特集 2013年9月26日

知らない人のランチについていってみる

ついて行くドキドキと美味しかった時の嬉しさたるや
ついて行くドキドキと美味しかった時の嬉しさたるや
ランチはなんだかんだいつも同じ店に行ってしまうものだ。
それも悪くないけれど、色んな選択肢があった方が楽しいランチタイムが送れるだろう。

そこで新規開拓すべく、他人のランチについていってみる事にした。

ついて行く人の見極め方が少し分かってきたぞ。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

前の記事:食べ終えたブドウにまた実をつける

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4日間で4タイプについていこう

やはり性別と年代によって行き先の好みというのが分かれる気がする。若い女性はパスタで若い男性は丼もの。健康に気をつかいだす年代は男女ともにバランスの取れた定食ものだがお店の雰囲気が違いそうなイメージ。

でも実際どうなるかは分からない。4日間で以下の4つのタイプについていくことにした。
1日目:中年女性(自分と同じくらいかお姉さま)
2日目:中年男性(おじさま)
3日目:若い女性(20代くらい)
4日目:若い男性(20代くらい)

1日目:中年女性(自分と同じくらいかお姉さま)

しっかり者ぽい女性2人組についていく
しっかり者ぽい女性2人組についていく
昼の12時に外の通りに出ると、食事に向かうサラリーマンやOLがたくさん。いつもの光景だ。

時間が限られているためか、みな少し急ぎ足。ジックリとついていく人を見定めている場合ではない。目の前をいく同じくらいの年齢の女性二人についていくことにした。
同僚に出くわす可能性があるので表情に気をつけましょう
同僚に出くわす可能性があるので表情に気をつけましょう
知らない人についていくのは初めてでドキドキした。子供ならば叱られてしまうか。いや大人であっても聞こえはよくない気がするが、美味しい食事どころを見つける為である。

見失わないようにと注意を払いながらも、どこに何を食べにいくのかワクワクして口が緩む。しかしそんな時に限って会社の同僚に出くわすのだ。コンビニ帰りの同僚にどこに行くのかと聞かれて「ちょっとあっちの方に」と曖昧な返答をしてしまった。
バーのように見える中華屋さんに到着
バーのように見える中華屋さんに到着
中はムーディな曲がかかる、薄暗いお店だった。
中はムーディな曲がかかる、薄暗いお店だった。
外は天気が良い。それに連休明けとあって気分的に日の差す明るいお店がいいな、などと考えていたが、ついた所はバーのようなお店。

薄暗く、ムードのある曲が流れている。私は一人のためカウンターに通された。頭の斜め上にはグラスが並べられ、昼間から軽く一杯飲みたくなる。とてもオシャレなお店だ。
しかしここは中華屋だ。お店のおすすめサンラータンメン(950円) 辛い!週明けだけど元気出る!
しかしここは中華屋だ。お店のおすすめサンラータンメン(950円) 辛い!週明けだけど元気出る!
メニューにお薦めとあったサンラータンメンを注文する。

バーのような雰囲気の中でサンラータンを食べるとは、不思議だ。さっきまで明るい所がいいなと思っていたので条件がまるで違うのだがそれはそれでまた面白い。

食べてみると酸っぱ辛いトロミと、野菜のシャキシャキ感がたまらない。その辛さは週末からひきずっていたボンヤリとした脳を起こし、新鮮野菜のようにシャキっと背筋が伸びた。

隣に座った男性は五目ソバの汁をすすっては「ハァ~…」と湯船につかった時のような声をもらしている。ああ、そっちの五目ソバも気になる…

店員さんによると、夜も別にバーになる訳ではなく、ソバ一杯だけでも構わないんですよ、といっていた。

1日目で分かったこと

・しっかり者ぽい女性達についていくとオトナの雰囲気の店に入れる(かも)

次の日、今度はおじさまについていった。
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2日目:中年男性(おじさま)

昨日中華を食べたので、それ以外がいいなあと思いながら近くにいたおじさまについていった。が、しかし。
ここ食べたことある。江戸川乱歩や井伏鱒二がよく来ていたという老舗の天ぷら屋さんだ。食べきれない場合タッパに入れてくれるのだ
ここ食べたことある。江戸川乱歩や井伏鱒二がよく来ていたという老舗の天ぷら屋さんだ。食べきれない場合タッパに入れてくれるのだ
ここも来たことがある。ナポリタンが美味しいんだよな
ここも来たことがある。ナポリタンが美味しいんだよな
最初の4人組、次の2人組み共に私が行ったことのあるお店に入っていった。どちらも間違いなく美味しいので入りたい気持ちもあったが、今回の目的はあくまで新しい店探し。グッとこらえる。

