特集 2014年5月22日

僕はなにを見てドキドキしているのか

この一週間のクライマックスはこれにしたい
この一週間のクライマックスはこれにしたい
僕が見ている景色と心拍数を1日じゅう記録しておくと、いちばんドキドキした瞬間に何を見たかが分かるはずだ。

きれいな人を見たときか、プレゼンしているときか、意外に回転寿司で「ウニください」と言ったときだったりして。

1週間、調べてみた。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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6年ごしの夢

この企画はもう6年ぐらい前からネタ帳にずっと書いてあった。
そのころから心拍数を測る装置はあった。問題は1日じゅう撮れるカメラだ。ビデオカメラを頭の上につけておくか。それは恥ずかしい。それだけで心拍数が上がってしまって正しい結果が出ないかもしれない。

そうしたらスウェーデンの会社が去年1日じゅう撮影できる小型カメラを発売したのだ。
クリップみたいなカメラ(Narrative Clip という商品名です)。テクノロジーの進化に感謝。
クリップみたいなカメラ(Narrative Clip という商品名です)。テクノロジーの進化に感謝。
注文したのが去年の11月、それがようやく5月に届いた。半年である。
まったく商品が届かないのでこれはやばいパターンかなと思ったが、新年にはその会社から 「Dear HAYASHI ハッピーニューイヤー!」なんてのんきなメールが来た。挨拶いいから早く商品送ってくれよと思うがフィヨルドには届かず5月に来た。

心拍センサーも買った

iPhoneと連携する心拍センサーも買った。胸にバンドでセンサーをつけるとiPhoneに心拍数が送られて記録される。
死ぬほど腹を引っ込めて撮った
死ぬほど腹を引っ込めて撮った
心拍数が出る
心拍数が出る
センサーがじゃまそうだなと思ったがまさにその通りでちょうどいい具合にならない。

この1週間、仕事中にシャツの上からバンドの位置をしきりに直したり、Tシャツの下に黒いバンドがすけていたので僕がブラジャーをしていると思った人もいるかもしれない。
白いTシャツは避けようと思った
白いTシャツは避けようと思った
カメラと心拍計(見えないけど)をつけているこの状態で過ごす
カメラと心拍計(見えないけど)をつけているこの状態で過ごす

毎日のクライマックスがあきらかに

1日でいちばんどきどきした瞬間とはつまりクライマックスと言ってもいいだろう。映画ならいちばん盛り上がるところである。実際、心臓がたくさん鼓動して体中に酸素を巡らせているわけでフルスロットルであることに違いない。
5月13日(火曜日)
クライマックス 15:24 打ち合わせに遅れそうになったので走ってるところ。心拍数160
クライマックス 15:24 打ち合わせに遅れそうになったので走ってるところ。心拍数160
打ち合わせそのものではなく、それに向かって走っているところだ。このあと、走るのを諦めてタクシーに乗ったので心拍数は下がった。

そうか、これがクライマックスだったのか。いきなり地味なのが来た。
カメラの前にうっすらかかっているのはヘッドホンのケーブルである。
準クライマックス 22:16 会社を出て新宿まで歩いてる途中。歩道橋の上。心拍数137
準クライマックス 22:16 会社を出て新宿まで歩いてる途中。歩道橋の上。心拍数137
歩道橋から新宿を見て成り上がってやるぜと思ってどきどきしたのではなく、歩道橋の階段を登ったからだと思う。
5月14日(水曜日)
クライマックス 14:00 打ち合わせに遅れそうになって走っているところ 心拍数148
クライマックス 14:00 打ち合わせに遅れそうになって走っているところ 心拍数148
前の日と同じ文章をコピペしているようだが、同じなのである。よく打合せに遅刻しそうになって走っていることがわかる。しかも朝とかではなく、昼の打ち合わせにだ。
準クライマックス 15:03 青山あたりを歩いているところ 心拍数127
準クライマックス 15:03 青山あたりを歩いているところ 心拍数127
ここでなぜ心拍数が上がっているのかがわからない。前を歩いている女性に興奮したのかもしれないし、もしかしたら手前の東京無線(タクシー)に興奮する体質なのかもしれない。
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5月15日(木曜日)
クライマックス 0:34 新橋駅 心拍数150
クライマックス 0:34 新橋駅 心拍数150
この日のクライマックスは日付を超えてからだった。飲みに行ったあと山手線ホームに出た瞬間。飲んで急ぎ足で階段を登ったからだと思われる。
準クライマックス 20:17 心拍数146 かき小屋に入ったところ
準クライマックス 20:17 心拍数146 かき小屋に入ったところ
準クライマックスは飲み始める前だった。

かきを食べている最中ではなく、かき小屋に入ったときにどきどきしている。そこまでかきを楽しみにしていたのか。

駅から飲み屋まで早足で移動したのでそのせいかもと思ったが、かきが楽しみで早足になったので同じである。
5月16日(金曜日)
クライマックス 西新宿駅のエスカレーター 心拍数 144
クライマックス 西新宿駅のエスカレーター 心拍数 144
地味なクライマックスである。文芸映画のラストか。二日酔いなのに階段を駆け上がって一息ついているところと思われる。

