特集 2014年2月5日

カップを飛び出せ!ラテアート

ほっこりとの出会い

何年か前、仕事の打ち合せに早く来過ぎて時間をつぶすために入ったカフェでカフェラテを注文すると、表面にふわっとしたミルクでハートが、ハートというか「はあと」といった感じで浮かび上がっていた。
「お、はあとだ!」って具合に撮りましたね、写真。
「お、はあとだ!」って具合に撮りましたね、写真。
真剣勝負のビジネス会合を控え、がちがちに緊張したおっさんが時間つぶしのカフェラテにほっこりさせられるとはな、と自嘲気味に笑って飲み干した。
ラテアートとの初めての出会いだった。

その後、ラテアートのトレンドは加速し、かなりの技巧がこらされたものを楽しめるようになってきた。
リーフ。シナモンパウダーの配置もにくい。
リーフ。シナモンパウダーの配置もにくい。
ハートやリーフ、クマ、マンガのキャラクター。
ほっこりしている。実にほっこりしている。
レベルの高そうな装飾のハート。
レベルの高そうな装飾のハート。
日々の仕事に疲れたサラリーマンの心を癒すものはもはやラテアートしかないのではないか。
癒しの友よ、ラテアートよ。

ネットで見るとカフェだけでなく家庭で作った作品も数多く見る事ができる。

私も作りたい、私だけのほっこりを。

ほっこりは作れる

作り方を調べてみるといきなりラテアートの大会に関する記事で「決勝では「命」をテーマにさなぎから蝶への羽化を表現した」みたいなのがヒットして心が後ずさりしたが、
私が満足しそうなレベルのものであれば思いのほか簡単に作れそうだ。高価なエスプレッソマシンも必要ないし、バリスタである必要もない。
ミルクフォーマーとミルクジャグ、これにレギュラーソリュブルコーヒー。
ミルクフォーマーとミルクジャグ、これにレギュラーソリュブルコーヒー。
ダッシュで取り揃えたこれらでまず修練をかねて、ラテアートの基本である「ハート」を作ってみよう。
70℃程にあたためた無調整牛乳をジャグに150cc程入れ、ミルクフォーマーで撹拌する。
70℃程にあたためた無調整牛乳をジャグに150cc程入れ、ミルクフォーマーで撹拌する。
最初に空気を入れるように泡をたてて2秒ほどガゴゴ......
最初に空気を入れるように泡をたてて2秒ほどガゴゴ......
そして今度は空気を入れないようにフォーマーを傾けて撹拌すること約90秒
そして今度は空気を入れないようにフォーマーを傾けて撹拌すること約90秒
ミルクはアーティスティックにほっこりふわっとなるのでこれをカップに注ぎこむ。
トントンと叩いて大きな泡を消す。
トントンと叩いて大きな泡を消す。
ゆっくり回すように、神になった気持ちで。イザナミとイザナギが国を創るみたいなところをイメージしながら。
ゆっくり回すように、神になった気持ちで。イザナミとイザナギが国を創るみたいなところをイメージしながら。
最初は高い位置から、じょじょにカップに近づけて、左右に振るように注ぎ込む。するとラテの表面にミルクが円形に広がるので真ん中に線を書くようにジャグを動かすと真ん中がくぼんでハートが……
ハートを……わあ、あふれた!
ハートを……わあ、あふれた!
できなかった。
ラテハプニングアート。
ラテハプニングアート。
ようじの先で模様をつける。
ようじの先で模様をつける。
ラテアート「鳥」描いたというより解釈した。
ラテアート「鳥」描いたというより解釈した。
カフェでバリスタが作る時のゆったりと優雅にとろとろ注ぎ込む感じでなく、ぶきっちょにミルクをどはどば入れてしまうため、すぐに一杯になって溢れ出してしまう。ハートを描くとかいう前に私の小さな心はテンパりまくってしまうのだ。
まあ、鍛錬あるのみですねとラテドローイングを続ける。
ラテアート「エクトプラズム」
ラテアート「エクトプラズム」
ラテアート「バイト代が予想以下」
ラテアート「バイト代が予想以下」
ラテアート「キノコ」
ラテアート「キノコ」
ランチョンマットを敷いてほっこり度アップを図ったがハートは描けない。
偶然できあがった模様に絵を描いて命名する、ある意味神のような作業が続く。まあそれはそれで楽しいのだけれど。
もう心が折れてラテって描いた
もう心が折れてラテって描いた
ちょっとそれっぽくなった!
ちょっとそれっぽくなった!
つい目を描きこんでしまう……
つい目を描きこんでしまう……
ラテアート「パックマン(なんか吐いてますが)」
ラテアート「パックマン(なんか吐いてますが)」
いっこうに技術が向上する兆しがみられない。
「エスプレッソマシンのスチームでミルクを作るとキメが細かく、作りやすい」という情報を散見するが、今さらそんなのに頼ってたまるか、私を甘くみてもらっては困る。
ジャーン!まあ、安い価格帯のやつなんですが。
ジャーン!まあ、安い価格帯のやつなんですが。
ネットって便利だなあ。こんなでかい電気製品がクリックひとつで 自宅に配送されてくるのだ。これでよりうまくいくはず。自分に甘すぎるおっさんがラテアートにふたたび挑戦だ。
おースチームゴボゴボ。楽しい。
おースチームゴボゴボ。楽しい。
確かにできあがったミルクフォームのキメ細かさが違う。
これならばエスプレッソに優雅なハートを描き出してくれそうだ。
これがせいぜい……結局ウデが大事なんですね……
これがせいぜい……結局ウデが大事なんですね……

