特集 2013年8月20日

伝説の中華『珍来』、特大ギョウザと焼きそばを巡る!

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珍来、という中華料理屋を知っているだろうか。
創業者が茨城出身で、現在は東京・千葉・埼玉・茨城に100軒あまりを展開する中華料理のチェーンだ。
だが最近、この珍来がさらに4つの系列に分かれると知った。
見慣れた珍来のさらなる正体を突き止めるべく、僕は珍来を巡る旅に出かけた。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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珍来といえば、この看板と特大ぎょうざ!

珍来の魅力を説明しよう。まずはシンボルとも言えるこの看板だ。
迫りくる太字、力強い色遣い、そして異常な面積。
迫りくる太字、力強い色遣い、そして異常な面積。
オシャレ要素を取り入れる色気など、みじんも感じさせない、自己を主張してやまないこのデザインが、珍来の最大の特徴である。

そしてメニューの売りは、でかい餃子!
普通の餃子の3倍はあるし、超うまい!
普通の餃子の3倍はあるし、超うまい!
ラーメンの付け合せに……と考えてると、うっかり食べきれない物が出てくる。
しかし関東の東半分一帯にありすぎるため、地元民はみんな慣れ過ぎてしまっている。

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ざっと近隣で検索しただけで10店舗ぐらいは余裕。
特別なイメージもないが、楽に使えておいしいので無くなると困る。都内で言うところの、喫茶「ルノアール」ぐらいの立ち位置だ。

実は4系統に分かれていた珍来

さて、これまで意識せず愛用していた珍来だが、じつはこの珍来、起源は同じものの、現在では分岐して全く違う4つの経営元に分かれているらしい。
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なんと!全然気づかなかったぜ!
いつも行く珍来以外はどんな珍来なのか?
茨城・千葉に住んで17年、すっかり珍来のことを知ったつもりだった僕は、珍来コンプリートを目指して旅に出た。
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珍来その1 茨城にやたらある「黄色い珍来」

18歳の時、見知らぬつくば市に足を踏み入れ、そのとき真っ先に感じたのは、「この街にはなんで、こんなに珍来ばかりあるのだろう」ということだった。
全部違う店舗。本当に珍来がありすぎる。
全部違う店舗。本当に珍来がありすぎる。
行けば珍来、戻っても珍来、あまりにいっぱいあるため、学生の間ではすっかり「いじられ」的なポジションになっており、メシを食いに行く店が決まらないとき、「もう珍来でいいか!」と言えば必ずみんな笑う、そんな流れになっていた。
しかし、実のところ珍来はうまい。
しかし、実のところ珍来はうまい。
今日はまず珍来その1「黄色い珍来」の魅力を余すところなく紹介しよう。まずは餃子だ
はちきれんばかりの半透明の皮、その質感!
はちきれんばかりの半透明の皮、その質感!
これが5個で390円。
ラーメンとのセットメニューでも5個ついてくるところに、店の意気込みを感じる。しかし、今日はそこから負けずにさらに5個注文してみた。
10個ぐらいは全然いけるうまさ!
10個ぐらいは全然いけるうまさ!
具も焦げ目も完璧だ。
育ちのいい豚肉とねぎをていねいにまぜあわせ、よく手入れされた鉄板の上できっかり3分半で火をとめ、身なりのいいウェイターがわれわれの前に持ってきた。
と、村上春樹なら絶賛するだろう。

そして珍来と言えばもうひとつ、ソース焼きそば

ここで珍来のメニューを見てみよう。
10個ぐらいは全然いけるうまさ!
ラーメン・丼物・炒め物と並ぶごく普通のメニューだが、目をひくところが一ヶ所ある。
中華料理屋なのに、ソース焼きそば押し!
中華料理屋なのに、ソース焼きそば押し!
炒め麺のトップが、ソース焼きそばなのだ。
焼きそばの申し子とも呼ばれた僕だが、珍来を好きなポイントはここである。今日は勢い込んで「じゃんぼソース焼きそば」にいってみよう。
修学旅行のバイキングのような大きさ。
修学旅行のバイキングのような大きさ。
皿を持つ左手が震える。
珍来、餃子でもわかるように、そもそもの量が多いのだが、そこからさらに麺2倍だ。とんでもない。
なんとか完食。
なんとか完食。
「黄色い珍来」の正式名称は「有限会社・珍来」、茨城県内に8店舗を展開している。また、姉妹店舗として「茨珍麺飯食堂」という店もいくつかもある。
姉妹店舗の既視感がまたすごい。
姉妹店舗の既視感がまたすごい。
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珍来その2 柏にもある珍来、「ドラゴン珍来」

ドラゴンの絵がポイント。
ドラゴンの絵がポイント。
「珍来」と都内で言ってもほぼ通じないが、千葉県の柏市では必ず通じる。柏駅の目立つ通りに、珍来がどどーんと店を構えているからだ。

