特集 2013年5月31日

奈良の豆腐屋さんの試食が凄い

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奈良にとても美味しい豆腐屋さんがあって、しかもいっぱい試食させてくれたりとサービスが凄いらしい。しかもそんなお店が二件あるという。

なんだ、奈良。一体なぜそんなことになっているのか。いっぱい試食させてもらいに行ってきました。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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その豆腐屋さんがあるという五條市にやってきた。
五條市の五条駅。
五條市の五条駅。
五條市にある駅の名前は五条駅。五條駅で検索すると漢字が違うため検索には引っかからないし、五条駅で検索したら京都の情報ばかりが出るという非常にインターネット上の隠密性が高い駅だった。
伊勢屋豆腐店
伊勢屋豆腐店
これまで磨いたインターネットスキルを総動員して五条駅、そして目的のお豆腐屋さんへたどり着いた。そのお豆腐屋さんは勝手なイメージとは違っておしゃれな感じの店構え。本当に試食とかそんな気軽に出来るのだろうか。
豆腐の種類が多い。
豆腐の種類が多い。
恐る恐る店の中に入ってみると一面お豆腐。もの凄く種類が多いが、別に試食用のものなんて置いていない。あれっ、何か、おかしい。
飲食店のようだが、試食スペース。
飲食店のようだが、試食スペース。
そう思っていたらば、レジの奥に飲食スペースらしき所を見つけた。えっ、あっ、あれは。と店員さんに聞いてみると「ご購入いただいた商品などを召し上がっていただけるんですよ」とのこと。

えっ、なに、そのためだけのスペース!?「じゃあ、食べさせてください!」と言って商品を購入した。

歌って踊れる豆腐

青大豆豆腐と湯葉あんかけを購入。
青大豆豆腐と湯葉あんかけを購入。
飲食店ではないので、あまりお気づかいが出来ずすみませんねぇ。と言いながらお豆腐を用意してくださった。そう言いつつも席に器にお茶に調味料とこ至れり尽くせり。
青大豆豆腐。
青大豆豆腐。
見たことがないので選んだ青大豆豆腐、これが凄い。モロモロッと崩れてねっとりと広がる濃厚なチーズケーキの様な食感。そしてその味が濃いんだこれ。

木綿豆腐よりも濃くて絹ごし豆腐よりもなめらか。爽やかに甘くて炒り大豆みたいに香ばしい。食べ終わってしばらくしても鼻を抜ける空気が香ばしくてビックリした。
湯葉あんかけ豆腐
湯葉あんかけ豆腐
いやはや、青大豆豆腐凄いわねぇと湯葉あんかけ豆腐にも手を伸ばすとこれがまた。さっきとは打って変わってふるふるのお豆腐。口に入れた瞬間とろけていく。

というか多分これは液体で、スプーンですくっても何か奇跡的に形を保っていたけれど口の中で魔法が解けた。って感じの食感。一瞬であんかけの餡と混ざり合って、うわぁー!ってなる。うわぁーっ!!って。なのに香りは広がるのな。

これは凄い、違うわ。食感担当:豆腐、味担当:醤油、香りと旨味担当:鰹節。みたいな従来の構成じゃなくて、歌って踊れて、曲も書く豆腐だ。ここの豆腐。

今からスタート

はぁー、美味い。試食というのとは少し違う気はするがこれは良いなぁと思っていたらば、良かったらこちらもどうぞ~。と言って三種盛りのお皿を出してくださった。

し、試食だ!
左から胡麻絹ごし豆腐、ざる豆腐、青大豆豆腐。また青大豆豆腐来た!
左から胡麻絹ごし豆腐、ざる豆腐、青大豆豆腐。また青大豆豆腐来た!
買って食べているのに試食が来た。しかもこんなに。って思っていたら、次に来たお客さんにはまずダイレクトに試食を勧めていた。なんだ、なにが違ったのか。
もったりとした食感の胡麻絹ごし豆腐(ごま豆腐ともまた違う)。断面で伝わるだろうか。
もったりとした食感の胡麻絹ごし豆腐(ごま豆腐ともまた違う)。断面で伝わるだろうか。
あとから来たお客さんも一口食べて「これはッ…」みたいな表情になっていて、何故か僕が「そうだろう…」と誇らしい気持ちになった。

