特集 2014年5月20日

今の子は投げない?カラーボール工場見学

そもそもカラーボールで何ができるんだろう

――そもそもカラーボールでできることってなんですかね

「基本的には投げて捕って、ですね。サッカーはやらないですね。あとは手でにぎったりとかペットのおもちゃにもなりますね。

ジャグリングの道具も作ってます。グラムがしっかりしてないとやりづらいので、手作業できっちり計ったり成形したりします。あるいはマッサージで使うとか。重量を重くしてかたーく作るんですよね。それで整骨院なんかで治療に使ってもらったりとか」
空気を注入するのをやらせてもらった。失敗。
空気を注入するのをやらせてもらった。失敗。
封入。どの作業場所もラジオが絶えまなく流れる
封入。どの作業場所もラジオが絶えまなく流れる

テレビに出てくるカラーボールは大体ここ

――特注で作るのも多いですか?

「たとえば企業の商品の宣伝用に使うプライズ品みたいなやつですよね。配るもの。

CMの演出で使うものも作ってます。ボールプールだと約一万個くらい。あとはテレビ番組とか大体うちです。お昼の番組のコーナーで特定の色のカラーボールが3個出てくるんですけどああいうのも。

あるいはコンサートで客席に投げ込みますよ、とかイベントに来た人にあげるとか。そっちの使い道は増えてはきています」

――今、コンサートでカラーボール投げ込むんですか?

「ぼくもあんまり知らなかったですけどね。アイドルのコンサートなんかでサイン書いて、それを客席に投げる。

一人そんな100個も200個も投げないんですけど10個投げたとして、たとえば今度納めるグループだと6人いるんでそれを40公演やるとなると2400個ですか。それなりのボリュームですね」

アイドルとは、かわいい、歌うまい、踊るの上手、それに加えてカラーボール投げるの多い。昨今のブームでアイドルは多くを求められすぎである。

――アイドルめちゃめちゃカラーボール投げてますね!

「ただああいう業界は時期がシビアで。夜の9時に電話かかってきて翌日関係者のベンツがきて積みこんで帰っていくみたいなこともあったり。

ぎりぎりまで色々話が変わるんじゃないですかね。うちが断るとボールを探すのは不可能になっちゃうし、そうなるとなんとかしないとってなりますね」

勝手な想像であるがこういう場合もう私たちの頭の中には秋元康氏しかいない。

秋元さんが「カラーボールだよね」といえば下っ端がベンツ飛ばして埼玉のおっちゃんおばちゃんが夜なべしてカラーボール作るのである。

秋元さん、納期のことがあるからカラーボール中心にAKBのコンサート考えてくれないかな。

(※秋元氏が指示してるというのは想像です)
CMで使われたボールプール。テレビやCMなどのカラーボールはここで作ることが多いらしい
CMで使われたボールプール。テレビやCMなどのカラーボールはここで作ることが多いらしい

一日2000個も作ってるのか

――これ一日中作ってるんですか?

「一日中やりますね。36型あるんで一日大体50回~55回で1800~2000個ですね。基本的には毎日です。たまに機械をとめてメンテナンスしたりとか。一ヶ月で4万から5万個くらいですね。大体3人でまわしています。下に1人、上に2人」

ここだけで年間50万個……想像とちがった。それがシェア1割未満の国産4社のうちの1社だとすると、カラーボールって年間2000万個くらい消費してるんだろうか。

今までの話の流れを全く無視するようだが、使いすぎじゃないかな、カラーボール。
スプレーで彩色もここで。石川さんは子供の頃これやってお小遣いをもらったとか。ボールもらい放題で人気者になれましたか?ときくと、そんなことなかった、と。
スプレーで彩色もここで。石川さんは子供の頃これやってお小遣いをもらったとか。ボールもらい放題で人気者になれましたか?ときくと、そんなことなかった、と。
これも体験させてもらえる。半分だけ塗ったものをもらって帰った
これも体験させてもらえる。半分だけ塗ったものをもらって帰った

ここのカラーボールすげ~な!とかはない

――作ってるのは同じ人がやってるんですか

「一応私もできますけど、彼が一番なれてますね。回転成形の機械で縦と横の回転数は材料によって全然ちがうんです。ちゃんと把握して設定しないといびつなボールになってしまう。

これが失敗したボール。ボールになったときにぐるん、ぐるん、みたいな飛び方ですね」

――ここの会社のボールはすげ~な!とかあるんですか?

