特集 2013年11月12日

まだ建つのか!今度はヒノキのスカイツリーが建った

木材の難しさ

――木材で作るのはやっぱり難しいんですか?

「むずかしいら~。四角い面に丸棒がつくならべつだけど丸い面に丸がつくだよ。わかるら~?

ここ(トラス構造の三角形)もだんだん狭くなってくるから。大展望台までこうやって」

――はあ、そうなんですか

「大展望台、知らねえの~?なんだよ~。これが第一展望台でさ、これが第二展望台。

あんた研究してねえわ~。もっと研究しねえとだめだわ~。間詰まってきて勾配がちがうわけだよ。この間はちがうだよ。こっちは広いら~?この勾配がみんなちがってくんの。そうら?」

遅かれ早かれこうなることだったろう。

私も所沢の竹製スカイツリーの人たちのように、スカイツリー同好の士だと思われていたのだ。しかしこっちは"建てちゃった人"同好の士なのだ。

もしお父さんと私がバンドを組んでいたとしたら、きっと「音楽性のちがいで……」と解散を説明したことだろう。
丸棒に丸棒がつくのがむずかしいと。作り方をくわしくきくと企業秘密だそうだ。そ、そんなに重大な技術なのか。
丸棒に丸棒がつくのがむずかしいと。作り方をくわしくきくと企業秘密だそうだ。そ、そんなに重大な技術なのか。

スカイツリーよりも建てた人に興味がある

「もっと勉強しねえと、だめだ、お前は~。やっぱりね、スカイツリーを載っけるにはね、スカイツリーを研究して、それで、話しねえと、恥をかいちまうよ」

取材にきた記者を自分のところの若手のように叱咤するのはさすがの職人かたぎ。

しかし残念なことに、この若手職人はスカイツリーに対しての興味はこれまでもそしてこれからもない。私はこれからも恥をかきつづけることだろう。

――すいません、たしかにスカイツリーに対する認識が甘かったです

「甘え。なんも知らねえもん。この第一展望台にはね、二千人も入るんだよ。第二は千人入んの。いかに規模が大きいかわかるら?」

ついにお父さんの自慢は自作のみならず、本家スカイツリーにまで及んだ。もはやこの話、無限につづきそうだ。
なんとスカイツリーのミニチュアを作っていた。東京デブツリーという。「いいんだよ、デブだからデブツリーで」らしい
なんとスカイツリーのミニチュアを作っていた。東京デブツリーという。「いいんだよ、デブだからデブツリーで」らしい

今ではミニチュアスカイツリーを量産している

――これだけのスケールだと、建っちゃったあとってやっぱり寂しいんですか?

「んでもそのあとスカイツリーのミニチュア作ってよ。これそのうち販売しようかと思って。

ほら貯金箱になってるだよ。500円玉が8万円くらい入る。だから東京デブツリーバンク。デブはデブだからさ。形が。

おもしれ~ら~。ないよ、こんなら~。木箱に入れて一万円で売ろうかと思ってるんだけど」

スカイツリーでデブで貯金できて一万円で木工の民芸品。要素が多すぎて、脳がこの事態を処理しきれない。
貯金箱になっている。その機能、必要なのだろうか。
貯金箱になっている。その機能、必要なのだろうか。
作業場においてあった勝海舟像。チェーンソーで作るらしい
作業場においてあった勝海舟像。チェーンソーで作るらしい
鈴木長吉像。咸臨丸にも乗った河津の船大工。3mある。
鈴木長吉像。咸臨丸にも乗った河津の船大工。3mある。

3mの木像は誰なんだ

――このでっかい像はなんなんですか!?

「こっちが勝海舟でこっちは鈴木長吉って船大工が河津にいたの。咸臨丸にのって勝海舟と一緒にアメリカに行ってるだよ。これ遠い親戚なんだよ、おれの。長吉も元河津もんだから。

腕組んでんだろ? 顔は長吉の顔だけど、体は長崎にある龍馬の体。ケヤキで作ったのよ。こんなのないよ、これ。3mあるよ」

顔は長吉、体は龍馬。なんだその維新のキメラは。なぜ体を龍馬にしてしまったのだ。

しかもこれ親戚なのだ。親戚の3mの木像。それはたしかに今までになかったろう。
下田のお祭り用に坂本龍馬の木像をつくったのがはじまり
下田のお祭り用に坂本龍馬の木像をつくったのがはじまり
そもそもこの木像制作は龍馬伝がはじまり。龍馬伝がはじまったころ、土屋さんは下田のお祭り用に龍馬像をたのまれたそうだ。

土屋さんはある冊子を見せてくれた。鈴木長吉の資料を集めているのだという。
工場や会社用のでかい区画の中にうどん屋がある
なんとか龍馬と河津のヒーローをむすびつけられないか資料集

龍馬伝になんとか親戚を

「龍馬と長吉の接点をなんとか見つけてえの。行きあってることは行きあってんの。龍馬は勝といっしょに軍艦操練所行ってんの。そこに長吉もいただよ。

探してるんだけど無名なんだよ、長吉は」

龍馬と勝、その二人の物語に自分の遠縁である鈴木長吉をどうにかしてはさみこみたいようだ。

その思いが長吉を龍馬と勝にならぶ3mの巨像にしたのだ。技術を持った人に熱情と時間が余っているとこんなことになる!
なんとか龍馬と河津のヒーローをむすびつけられないか資料集
こうやって歴史が変わっていくのかもしれない
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