が、また僕も違う種類の豆腐を食べて「ハッ…!!」となる。胡麻絹ごしはババロアのみたいにもったりとしてガツンとくる。ざる豆腐はさっぱりとしながらクリーミーでホワイトソースのよう。
追撃、わらび餅とこんにゃくの天ぷら。双方ともに凄く美味い。
追撃、わらび餅とこんにゃくの天ぷら。双方ともに凄く美味い。
更に、こちらもどうぞ。と言いながら更にもう一皿と豆乳まで。まさかこんなに来るとは思わなかった。なんだこれ、これが、試食が凄い。か。

確かに凄い、これで十分だ。自分で買った分持ち帰りにすればよかったと思うくらい(実際食べるの超必死だった)。
豆乳、凄く濃いのに苦みとかえぐみがない。
豆乳、凄く濃いのに苦みとかえぐみがない。
豆腐自体も凄いし、サービスも素晴らしい。なんでこんなにサービスしているんですかと聞くと「味わって買っていっていただければなと。でも、用意できるかわからないのでタイミングですね」とおっしゃっていた。

タイミングか、後のお客さんがダイレクト試食に入ったのもそのせいだろうか。過剰サービスにも思う試食だが食べた後だと効果が分かる。これは効く。

お客さんが「あの試食でいただいた物はどれですか?」といって買っていくのだ。僕も、これだけおいしいのだから他の物も美味しいだろう。という魂胆で厚揚げと揚げだし豆腐を買った。

サービスと商売が完璧に合致している試食が凄い豆腐屋さん。でもご厚意なのでそれを期待していくのではなく、もしもあったらありがとう。位の気持ちで行きましょう(これが試食を目当てに二時間電車に乗った男の発言)。
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電動アシスト付き自転車すごい

一軒目のお豆腐屋さんを堪能して二件目へ向かう。一軒目も二件目も駅から結構距離がある。そして豆腐屋さん間の距離は約10キロ。ならば自転車を借りて、往復した方が早いのではないかと自転車を借りた。
一時の相棒
一時の相棒
普通のママチャリが一日500円、電動アシスト付き自転車が一日1000円で自転車に一日1000円はなぁ…。と思ったが、乗ったことがないので乗ったみたいと思って電動アシスト付き自転車にしてみたが衝撃を受けた。
大発明だ。
大発明だ。
なんと、チリンチリンがハンドルと一体化しているのである。アクセル吹かすふりして口でブルンブルンとかいうバイクごっこっもこれがあればごくナチュラルにチリンチリンである。

Google山越えマップ

玉子の自動販売機あったから買ってみたかったけど反応しなかった。
玉子の自動販売機あったから買ってみたかったけど反応しなかった。
Googleマップを頼りに次のお豆腐屋さんへ向かう。途中、玉子の自販機を発見して買ってみたかったけど反応がなく買えずに残念だった。
嫌な予感のする道。
嫌な予感のする道。
色々な物に気を取られながらもGoogleさんの言うとおりに進む。が、なんだか嫌な予感がしてくる。
やはり山越え。
やはり山越え。
登山のルート見て、ここ最短距離だぜ!って行ったら断崖絶壁だった。みたいなことのゆるいバージョンがGoogleマップの指示に従い過ぎるとちょくちょく起こる。ルートは教えてくれても状況は教えてくれない。Googleマップも道具なのだから使う人次第なのだ。

