特集 2013年11月19日

博物館の人にどこがおもしろいのかきいてみる

これがヘラクレスオオカブトやティラノサウルスのようなエース。ペリスフィンクテス
これがヘラクレスオオカブトやティラノサウルスのようなエース。ペリスフィンクテス

これがザ・アンモナイト

「これですね。よくホワイトアンモナイトなんていわれてるんですけど、磨いたりとか加工してないんですけど、すごくきれいですよね。

いわゆるザ・アンモナイトですね。資料提供求められたときもこれを出してます。

これはほんと好きで。素朴だけどきれい、というところが私はとても好きですし、標本というのはあんまり磨かないほうがいいですね。磨くときれいにはなるんですけども」

これがティラノサウルスのようなエース。たしかに独特の色をしている。磨いてピカピカにしたものは他にもたくさんあるが、本来の魅力ではないのか。

これがエース、じっと見ているとアンモナイトの世界の扉が開きそうではある。素朴? 素朴か、素朴かも。うん、いい……かもしれない。
石がついたものがいいという
石がついたものがいいという

博物館の人のおすすめをきく

――みなさんはどれが好きなんですか?

「夫はやっぱりニッポニテスが好きだと思いますけど……私はどちらかというと石についてるものが好きです」

――石についたものですか?

「これなんか好きですよね。素朴ですよね。石も形も好きですよね。自然の状態であるっていうのが好きです」

悦子さんのおすすめは石にまだ埋まってる状態のアンモナイト。さあ、わからなくなってきました。
奥さんの悦子さんは結婚してからアンモナイトを知ったので「マニアではない」という。好きなアンモナイトは石つきのもの
奥さんの悦子さんは結婚してからアンモナイトを知ったので「マニアではない」という。好きなアンモナイトは石つきのもの

「型がいい」らしい

その後も悦子さんは止まらない。

「あと個人的にほんとに好きなんですけど、本体が雄型、とれたものが雌型っていうんですけども、セットになってるものが、これがですね、私はとても好きです。型が好きなんですね。型が好きです(笑)

両方きれいな状態でこれが出るのは少ないんですね。たいていどちらか割れてしまうんですね。とれた雌型も化石なんです」
悦子さんは雄型と雌型がセットになったものがいいらしい
悦子さんは雄型と雌型がセットになったものがいいらしい

マニアではないというが

ずっと丁寧にせつめいしてくれていた悦子さんだったが、このときばかりはせきを切ったようにドドーッと思いが吹き出した。

「型っておもしろくないですか?お菓子の木型とかも好きなんですけど、おもしろくないですか?反対側もこんなにきれいなんだって。しかもマニアの型は見向きもしないっていうのが。私は絶対あったほうが、唯一無二というか、お互い唯一無二ですし、揃ってるとうれしいですよね。すいません(笑)」

勢いあまってあやまられてしまったが、型のよさに共感できるかどうかはおいておいてとにかく圧倒された。この何かみょうにいいこときいた感じはなんだろう。
ずっと丁寧に説明してくれてた悦子さんがあわてたように
ずっと丁寧に説明してくれてた悦子さんがあわてたように

館長のおすすめ

悦子さんが「あっちはマニア」という館長にもきいてみる。

「ぼくはこれ好きですよね、自分で見つけたやつ」そう言う館長が指さすのは入り口に一番近いキャライコセラス。特大のやつだ。
館長おすすめは一番見やすい場所にあったもの
館長おすすめは一番見やすい場所にあったもの
でかいアンモナイトだが、自分で見つけたものだそうだ
でかいアンモナイトだが、自分で見つけたものだそうだ

じわ~っとにじみでるよさ

「まわりは石がついていて、見つけたときは重たかったですね~。当時、北海道で林道を作ったんですね。そのときに崖でボコっと一部見えてまして

やっぱりこういうのは自分で見つけると愛着がわくというかプロセスがわかりますので。プロセスがおもしろいですよね、自分で見つけるっていう」

このとき館長の表情がうわーっと思うほどやわらかくなっていって、たぶん脳には"うれしくてしょうがない汁"みたいなものがじわじわにじみ出てきていたのだろう。

好きな人がかたる好きなものというのはこっちまでなんかうれしくなってくるというか、おっさんの顔をさしていうべきことではないが、ちょっといいものだなあと思う。
いや~、しあわせそうでこちらもいい気分です
いや~、しあわせそうでこちらもいい気分です
「でも今はもうないですね。北海道でアンモナイト掘ってる歴史が100年くらいで長いっていうのと、今は公共工事が少ないんですね。トンネル工事のときが一番出たっていいますね。

だからこういう大きなものはもう、見つからないですね」

この先これ以上のことはないだろうと、館長の語り口は自慢のようでもあるしさびしそうでもあるし。いや、物自体の話はおいといて、今ここにはなんというか豊かな時間が流れている。
掘り出したときの写真を見せてくれた。うんうん、いいよいいよ~
掘り出したときの写真を見せてくれた。うんうん、いいよいいよ~

打ち上げだ、これは打ち上げが必要だ

「でもやっぱり形がね~、やっぱりね~、自然が作る形のなかで普遍的なおもしろさがありますよね~」
「私はもう圧倒的に形ですね~」

やっぱりアンモナイトの形がいい。二人の声がコーラスのようにかさなっていって最終的にはアンモナイト最高みたいな、このあとちょっと打ち上げいこうみたいな空気さえただよった。

その後、もちろん打ち上げはなかった。
「やっぱり形がね~」「私はもう圧倒的に形ですね」アンモナイト愛がステレオになってあふれだします
「やっぱり形がね~」「私はもう圧倒的に形ですね」アンモナイト愛がステレオになってあふれだします

取材協力

伊豆アンモナイト博物館
http://www.ammonite-museum.com/
静岡県伊東市大室高原10-303
TEL&FAX 0557-51-8570

博物館の人にどこがおもしろいのかきくといい顔することがわかった

マニアの人の顔が破れて笑いがこぼれてくる瞬間のさわやかさよ。どんな内向きなコレクターでもコーラのCMのようになる。

こういうのもアリではないか。

博物館にいって「これっておもしろいの? おもしろくないの?」と自分の中で答えを出すのではなくて、博物館の人に好きなことを語ってもらう、ただそれを楽しむだけという形もあるのではないかとちょっと思った。

これを読んで「これって良記事なの? 良記事じゃないの?」ということは置いておいてですね(ところで良記事って何?)、伊豆の博物館でアンモナイトのよさをきくの、よかったな~。
化石クリーニングの品を記念にいただいた。「ダメシテスですね~」ダメ……ここからはじめようと思った
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