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このちょっとバカっぽい龍のレリーフが目をひく。
僕は1年ほどに柏市に住んでいたのだが、この看板に住み慣れた懐かしの茨城を感じ、頼もしく思ったものである。
この龍の看板を擁するのが2つ目の珍来「ドラゴン珍来」だ。この日は取手市にあるドラゴン珍来を訪問した。
ある意味ドラゴンクエストともいえる、珍来めぐり。
ある意味ドラゴンクエストともいえる、珍来めぐり。
おおきいぎょうざ が 5ひき あらわれた!
おおきいぎょうざ が 5ひき あらわれた!
やっぱり大きい。
とはいえ、黄色い珍来に比べるとやや小さく、値段も300円とちょい安め。
「黄色い珍来」の餃子がある意味で大きすぎるので、ドラゴン珍来は適正なサイズと価格に進化した結果と言えるかもしれない。
そしてメニューのソース焼きそば押しも同じ!
そしてメニューのソース焼きそば押しも同じ!
メニューを見ると、餃子&ソース焼きそば押しが健在で安心する。
珍来、その姿をドラゴンに変えても、魂は変わらぬままだ。美女がキスしたら黄色い珍来に姿が戻る、とかあるかも知れない。
待望のソース焼きそば登場だよ☆
待望のソース焼きそば登場だよ☆
ドラゴン珍来は、「龍のひげ」とも呼ばれる麺を使用しているんだ☆(嘘)
ドラゴン珍来は、「龍のひげ」とも呼ばれる麺を使用しているんだ☆(嘘)
焼きそば、黄色い珍来とは全然違ってぷつりとした歯ごたえのコシが強い麺だ。
珍来は各店舗で店長がある程度好きなメニューを出していると聞いたことがある。そうした中でも、ソース焼きそばだけは筆頭メニューとして守られていることに焼きそば好きとして無量の感動を覚える。
さらにラーメンがうまい。
さらにラーメンがうまい。
詳しい人には一目でわかるが、珍来の麺は多加水麺という、ぷりっとしてもちっとした系である。
スープは鶏ガラ&とんこつのしょうゆ味で、喜多方ラーメンに近い。この系統のラーメンは大好きだ。
最近流行のどろどろしたラーメンより、珍来のほうがおいしい。
最近流行のどろどろしたラーメンより、珍来のほうがおいしい。
しかし、おすすめのラーメン屋を聞かれたときに珍来と答えると「え、珍来?」と聞き返されるので多少さみしい。
気持ちはわかる。吉祥寺でお気に入りの店を聞かれて「アトレ」と答えるようなものだ。
それでも僕は言いたい、珍来のラーメンはうまい。
今日も完食。ありがとう珍来。
今日も完食。ありがとう珍来。
「ドラゴン珍来」の正式名称は「株式会社・珍来」。
千葉県内に7店舗、茨城県内に3店舗を展開する。特に柏市には4店舗もあるので、もはや柏市民の店と言ってもいいかもしれない。
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珍来その3 系列店なのに「珍来総本店」

つくば市の中でも、一店だけ「総本店」と呼ばれていた珍来があった。
たたずまいが黄色い珍来とかなり違う。看板がやや小さい。
たたずまいが黄色い珍来とかなり違う。看板がやや小さい。
なるほどあそこが珍来のボスなのかー、と思っていたのだが、実はそうではなかったらしい。その店は「黄色い珍来」や「ドラゴン珍来」とは全く別系列の、「珍来総本店」と呼ばれる系列店だったのだ。
「甲羅本店」が、実はそういう名前のチェーン店でしたー、というのと同じ展開である。
この日の珍来は大混雑で行列! 10分くらい待った。
この日の珍来は大混雑で行列! 10分くらい待った。
さて、ネット掲示板を見ると、珍来にはラーメン・餃子だけでなく、定食や丼物にも猛烈なファンがいることが分かる。珍来の常連である友人に、ここのおすすめメニューは何?と聞くと、こんな返事が返ってきた。
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力のこもったアツい返事である。
というわけで、今回はまずおすすめのレバニラ定食とスタミナ丼からいってみた。
レバニラ定食850円、2週間分のビタミン取れそうな充実感
レバニラ定食850円、2週間分のビタミン取れそうな充実感
スタミナ丼600円、肉の下に肉が、さらに下に肉が、という重厚感
スタミナ丼600円、肉の下に肉が、さらに下に肉が、という重厚感
スタミナ丼は肉へ味がしっかり染み込み、刺激的な香辛料の味を、生卵が包み込むバランスの良さ。
たしかにこれはみんなファンになる!
肉と生卵の相性が絶妙で、夢中になる!
肉と生卵の相性が絶妙で、夢中になる!
餃子5個で350円。耳の閉じが少し甘い↑
餃子5個で350円。耳の閉じが少し甘い↑
もちろん、餃子とソース焼きそばも注文済みだ。
餃子は350円、「黄色」と「ドラゴン」の中間で、具の量も中間ぐらいであった。
「珍来のギョウザ価格は、具の量に比例する」の法則を次回の珍来学会に提唱していきたい。
ソース焼きそばは他店より甘め。麺は細くてやわらかめ。スープ付き。
ソース焼きそばは他店より甘め。麺は細くてやわらかめ。スープ付き。

なぜ珍来はこのように分岐したのか?