準クライマックス 21:21 新宿西口 心拍数140
準クライマックス 21:21 新宿西口 心拍数140
また現れた歩道橋。この歩道橋に興奮(性的な意味で)していると言っても過言ではない。夜、会社から新宿まで歩いてきてこのへんで疲れているのだ思う。

ちなみにこの日、昼にカレーを食べてうまかったのだがクライマックスには登場しなかった。

二日酔い明けの身体にカレーがしみた
二日酔い明けの身体にカレーがしみた
ただ、グラフで見るとカレー食べてる最中は心拍数があがってた
ただ、グラフで見るとカレー食べてる最中は心拍数があがってた
松屋のカレーでここまでテンション上がっているのがまるわかりでちょっと恥ずかしい。食べる前後のテンションの低さもおもしろい。
5月17 日(土曜日)
クライマックス 21:42 心拍数128 夜の駅
クライマックス 21:42 心拍数128 夜の駅
ドラマチックな出会い(別れ)を感じさせる写真である。いよいよクライマックス感出てきた。実際は電車で居眠りしていて、降りる駅についたので慌てて降りた瞬間である。
準クライマックス 15:49 心拍数125 駅の階段を上がってるところ
準クライマックス 15:49 心拍数125 駅の階段を上がってるところ
準クライマックスはおなじみ駅の階段だった。とはいえ土曜日はクライマックスといっても120程度である。平日も休みも関係なく機嫌よく過ごしているつもりだったが休日はリラックスしているのかもしれない。
5月18日(日曜日)
クライマックス 17:11  心拍数125 砧公園のなか
クライマックス 17:11 心拍数125 砧公園のなか
日曜日のクライマックスもそれほどの高さでもない。砧公園だった。緑でリラックスすると言われているのになんで僕は興奮しているんだろう。蜂の遺伝子でも入っているのだろうか。
準クライマックス 17:26 心拍数122 富士見坂の上
準クライマックス 17:26 心拍数122 富士見坂の上
二番目に心拍数があがったのは世田谷区岡本三丁目にある富士見坂。ここに坂1グランプリの写真を撮りに行ったのだ。この坂はたしかに興奮した。

はじめて企画趣旨にあったクライマックスが現れた。うれしい。
だってこんな坂なのだ。
だってこんな坂なのだ。
企画趣旨にあったクライマックスだと思ったが、階段が坂になっただけとも言える。クライマックスは主に高低差である。

それでもまだ続く。
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5月19日(月曜日)
クライマックス 15:48 心拍数160  原宿の階段あがったところ
クライマックス 15:48 心拍数160 原宿の階段あがったところ
原宿の駅前がクライマックスである。原宿に興奮するなんて僕もかわいいところがある。この写真の直前に階段を登っているのだが、また階段の写真になるのでこっちを選んだ。
準クライマックス 17:45 心拍数 160 新御茶ノ水の階段
準クライマックス 17:45 心拍数 160 新御茶ノ水の階段
準クライマックスは新御茶ノ水駅の階段だった。新御茶ノ水駅は深くて登っても登っても地上に着かないのだ。確かに階段で疲れるがその深度に興奮したということにしたい。
しかし前の人も疲れている。
5月21日(水曜日)
5月20日は心拍センサーを付けるバンドを締めすぎたのか肋骨が痛くなったので(アンド二日酔いで)休んだ。そして本稿公開前日の21日である。
クライマックス 20:39  心拍数143  岩本町駅の階段
クライマックス 20:39 心拍数143 岩本町駅の階段
準クライマックス  140 経堂駅の階段
準クライマックス 140 経堂駅の階段
最終日もきれいな階段コレクションで終わった。ちなみにこの日、知り合いのイベントでちょっとしたプレゼンテーションをしたのだが、階段ほどではないがちょっと心拍数上がってた。
プレゼン中 心拍数 120
プレゼン中 心拍数 120
赤いところがプレゼン中
赤いところがプレゼン中
プレゼン前の「次おれだ」という緊張と、終わってからのリラックスがわかりやすく出ている。プレゼン後は寝ちゃうのかと思うぐらいのリラックスぶりである(実際、眠かった)。

結論:階段と遅刻

僕のクライマックスは主に階段を登っている時間か遅刻しそうになって走っているときだった。それ以上のどきどきはない。
美人とすれ違ったり、絶景を見たときではなかった。
逆に考えれば階段を登ったり、遅刻しそうになったりすれば世界はいきいきとしたものに変わるのだ。

と、いいわけをするのも無理があるので、心拍数ではなく発汗量がとれる腕時計買おうと思う。来月あたりの「僕はなにを見て汗をかいてるか」にご期待ください。
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