特集 2011年9月15日

屋上にあがりたい

屋上ガイダンス

屋上、いいよねという前提で始めてしまっているが、どうだろう。その感覚は共有できているだろうか。
屋上につながる外階段もいいものだ
屋上につながる外階段もいいものだ
屋上はふつう、未知の場所だ。下から見上げてあの上はどうなってるんだろうと思うだけ。

登れる屋上は限られている。一般のビルに勝手に上るのはダメだし、自分が住んでいるマンションにしてもたいてい屋上の扉には鍵がかかっている。
こういう、何でもない屋上がいい
こういう、何でもない屋上がいい
だから上がれる屋上はふつう学校の屋上くらいだ。でもそれは記憶の中にしかない。いま、大人が問題なく上がれる屋上は、六本木森タワーとかの展望台としての屋上だけだ。

たしかに、そういう用意された屋上もいい。でもぼくは、なんでもない屋上にただ上がりたいだけなんだ。この感覚、分かってもらえるでしょうか。
このRボタンを押したい
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上がれる屋上は、上がるための屋上だ

調べてみると、上がれる屋上は、上がるために用意されたものばかりだった。デパートの屋上、駅ビルの屋上、タワービルの屋上。まあそうだよね。
恵比寿駅ビル屋上庭園。みごとに用意されている。
恵比寿駅ビル屋上庭園。みごとに用意されている。
用意された施設の屋上は大変きれいなのだが、やっぱりこういう感じの、用意されてない屋上に出てみたいのだ。
三軒茶屋バッティングセンター脇の屋上。階段から撮ったのだが、残念ながら降りられない。
三軒茶屋バッティングセンター脇の屋上。階段から撮ったのだが、残念ながら降りられない。
なんとかして、マンションとか雑居ビルの屋上に上がることはできないものだろうか。

屋上カフェというのがあるらしい

妻に相談してみると、世の中には屋上に出られるカフェというのがあるらしい。なんかこじゃれた感じだが、たいていは雑居ビルの屋上にあるようなので、無骨さはある程度のこっているだろう。

まず向かったのは恵比寿のヌフ・カフェというところ。
雑居ビルの階段を登りきった先に、屋上への扉がある。
雑居ビルの階段を登りきった先に、屋上への扉がある。
まずは室内の店内で注文をするのだが、このときに屋外の席を選ぶことができる。迷うことなく屋外にすると、運良くその日は先客がいなかった。
薄暗い
薄暗い
その日は曇りで、屋上は薄暗かった。晴れた日はさんさんと客も多いのだろうが、屋上の飾りのない感じを楽しむには、曇りでちょうどいいと思った。
コーヒーをたのんだ。おいしかったですよ。
コーヒーをたのんだ。おいしかったですよ。
すぐ隣にビルがせまる
すぐ隣にビルがせまる
机や椅子が並び、きれいに掃除されているという点では用意された屋上であることに違いないのだが、この圧倒的な灰色と、幸いにして他の客がないことが、素の屋上感を高めている。

屋上カフェ、なかなかいい感じのようだ。

三軒茶屋の屋上カフェへ

同様のカフェはそう多くないようで、次はちょっと離れて三軒茶屋へ向かった。エーブリッジというお店。
キャロットタワーをのぞむ
キャロットタワーをのぞむ
ここは非常にこじゃれている。木のベンチが凝ったレイアウトで置かれていて、素の屋上の感じがあまりしない。

そのかわり(?)眺めがいい。戦後から続く駅前の三角地帯もこんなふうに一望できる。
闇市から続くといわれる商店街
闇市から続くといわれる商店街
片隅にかろうじて残る素の屋上
片隅にかろうじて残る素の屋上
隅っこに見つけたパラボラアンテナと室外機、そして謎のコンクリートブロックが、素の屋上を思い出させてくれていい。あんまり見ないで・・というふうに身を寄せているところもいい。

本来あがれないところに上がりたい

カフェとしての屋上には上がれた。そしてそこは結構いいところだった。ふだんと違う雰囲気のカフェに行きたいと思ったときにはいい選択肢だろう。

ただ、ぼくとしてはやっぱり何でもない屋上にこそ上がりたい。でもどこに上がれるだろうか。

そこで直球勝負に出ることにした。本来は上げてもらえないだろうふつうのマンションの屋上に、なんとか上げてもらえないかお願いしてみるのだ。

でもやっぱり上がれない

たとえばあのマンションはどうだろう。
茶色の4階建てマンション
茶色の4階建てマンション
なにも悪いことをしようってわけじゃない。ただ屋上に上がりたいだけなんだ。管理人さんに話したら「変わってるねえ」とか言われても笑って許してくれるんじゃないか、と思ったら、

「あーダメだね」

と明らかに迷惑そうな顔で断られた。ちょっとだけでも上がらせてもらえませんか?といっても、

「いやーダメダメ」

とにべもない。

うすうす分かってたけど、やっぱりそうだよな。怪しいし、面倒くさいことにはかかわりたくないよな、と一発目でかなり心が折れた。

上がらせてもらえた!

