特集 2013年5月16日

壊れたニットを編む機械~古い機械をハッキングする

ハッキングのすばらしさ

最初に教科書の落書きの話をしたけど、すでにある機器をハッキングするのは、自作とは全然違う楽しさがある。

編み機をイチから作ろうと思うと、前ページでガブトガニの裏を見てもらったとおり、なんたってこの複雑さだ。いくらこのメンバーといえど到底できない。
「(ニッティングマシンについて)人が作ったというよりは、元々こういうものがあったとしか思えない」「神の手で作られたものだ」(よしだ)

でも、すでにある機器を改造するのなら、大企業が何人ものエンジニアを投入して作った技術も、神が作った技術も、全部自分のものにできる。これがもう、ハッキングのたまらない面白さだよ、と僕は思っている。

ハッキングの難しさ

で、ここからはハード面のハッキングを担当したよしださんが語ってくれた話。ただハッキングには難しさもある。
人が作った機械だから、設計図なんてない。しかもカブトガニは裏側にあるから、動かしながら見ることもできない。
上からキャリッジを覗いても、このロボみたいな顔と目が合うだけ
上からキャリッジを覗いても、このロボみたいな顔と目が合うだけ
ので、いまだに動作のしくみの大部分は謎に包まれている。

そうするとどうなるかというと、改造するときも「ここはこういう仕組みになってるからこうすれば動くはず…」みたいに理詰めで設計できないのだ。彼らができることは、仮説と憶測をもとに、パソコンから送る電気信号をちょっとずつ変えることだけ。その反応を見て、その変更が正解かどうか、判断するしかない。
別のパーツ。このなかに16個のモーターが入っていて、200本の針を動かしている。どうやって16個で200本動かしてるのかがまた、謎(しかしここは現在解明されたとのこと)
別のパーツ。このなかに16個のモーターが入っていて、200本の針を動かしている。どうやって16個で200本動かしてるのかがまた、謎(しかしここは現在解明されたとのこと)
仕組みを調べるために分解でもできたらいいんだろうけど、やっちゃったら二度と組み立てられないような、複雑な機械である。しかも機体は生産終了品の貴重なもの。ここまで気の遠くなるような試行錯誤があったことが察せられる。

子供とハッキング

そうそう、それに関して面白いやりとりがあったので、収録しておきたいと思う。

ヌケメ「石川さんのTwitter見てるんですけど、ご飯が固すぎて子供が泣く話が面白かったです。」

うちに小さい子供がいるんだけど、彼が0歳の時の話。ごはんの途中で急に泣きだして、なんで泣いてるのかわからないときがあった。まだ言葉はしゃべれないから、ごはんが熱いのかなとか、水が飲みたいのかなとか、こっちでいろいろ想像して対応してみるんだけど違う。結局最後にわかったのが、「ご飯が固い」だった、という内容の話でした。

ヌケメ「そんなのわかるか!って思いました。」
文章が続くので埋め草写真を。パソコン側のソフトを作った菅野さんがもうすぐ海外に行くというので、この日はヌケメさんが使い方を習っていた
文章が続くので埋め草写真を。パソコン側のソフトを作った菅野さんがもうすぐ海外に行くというので、この日はヌケメさんが使い方を習っていた
石川「大変でしたよ。しゃべれないから察するしかないんですよね。」

ヌケメ「最終的になんでわかったんですか?」

石川「夫婦で考えてて、嫁が『そういえば最近ごはんちょっと固くした!』って気づいて。で、次回やわらかいのあげたら泣かなくなったんです。ほんと一つ一つ試して、反応見るしかないんですよ。ハッキングとやってることは同じです。」
写真右、トイレに行ったと思ったら突然サンバパレードの衣装で現れ周囲を驚かせるヌケメさん
写真右、トイレに行ったと思ったら突然サンバパレードの衣装で現れ周囲を驚かせるヌケメさん
よしだ「まるっきり同じだ!これ(ニッティングマシン)も、編み機の仕組みを全部調べきるのは不可能だから、ひとつひとつ入力を変えて反応を見るしかないんですよ。試行錯誤して、たまたまうまくいくやり方を探るしかない。それの積み重ねですよ。結局、今でも中身がどうなってるかはわかんないんです。」

育児とハッキングが一緒、という意外な共通点に興奮した話であった。
空中を旋回中、獲物を見つけ急降下するヌケメさん
空中を旋回中、獲物を見つけ急降下するヌケメさん
ちなみにお気づきのことと思いますが途中からヌケメさん関連の写真キャプションはウソです。(グリッチしてるのをいいことにすみません…)

取材中にはもっと具体的な、試行錯誤とそれにより明らかになっていく謎の話もいろいろきいた。僕は結末までセットで聞けるから本当に聞けば聞くほど面白かったのだが、でも同時に、聞けば聞くほど「うわ、面倒くさそう……」という内容でもあった。
そんな試行錯誤の結果、たどりついた制御部分
そんな試行錯誤の結果、たどりついた制御部分
もとはこんな感じでした。
もとはこんな感じでした。
ただ、面倒くさそうな作業だけど、みんな本当に楽しそうにやっている。いや、たぶん楽しいんだろうなこれ。面倒くさいから燃えるんだろうな。だって挑戦心ってそういうものじゃん。
圧倒的な面倒くささを知らされた直後にも関わらず、僕も何かハッキングしようかな…とモチベーションを掻き立てられるような素敵な現場だった。

開発はまだまだ続きます

悪い冗談みたいなグリッチも面白いし、機械のハッキングも面白い。その二つを融合させて面白くないわけがない、といったプロジェクトのレポートでした。

そしてグリッチニット開発はまだまだ続きます。今はレース編みの穴を使ったグリッチを研究中とのこと。このプロジェクトの最新情報は、glitchknit.tumblr.com にてヌケメさんが逐一更新しています。

それから、このプロジェクトへの出資を募るクラウドファウンディングも始まっています。ステッカーからグリッチブランケットまで、金額に応じていろいろもらえます。詳しくはREADY FOR?のページへどうぞ。
作ってもらったニットは編集部入口に貼ります(仮止めなので超ゆるゆるですが、ちゃんとする予定)
作ってもらったニットは編集部入口に貼ります(仮止めなので超ゆるゆるですが、ちゃんとする予定)
<もどる ▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ

↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