さて珍来、なぜこのように味やメニューがだいぶ違う各系列へと分岐してきたのだろうか。
そのヒントが総本店のメニューに書いてあった。
「店によって味が違う」と言い切っています。
「店によって味が違う」と言い切っています。
珍来で修業した人がのれん分けを繰り返して増えたチェーン店、それが珍来らしい。フランチャイズではないのだ。
そしてその過程で店の独自性が強くなり、いつしか経営元も分岐していったのだろう。ある一つの物語、歴史を見るようで、とても興味深い過程だ。
そして、なぜどの系列もソース焼きそばが必ずあるのかも気になる
そして、なぜどの系列もソース焼きそばが必ずあるのかも気になる

「珍来総本店」の正式名称は「株式会社・珍來総本店」。創業者の地である茨城よりは、東京・埼玉を中心に35店舗を展開している。都内のターミナル駅だと北千住にあるので、餃子に魅かれた都民の皆さんはぜひ行って欲しい!
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珍来その4 世界に散らばる「その他の珍来」

こうして珍来がちょっとずつ進化しながら分岐して拡散していくさまは、生物の進化を見るようである。
さて、最後にそんな珍来界のシーラカンスとも言える珍来を紹介しよう。
名前が少し違うが、ルックス的には明らかに珍来。
名前が少し違うが、ルックス的には明らかに珍来。
珍来の中には、大きなグループを形成していない小型経営の珍来も存在する。そのうちの一つがこの珍来軒だ。
ここは常磐線沿線のはずれ、龍ケ崎市に店を構える小型珍来である。
ここの珍来にも、餃子&ソース焼きそばは息づいているのか
ここの珍来にも、餃子&ソース焼きそばは息づいているのか
さっそくメニューを見ると……
さっそくメニューを見ると……
さっきの「珍来総本店」が、綴じ本のメニューだったのに対し、一枚のラミネート紙に凝縮されたメニュー。そして総本店に比べて丼もの・定食ものはかなり少ない。だいぶ独自進化が進んでいる。
しかし目的のあのメニューは無事に発見できた。
餃子&ソース焼きそばあった!!
餃子&ソース焼きそばあった!!
よかった、ここでも無事に生き残っていた!
餃子はおすすめ欄に、ソース焼きそばは筆頭に薦められている。さっそく注文しよう。
焼きそば!!
焼きそば!!
餃子!!(&チャーハンセット)
餃子!!(&チャーハンセット)
餃子は300円で5個、おそらくドラゴン珍来と同じものを出していると思う。珍来間のOEMとかあるのかもしれない。
でもラーメンはドラゴン珍来と全然違う!
でもラーメンはドラゴン珍来と全然違う!
麺のモチモチ感が他系列よりも少なく、スープも鳥ガラが主役のやさしくあっさりした味だ。離れた場所で進化してきた経緯をうかがわせる。

それと気になったのが、大盛りの量である。
周りには運転手とか工務店勤務と思われるお客が多く、みんな大盛りを注文していて、その盛り加減の半端なさはすごかった。4人家族の冷やし中華を1皿に盛った ようなものを1人で食べていた。

他の珍来より全体的に50~100円ぐらい安く、かつ量は超大盛りで、まさに地域のニーズに合わせて進化した珍来をここに見た!と言える店であった。
それはそうと、コイン占い機がまだあって感動。(地域のニーズ?)
それはそうと、コイン占い機がまだあって感動。(地域のニーズ?)

珍来が見えてきた、俺の家も近い

茨城に住んでから珍来をいとおしく思い、「♪珍来が見えてきた~ 俺の家も近い~」とサザンの替え歌を歌っていたのだが、千葉や埼玉で勢力をこんなにも伸ばしていると聞いて驚いている。珍来が全国区になる日も近い。
その暁にはトヨタ自動車から「豊田市」になったように、つくば市も「珍来市」に名を変えるのではないかと期待している。
お洒落住宅街に最近オープンした、おしゃれ珍来。(中は黄色い珍来)
お洒落住宅街に最近オープンした、おしゃれ珍来。(中は黄色い珍来)
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