ーー集めたキッカケは何ですか。
試し書きコレクター、寺井広樹さん「世界放浪してた時、ベルギーで試し書きを見て、いいなと思ったんです。 集めるキッカケになったのは、この試し書きですね。」
これが、コレクションのキッカケになった、ベルギーの試し書き。カワイイ。
ーー41ケ国ぶん集めたそうですが、そんなに各地に行かれたんですか?
「自分で集めたり、友だちに送ってもらったり、ですね。世界の試し書きを集めつつ、日本に帰ってから、日本のものも集めたんです。」
ーー海外の試し書きって、言葉の意味とか全然分からないから、絵みたいですね。
ベトナムの試し書き。ざっくり感がベトナムっぽい…?
ベトナムの試し書きなのに、なぜか「中国」って書いてありました…。
イタリアの試し書き。格調高い感じですね。万年筆の絵なんか書いちゃったりして。
ポーランドの試し書き。なんだか、目がまわります。
コロンビアの試し書き。思いっきり染みてます。ペンが不良品だったのかな?
グァテマラの試し書き。1人か2人くらいしかタメシガキしてませんよね、これ。
ニカラグアの試し書き。ニカラグア感は…ないなあ。
エチオピアの試し書き。ペンが不良品が多いので、本気度の高い試し書きになっています。先進国ばかりに試し書きがあるわけじゃない!
アルゼンチンの試し書き。値札にも書いちゃってるところがチャームポイント。
コロンビアの試し書き。似たようなものが並んでいるような、全然違うような、不思議な感じ。
オーストラリアの試し書き。さっぱりしています。
中国の試し書き。さすがに漢字が多い。「疲れた! 疲れた!……信じる事が出来ない」という意味の言葉など、後ろ向きなことも書かれているらしい…。
スウェーデンの試し書き。そう言われればそんな気もしないでもないスタイリッシュさ。
ケニアの試し書き。紙の質が悪いせいか、保存に苦労されてるとか。
ーーこれって『試し書きください』って言ったら、くれるものなんですか?
「海外では、くれましたね。旅の恥はかき捨て的に、観光客ノリでお願いしてしまうので、もらっていきやすいですね。」
ーー最初、交渉する時ってどうしてるんですか。
「『これ、持っていっていいですよね?』って言うんです。」
ーー貰っていいことが前提な言い方ですね。
「店長とか呼ばれてややこしくなったら、名刺を渡して、世界の試し書きを集めていることを、説明する次第です。日本国内の、某高級文房具屋さんには、顔を覚えてもらってますよ、向こうから集めてくださいますね。有り難いです。」
ドイツの試し書き。ドイツっぽいかなあ。あんまりガチッとした感じはないですね。
イタリアの試し書き。なんか自由! のびやかな線。
カンボジアの試し書き。これ、風景なのかなあ??
マレーシアの試し書き。見えにくいですが、修正液を試し書きしているところが興味深い。あと右側の、マンガ絵(片目)はなんだろう。マレーシアのマンガファンが書いたのかしら。
ーー試し書きの、どのへんに惹かれますか?
「人に見せて書くものじゃないから、その人の『素』が現れているので、無意識のアートというか、人間模様が浮かび出ていると思うんです。
あと、ピックアップするタイミングが難しいんですよね。その場で貰っていくか、1時間お茶を飲んでから貰っていくかで、試し書きが変わってしまいますから。まるめて捨てられている場合もありますし。」
ーー作品が変わっていっちゃうんですね……あ、電話しながら書く絵と、試し書きとは、違うんですか? あれも変な絵になっちゃいますけど。
「違いますね、『ラクガキ』と『下書き』と『試し書き』と『サイン』は違うんです。電話中の絵は、ラクガキですね。単にペンの書き心地を試すのが試し書きで、誰にも見せるとは思ってないところが、面白いんです。」
フランスの試し書き。見るからにアートっぽい。お洒落、かつ余裕を感じる…。
こんなにでかい、試し書き用紙もあるらしい…(フランス)。
「試し書きの楽しみ方って、集めている間の5年で変遷してまして、昔は書いてある文字が楽しかったんですけど、最近は純粋にアートとして楽しむようになってしまっています。」
ーーアートですか。アート…かなあ。いや楽しいですけど。
「言語解析もやっていて、国民性も調べるんですけど、世界共通して書いてあるのは『お母さん大好き』って言葉なんですよね。あとハートマークですね。」
ーー『お母さん大好き』が一番多い! すごいですね、その話は。
筆ペンの試し書き(日本)。みんな年賀状を書く気持ちでいっぱいなのが伝わります。
万年筆の試し書きは「永」という字がベストなんだとか。だからみんな永と書くらしいです。
JFケネディという記述が唐突過ぎ。「一瞬本人かと思いました。そういう想像をしていくのが面白いんです」と寺井さん。
ーーどうしてこんなに好きになっちゃったんですか?
「家にも飾ってるんですけど…世の中、キレイごとばかりですが、試し書きにはそうじゃないものが、現れていると思うんですよねえ。試し書きを眺めることについては、人に広めたいという気持ちと、広がって欲しくないという気持ち、両方あるんですよ。だって大塚さん、これから意識しないで試し書き出来ます?」
ーーうーん、意識しちゃうかも…。
寺井さんは「これが好き、これも好き」と、試し書きを一枚一枚、紹介してくれた。
私は、無邪気に「面白いですねえ」と答えていたけれど、
「あの試し書きは、世界中の大量の人間が、無意識で記した線なんだ」
と思い返すと、ゾッとした。
パワーを秘めてるぞ、試し書き…!
寺井さんが収集・セレクトした試し書きが観れます。開催は1日だけ。お見逃しなく!
「世界タメシガキ博覧会」
2012年3月17日(土)12:00-20:00
問い合わせ ラップネットシップ 03-5411-3330
http://tameshigaki.org/