「あんまりないですね。大体みんなしっかりしてますね」

――失敗したボールがエラーコインみたいに価値出たりしないですかね…

「まあ出ないでしょうね(笑)。みなさん喜んで持って帰られますけど」
機械の故障で出来上がったいびつなボール。価値はない
機械の故障で出来上がったいびつなボール。価値はない

カラーボール作りが大変そうだ

――そういえばここはどこもラジオが流れてますね

「ラジオ流した方が効率がいいんですよ、音がないよりも。みんなそれぞれ聞いてる局がちがうかったりするんで。ぼくはあちこち移動してるんでぜんぜん話がつながらないですが(笑)」

――夏は暑そうですよね。クーラーつけるんですか?

「クーラーあるんですけど、きかないんですよ。冷却するときに水槽に落とすじゃないですか。あれで湿気が出ちゃうんですよねかなり。そうするとクーラーじゃだめで結局みんな窓開けちゃうんです。みんな汗だらだらでやってます」

5月初旬のこの日は30度、夏場は42、3度になるそうだ。想像するだけでむりだ。二階が一階よりも暑いらしいが、あのお母さんたちがラジオをガンガンにかけながら灼熱の封入作業をしてる。夏場のカラーボールを大切にしよう。
ラジオが流れる中、黙々と作業している。これが一日つづくのだろう。
ラジオが流れる中、黙々と作業している。これが一日つづくのだろう。
取材協力

株式会社石山
http://www5c.biglobe.ne.jp/~isiyama/

※工場見学は個人でも。毎月第二土曜日午前中。詳細はHPに載ってるんで希望の方はメールしてください、とのことです。

この状況、何かに似ているな……

カラーボール、今そんなことになってるのか。おもしろいのはおもしろいのだが(……それで、いつ山岡さんと栗田さんが出てくるんだろう)と話をききながらずっと思っていた。『美味しんぼ』じゃないのかなこれは。

カラーボールの今後について石川さんはいう。

「手に取れば投げたくなるから今の子も投げるとは思うんですよ。ただ手に取るきっかけがないのかなって。

この辺りに保育園が9箇所あるんで、園の授業で使ってくださいと200個ずつ配りました。それで子供たちが投げる形を覚えてもらって、この地域だけでも遊ぶ風習ができればいいなと思ってまして。

投げてほしいですね。投げて遊んでてほしい。遊べばそれなりにおもしろいし、運動なんですっきりもするし」

自分たちが遊んでた遊びがなくなってしまうさびしさももちろんあるが、投げなさすぎは心配だ。無人島に漂流したとき鳥を石で落とせなくて餓死するだろうし、寮住まいのあの子の部屋の窓に石を投げたときも手元が狂って怒ったシスターが出てくることだろう。

石川さんのこうした取り組みを立派だと思うし、頑張ってもらいたい。あのカラーボールの楽しさを残してもらいたい。

ただ、ただである。

社会状況の変化を憂いて最後にわずかな希望を提示して終わる……やっぱり『美味しんぼ』みたいだ。

いや、これはカラーボールで遊んだ思い出で必要以上に感傷的になってるのだろう。石川さんも頑張ってるし『美味しんぼ』もおもしろい。工場見学も見応えがある。
卵型にもできるみたいだ。何用だろう
卵型にもできるみたいだ。何用だろう
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