それにしても、最初の天ぷら屋さんは創業80年、次の喫茶店は約60年。さすがおじさま、どちらも渋いチョイスだ。
次について行った人たちは会社のビルに入ってしまった。既に食事を終えた人たちだったか…
次について行った人たちは会社のビルに入ってしまった。既に食事を終えた人たちだったか…
また別の組についていくと、少しではあるが自分のいつものテリトリーから離れていった。いつだって来れる距離なのだが行った事がない方面へ。見慣れない細道、そしてその先に美味しい店があるかもと思うとワクワクが止まらない。

しかし彼らは食事処のないビルに入っていってしまった。おそらく会社に戻ったのだろう。失敗した!

食べる時間が足りなくならないか焦りながら、次のおじさま組について行く。するとさっき通った道をまた一周することになった。昨日はさっさと決まったのに、苦戦である。
すごく怪しい
すごく怪しい
4組目でようやくついたのは洋食やさん
4組目でようやくついたのは洋食やさん
少し薄暗い店内、たくさん並ぶ小さいテーブルは人で埋まっていた。地元密着型の懐かしさを感じるお店だ。

「3階なら空いていますよ」と言われ登ってみると、こちらは座敷で人は少なかった。どこに座るか迷っていると、若い店員さんがじゃあこちらで、と6畳ほどの部屋に案内してくれた。

それにしてもやたらと静かである。畳の匂い、部屋の広さ、スリッパの感じ、お茶の器…なぜか小さめの旅館に来た感覚に襲われた。
隣には女性が一人。彼女が制服である事が旅館でないことを教えてくれる
隣には女性が一人。彼女が制服である事が旅館でないことを教えてくれる
私が選んだのはランチセット850円 しょうが焼き、エビフライ、しらすおろし
私が選んだのはランチセット850円 しょうが焼き、エビフライ、しらすおろし
それにしても旅館に来た感がすごいのだ
それにしても旅館に来た感がすごいのだ
ランチセットにはしょうが焼きと書かれていたが、やってきたのは見慣れたものとは違いフワフワしていた。ピカタ風らしい。お箸でヒョイと切れるほど肉が柔らかくすごく美味しい。海老フライはサクサク、しらすおろしはサッパリ。ご飯も多めで満足だ。旅館にいきたい気分になったらまた来たい。(ただし旅館の感覚が味わえるのは3階だけ)

聞けばこちらのお店、昔は有楽町にあったそうで(ここは神保町)、そこから数えるとなんと7~80年続いていると言う。

2日目にして分かったこと

・おじさまはとにかく老舗好き
・男性は食べたらすぐ会社に帰る確率が高いので要注意

その翌日、今度は若い20代女性についていった。
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3日目:若い女性(20代)

財布だけを持ち颯爽と歩く、若くて綺麗めな女性についていくことにした。ついて行きながら、心配になった。財布だけ持って出る女性はお弁当を買いにいくケースが高いのではないだろうかと頭によぎったのだ。若い女性は特に節約の為にお弁当派が多そうだ。

しかし彼女は歩みを止める事無く、お弁当屋さんが並ぶエリアを超え、長い距離をズンズンと進んでいく。この迷いの無さ、ついていき甲斐がある。
だいぶ歩いてきた。高まる期待
だいぶ歩いてきた。高まる期待
しかし入っていったのはファミレスだった…会社から離れたかったのだろうか
しかし入っていったのはファミレスだった…会社から離れたかったのだろうか
会社から早歩きで7~8分は歩いただろうか。なのにたどり着いたのは誰もが入った事のあるだろうファミレスだった。