中途半端なスキルのまま本題へ

ここまでハートを描くのに悪戦苦闘してきたが、私がエスプレッソマシンを購入してまで目指すゴールはハートではない。
ラテアートはカップを飛び出し、もっと自由になるのだ。浄土を目指すのだ。
ラテアートからラテを取る…… いや、別に取れないな。しからばアートを取る……これも違うな。もういいや、ジェラール・ドパルデューからジェラール取ろう。
というわけで早速ドパルデューの実践である。

ペヤングでほっこり

ぼくらのソウルフード。ペヤングソースやきそば。
ぼくらのソウルフード。ペヤングソースやきそば。
いくつになってもうまいよね。いただきます。
いくつになってもうまいよね。いただきます。
きれいに洗った容器にエスプレッソを投入し、スチームしたミルクを注ぐ。
ゼリーにしたくなった。
ゼリーにしたくなった。
これでキャンバスができた。
これでキャンバスができた。
あとはここに楊枝とコーヒーでひたすら描きこむのみだ。
何を?
フタを。
フタを。
なぜいちいちペヤングのふたをラテに描くのか。ラテアートで好きなものを描きたいと思ってまず脳裏に浮かんだのがこれだったからだ。
びびって後回しにした「ペヤング」と「やきそば」以外 完成。
びびって後回しにした「ペヤング」と「やきそば」以外 完成。
細かい注意書きや成分表などは書けなかった。きっと書けちゃう人はいるんだろうな。米粒にボッティチェリ描いちゃうみたいな人が。
大仏開眼のような厳かな気持ちでやきそば。
大仏開眼のような厳かな気持ちでやきそば。
微妙だけど完成!
微妙だけど完成!
ランチョンマットでほっこり。
ランチョンマットでほっこり。
おいしくいただきました。選べないドリンクバー状態。
おいしくいただきました。選べないドリンクバー状態。
長年見慣れたパッケージでも、このようにラテに模写して見ると、あ、「ソース」ってふたには書いてないのだなあ、とか気付きがあって有意義だった。

写仏でほっこり

忿怒(ふんぬ)の姿で降魔の利剣を振りかざし、あらゆる災魔を屈服させる不動明王様をラテアート化。描き始めた瞬間に髪の毛とかバックの炎とか、いろいろ自分の限界を超えていることがわかった。
剣のするどさが失われて松井棒みたいになった。
剣のするどさが失われて松井棒みたいになった。
ほっこりありがたや。
ほっこりありがたや。
一心不乱で描きすぎて全然写真を撮ってなかったのでさくっとまたカップに戻ります。別の意味で飛び出しますが。

かなしきサラリーマン

身体中に染み込んだサラリーマンの性があれをほっこりさせよと私をかき立てる。
そう、企画書あるところにパワーポイントあり、パワーポイントあるところにこの人あり。
正式な名前は知らないがあえて調べません。
正式な名前は知らないがあえて調べません。
パワーポイントの黒い人である。
口頭や文章ではなかなか理解させることが難しいソリューションの内容をパントマイムでわかりやすく表現する。彼がいなければ重要な事業計画もうまく伝わらずに頓挫してしまう。一事業、ひいては経済の浮沈を握る存在といっても過言ではないだろう。
で、ほっこり化。
で、ほっこり化。
もう一人はすごくぼんやりした。
もう一人はすごくぼんやりした。

パワーポイントは「ぱわーぽいんと」へ

ほっこりした彼らをビジネスの実戦に投入してみる。某社の開発したエクササイズ「シオマネキ体操」をもっと世に広めたい。
「キャチフレーズによる見える化の第1歩です」「うーん、3Hはいいんだが……なんか堅苦しいねえ。ていうかHasamiて」
「キャチフレーズによる見える化の第1歩です」「うーん、3Hはいいんだが……なんか堅苦しいねえ。ていうかHasamiて」
企画書の中で箸にも棒にも引っかからなそうな提案を黒い人が盛り上げているが、いかにもザ・パワーポイントといった感じでいまいちお客様も乗ってこない。
そこでこの黒い人をラテアートに置き換えてみる。
「いかがでしょうか、ソリューション」「うーん、何かこわくないかね」
「いかがでしょうか、ソリューション」「うーん、何かこわくないかね」
いくぶんやさしい感じにはなったものの、できの悪いアニメのワイプみたいでなんか違和感はぬぐえない。左側の人がコーヒーというより、かにみそに見えてきた。
提案をより魅力的にみせるために、もうこうなったらラテアートを軸にデザインしてしまおう。
「いかがでしょうか」「おお、なんでそんなはさみに執着するのかわからないがほっこりしていいじゃないか君!こりゃ我が社のシオマネキ体操も大流行りだよ。よし、御社にお願いしよう!」 ※ 写真提供(シオマネキの):平坂寛(DPZライター)
「いかがでしょうか」「おお、なんでそんなはさみに執着するのかわからないがほっこりしていいじゃないか君!こりゃ我が社のシオマネキ体操も大流行りだよ。よし、御社にお願いしよう!」 ※ 写真提供(シオマネキの):平坂寛(DPZライター)
ほっこライズしたプレゼンテーションで出世街道もばく進である。今思ったが出世街道って味わいのある言葉だな。ほんとにそういう道できないかな。


くたびれた日常から逃避したつもりが結局パワーポイントに回帰してしまった。しかしよく考えたらいっそ日常のビジネスシーンにほっこりを取り込んでしまったほうが素敵なのではないだろうか。損益計算書とか貸借対照表とかもがんがんラテアートにしていこう。ていうかそれ自体が作れないわ。
松本清張マグカップでのラテアート「日本の白い霧(失敗)」
松本清張マグカップでのラテアート「日本の白い霧(失敗)」
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