電動アシスト付き自転車はお父さん

毎回こういう状況になると(ちょくちょくなる)テンションも下がってとぼとぼと歩くのだが、今回は違う。電動アシスト付き自転車がついている!
超えたな…。あぁ…。
超えたな…。あぁ…。
電動アシスト付き自転車、凄い。チリンチリンがハンドルと一体化しているだけでなく、坂を登るのが楽。
玉子の自販機をまた発見。
玉子の自販機をまた発見。
買おうとしたけど、500円玉しか持ってなくて買えなかった
買おうとしたけど、500円玉しか持ってなくて買えなかった
興味本位で電動自転車にしたけどよかった。本当によかった。電動自転車でも坂を登るときはある程度疲れるのだが、ずっと自転車を押してもらっているような安心感。心強さがある。
玉子は入ってるのに!
玉子は入ってるのに!
自動で動く車などとは違い電動自転車は漕いだ力をアシストする。自転車を押すのではなく背中を押されている感覚。これ、あれだ、初めて自転車乗るときに後ろでお父さんに押してもらってるやつだ。

形状や乗ってる人のイメージから電動自転車はおばちゃんだと思っていたが、意外にも電動自転車はお父さんだった。何事も体験してみないとわからない。
点滅のせいで分かりづらいが、電池が残り70%。
点滅のせいで分かりづらいが、電池が残り70%。
お父さんとの協力で今までになく頑張って坂を登っているが、手元を見て驚いた。片道の半分も来ていないのに電池が残り70%。

えっ、こんなに減るの早いの!?心境は完全に「お父さん手ぇ離さんといてよ、絶対やで!絶対離さんといてよ!!」だ。
また玉子の自販機見つけたけど、こちらは販売自体してなかった。
また玉子の自販機見つけたけど、こちらは販売自体してなかった。
この展開はどう考えても「絶対離さんって言うたやーん!!」ってコケて泣くパターン(途中で電池切れるパターン)だが、そうなったら電動自転車はただの重い自転車なのでシャレにならない。

今は完全にスマートフォンと電動自転車が頼り。僕は今、電気で動いているのだ。なんとか節約運転で乗り切りたい。

豆腐屋さんの店構えが凄い

田舎
田舎
電池に加えて自転車の返却期限が16時までなので寄り道したい所があっても泣く泣く通り過ぎる。
平地が見えたぞ!関係ないけど、この写真すっごい平衡感覚崩れませんか?
平地が見えたぞ!関係ないけど、この写真すっごい平衡感覚崩れませんか?
電池が残り60%位になった所で平地が見えた。くだりでは電池を消費しないし、目的地はもうすぐだ。
あっ、多分ここだ。
あっ、多分ここだ。
えっ、こんな所に?
えっ、こんな所に?
坂を下りきる前くらいに豆腐屋さんの看板を見つけた。ここだろうと看板に従って行くとどんどん狭い道に入っていく。本当にここでいいのかと思ったら。
秘密基地?
秘密基地?
ここだっ!えっ、ここか!?
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試食っていうかお店自体凄いんですけど

秘密基地か、ジブリの世界か。
秘密基地か、ジブリの世界か。
看板通りに来て、とうふって書いているのでたぶんここなのだが、本当にここなんだろうか。さっきとはまた別の予想外な店構え。
コケが水車の形してる!
コケが水車の形してる!
お店っぽくないというか現実っぽくすらない。和風じゃなくて日本風ファンタジーという感じの存在。
意味分からんけど、分かる店内。
意味分からんけど、分かる店内。
夏真っ盛りみたいな写真が撮れた(5月)。
夏真っ盛りみたいな写真が撮れた(5月)。
外観におののいたが負けず劣らず内装も凄い。雑多な物であふれているんだけれど何故か統一感のある店内。ガチャガチャしながらも落ち着いた外とは全く違う空気が流れている。