ファミレスは嫌いじゃない。だけど私が求めているのは行った事の無いお店だ。人生で100杯以上コーヒーを飲んだ事がありようなファミレスは望んでいないのだ。残念。

このままでは時間が足りなくなるぞと会社方面に戻りながら若い女性を改めて探した。
持ち物で見極めるようになった私
持ち物で見極めるようになった私
小さいバッグを持ってる女性を狙う
小さいバッグを持ってる女性を狙う
しかし銀行に入ってしまった(この前についていった一人の女性は本屋に入って行った)
しかし銀行に入ってしまった(この前についていった一人の女性は本屋に入って行った)
戻りながら女性を探すのだが、改めて街を眺めると女性の割合が少ない事に気づく。街の特性もあるかもしれないけど。

しかしよく考えると、女性は会社の中でお弁当を食べる人が男性よりも多い。それに、仮に外食したとしても男性のようにすぐに店を出るのではなく、お店にずっと居続ける(もちろん人による)。

最初の10分を逃すと、食事に向かうOLを見つけるのは大変なのだと知った。
女性は難易度が高いことが判明
女性は難易度が高いことが判明
しかも特に「若いOL」が見当たらない。20代は狭めすぎてしまったか。

3日目に分かったこと

・女性についていくなら最初の見極めが肝心
→女性はお弁当を買いにいく率が高い、一度失敗すると女性は町から消える

・女性についていくなら小さいトートバッグを持った人
→財布だけの場合、コンビニやお弁当屋さんで買う確率が高まる。大きいバッグの場合は外回り中の可能性

・二人以上でいる方がいい
→一人でいる場合、チェーン店などで済ませたり、買い物や銀行などの用事の可能性がある。
35分を超えタイムオーバーだ。結局よく行く立ち食い寿司屋に行った
35分を超えタイムオーバーだ。結局よく行く立ち食い寿司屋に行った
さて翌日は最終日。最後は若い男性についていこう。
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4日目:若い男性(20代)

最終日の4日目。おそらく若者はボリュームのあるお店に入るに違いないと予想し、お菓子を控えて腹ペコ状態にしてついていった。
団体だ。こんなに入れるとこはあまり無さそうだが…?
団体だ。こんなに入れるとこはあまり無さそうだが…?
ついたのは焼き鳥や。ランチは親子丼のみ出しているらしい
ついたのは焼き鳥や。ランチは親子丼のみ出しているらしい
夜は居酒屋になるだろうこちらのお店。とても人気があるらしく、私がついていった団体は入れなかった。しかし私は一人なので入ることができた。彼らは私をここへ連れてくるために来たといっても過言ではない。なんだか申し訳ないがラッキーだ。
カウンターでいただく
カウンターでいただく
店の扉を開けると、卵をとくシャコシャコシャコという音が耳に入る。この音、好きなんだよな。メニューを見ると大・中・小どれも900円(小はサラダ付き)。

中にしようと思ったが、他の男性客が何人か小を頼んでいるのが聞こえてきた。小でも充分な量と予想できた。
あの若者たちはきっと大盛りを頼もうとしたんだろうな
あの若者たちはきっと大盛りを頼もうとしたんだろうな
私は小のサラダ付きを頼んだ。女性にはこれで丁度いい
私は小のサラダ付きを頼んだ。女性にはこれで丁度いい
ホワホワで優しい味!
ホワホワで優しい味!
親子丼は半生のジュクジュクとしたものがあるが、こちらのお店の親子丼はどちらかというとホワホワふんわりとしたでき上がり。お鍋の締めで食べるおじやの様な、甘みの中に塩気があり海苔がよく合う味だった。ご自慢の鶏肉もとても柔らかく、とても美味しかった。

4日目に分かったこと

・お腹が空いている時は若い男性についていこう
・団体が向かう店は、一人の場合入れる可能性が高い
→今回のように団体だと入れないが一人ならOKの場合や、そもそも団体が向かうのは広いお店の場合が多いから入れるだろう

ランチについて行くなら2人以上の男性もしくは小さいバッグを持った女性達

4日間のうち1回は失敗してしまったが、そのおかげで学ぶことが多かった。そして新しく知った3店は、どこも美味しかったのが感動である。

バーのような中華屋、旅館のような洋食屋、焼き鳥屋が作る親子丼。それぞれまるで違ったお店を知ることができて楽しかった。
知らない人達、連れて行ってくれてありがとう。
私についてくる人がいたら、立ち食い寿司屋にたどり着く可能性が高い
私についてくる人がいたら、立ち食い寿司屋にたどり着く可能性が高い
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