2軒めも、3軒めもだめ。管理会社に電話しないと行けないようなところはとにかくだめだった。でも4軒めに、

「散らかってるけど・・いいですよ」

といってくれる管理人さんについにめぐり合えた。ありがたい!人の心のやさしさが身に沁みます。
屋上への扉が・・
屋上への扉が・・
いま開かれる!(ゴゴゴゴ・・)
いま開かれる!(ゴゴゴゴ・・)
なにが「ゴゴゴゴ・・」だという感はあるが、このときはそのくらいの気持ちだった。さあ、いよいよ見せてもいますよ、ふつうのマンションの屋上を!

マンションの屋上ってこんなだったっけ

無理をいって屋上に案内してもらえることになり、悪いなという気持ちと、わくわくする気持ちが半々だった。階段をのぼり、屋上へ出るとそこはこんな景色だった。
空が広くて気持ちいい
空が広くて気持ちいい
ベンチもある
ベンチもある
なんというか、だいぶおしゃれな感じの屋上だった。

最近手入れしてなくて・・ 」という花壇にはたしかにセイタカアワダチソウが伸びていたりするものの、植えてあるローズマリーはいい香りだし、洗面台やベンチもあってきれいだ。

貯水タンクの隣でエアコン室外機がうわんうわん言ってる・・というイメージとは遠い。
左側は採光窓だろうか。最上階がうらやましい。
左側は採光窓だろうか。最上階がうらやましい。
ちなみに、さきほど断られた茶色のマンションの屋上を上から見ることができた。
右側のマンション
右側のマンション
貯水タンクのわきに控えめな室外機。シンプルでいい屋上だ。左隣の白いマンションも、なんの飾り気もなくていい。

帰り際、管理人の方にローズマリーを何本か頂いた。いまでも家にあります。ありがたや。

高層マンションの屋上は病院風だった

つづいて近くのマンションに向かい、1階の管理人室にいた方に相談をしてみた。結構な高層マンションだし、だめだろうなあと思っていたところ、

じゃあ、ちょっとだけだよ

と往年の加藤茶さんのようなノリで快く許して頂けた!世の中いい人ばっかりだ。
鍵を開ける瞬間が一番どきどきする
鍵を開ける瞬間が一番どきどきする
かなり年上の方だったので、ガキがアホなことしてやがるなと思ってくれたのかもしれない。まったくそのとおりです。

扉の向こうはこんなふうだった。
おお!
おお!
これはまた綺麗な屋上だ。色合いも清潔感がある。管理人さんに尋ねたところ、青いジャングルジムみたいな骨組みは物干し竿で、住人の方がここで干せるようになっているらしい。つまり住人が自由に出られる屋上なのだ。うらやましい。

すごくきれいな屋上ですね!とぼくが言うと、ちょっとだけ微笑んで、

「あっちあっち、スカイツリーが見えるよ」
指差すほうを見ると、
指差すほうを見ると、
スカイツリー!
スカイツリー!
きょうび、スカイツリーなんてどこからでも見える。でもなんというか、ふだん入れない屋上から見てると思うとなんだかすごくいい景色のように感じる。
左側のきのこが気になる
左側のきのこが気になる
ここに見えてるのは換気扇だそうだ。左側のきのこみたいなのもそうなのかな。とにかくいろんなものが珍しい。
入ってきたところの扉がまたいい。屋上といえばやっぱりこの扉だよ。
入ってきたところの扉がまたいい。屋上といえばやっぱりこの扉だよ。
青い物干し竿をみながら、屋外にある美術の展示(インスタレーション)みたいだなとちょっと思った。すごくきれいで、箱根の彫刻の森美術館とかにあってもおかしくない。でも物干し竿。
青を基調とし、光と影をテーマとしたインスタレーションが、見るものの心を洗濯へといざないます。
青を基調とし、光と影をテーマとしたインスタレーションが、見るものの心を洗濯へといざないます。
想像以上にきれいな屋上に驚きながら、管理人さんにお礼をいってマンションを後にした。

物足りない感じはあるが、出られる屋上はある

無理をいって屋上に上げてもらったりもしたわけだが、当初の願いは一部叶って、一部かなわなかったように思う。

まずは、普段入れない場所に入れた!というどきどきがうれしかった。すこーんと抜ける空の開放感もいい。ただ、こどものころのどきどきは結構なところが探検とか冒険心からきてたように思うので、案内してもらった今回では、そこまでは再現できなかった。でもそれはしょうがない。
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