでも作れる。
皆さんおなじみの小野式製麺機一型両刃型。これがあればラーメンでもパスタでもなんでも作れる。
かっこいいから持ってきた宝田式製麺機。これでも麺は作れるけれど、主に観賞用として活用中。
かっこいいから持ってきた宝田式製麺機。これでも麺は作れるけれど、主に観賞用として活用中。
プロカメラマンによる被写体に突っ込みどころが多い写真。
プロカメラマンによる被写体に突っ込みどころが多い写真。
ヒラツメガニのトマトパスタ。もっとソースをドバドバと掛けて食べる。麺の出来がもう一つだったかな。
ヒラツメガニのトマトパスタ。もっとソースをドバドバと掛けて食べる。麺の出来がもう一つだったかな。
油で揚げたカニを乗せたヒラツメガニのラーメン。しっかりカニの香りがしてうまい。
油で揚げたカニを乗せたヒラツメガニのラーメン。しっかりカニの香りがしてうまい。
ヒラツメガニはただでさえ美味しいカニなのだが、これを自分で捕まえてくれば、鮮度的にも気分的にも何倍もうまくなる。

凧は英語でカイト。カイト、カイト、カイト、ほら、カニトリと似ている。きっとそういうことなのだろう。

こういう遊びが好きなのです

今回紹介したカニ捕りのように、とても狭い範囲の場所で、その地域に住む人によって、昔から愛されて続けている狩猟遊びが好きだ。

世の中にいくつ残っているのかわからないけれど、これからもそんな遊びを探して、その輪の中にちょこっと入れていただき、自分のために記録を残していこうと思う。
製麺機のかっこいいネジ。
製麺機のかっこいいネジ。

取材協力:森川漁網店
千葉県長生郡白子町八斗2088
m.2026アットマークcrux.ocn.ne.jp ※アットマークを@に変えてください。
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