これまた豆腐が美味くてちょっと、もう

お客さんの姿が見えたら即作り始める。
お客さんの姿が見えたら即作り始める。
内装にぽかーんとしていたら「はいどいうぞ、試食お持ちしますからそちら座っててくださいねー」とこちらは来店即試食が基本のようだ。
葛城豆腐と豆乳鍋、薄揚げの焼いたん。
葛城豆腐と豆乳鍋、薄揚げの焼いたん。

「はいお待たせしましたー」と試食が出された。そうだ、これだ、試食だ。というか、これご飯あったら食事じゃないか。普通に食べるなら少ないが朝食ならば充実のラインナップ。みたいな陣容。

明らかに試食に対する感想じゃない。
トロットロのじゅわじゅわで美味い。
トロットロのじゅわじゅわで美味い。
そしてまた、この一品一品が美味いんだよ。なんだよ、これ、もう。面白面白で来てネタ的な店かと思ったら味が正統派で美味い。ふざけたやつだと思ってたら仕事はしっかりやっててぐうの音も出ない感じ。
しかも金剛とうふ(もめん)とゆずとうふが自由に食べられる。
しかも金剛とうふ(もめん)とゆずとうふが自由に食べられる。
左がゆず、右が金剛。
左がゆず、右が金剛。
しかもまだ更にお豆腐を食べられる。こういうのもあるのかと見ていたら「あぁ、食べたいんやったら食べたエエんよ。ほら」と言って豆腐を取ってくれた。客で来てたおばちゃんが。

おばちゃんに取ってもらった金剛が豆より豆の味がする。本当になんなんですかね、ここの豆腐は。美味い、本当に美味い。
冷蔵庫がメニュー表。お昼二時過ぎで既に売り切れの商品が多数。
冷蔵庫がメニュー表。お昼二時過ぎで既に売り切れの商品が多数。
こちらでも何でこんなにサービスしてるんですか?と聞いてみると「ただポーッと立って見てても面白ないでしょ、それやったらちょっとでも商品食べてもろたらエエなと思て。それで買うてってもろたら一番ですけどね」と笑っていた。
一日一組限定で隠れ座敷にてお食事がいただけるらしい。試食でこうなんだから、食事となるとどうなってしまうのか。
一日一組限定で隠れ座敷にてお食事がいただけるらしい。試食でこうなんだから、食事となるとどうなってしまうのか。
一軒目の伊勢屋豆腐店でもこちらの梅本とうふ店でも試食の効果が絶大だ。食べた人が豆腐とか油揚げを二千円とか三千円位ドッと買っていく。大盤振る舞いの試食、これはサービスかと思っていたが戦略だ。

初めて来た人に「試しに買ってこか」と買わせて「美味しかったからまたいっぱい買おう」とつなげるのではなく、初来店でしっかり食べて貰ってその場で「また食べたい」と思わせる。初回で客をリピーター化するという荒技。
とうふドーナツも美味かった。
とうふドーナツも美味かった。
という勝手な妄想をしてしまう、それを実現できるんじゃないかと思っちゃう位に両店のお豆腐が美味しかった。もちろん、これらはお店側のサービスですのでご来店の際にはお互い気持よく過ごせるように思いやりを持ってすごしましょう(どういう立場からの発言なのか不明)。

と、いう事で面白がって行ってみた豆腐屋さんだったけれど、今思い出すと試食凄いどうこうよりもあそこの豆腐は美味しかった。という味の印象が残った。

どういうきっかけでも、いいものに触れるとちゃんとそれが残るんだなぁ。と、ちょっとでも触れさせれば捕まえる力のある豆腐があるからこその試食大作戦。試食でも良いのでちょっと食べてみたらいいかもしれませんよ。

ちなみに、帰りはGoogleマップに従わずに平坦っぽい道を選んで行くと、電池もあまり消耗せずに無事に戻ることが出来ました。
二件目行く途中で見た野菜直売所の野菜がもの凄く安くていっぱい買った。奈良、超良いね。
二件目行く途中で見た野菜直売所の野菜がもの凄く安くていっぱい買った。奈良、超良いね。
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