「家出のドリッピー」という物語を読んだ。
かわいらしい雨つぶの子どもドリッピーが家出をして、キリギリスに出会ったり、風に運んでもらったりして旅をするというお話だ。
おとぎ話っぽくて、とてもおもしろい。
ただし一方で、実際の雨つぶの旅はもっとリアルでえぐいものに違いない。下水管で汚水にまみれ、下水処理場で再生されるドリッピー。そんなお話もあっていいんじゃないか。
ファンタジーの余地のないツアーに行ってきました。
(text by 三土たつお)
雨つぶの旅を追いかける
空から降ってきた雨つぶドリッピーの旅を追いかける。そんなつもりで雨つぶのゆくえを見てみることにしたい。
もちろん、ここでのドリッピーはしゃべったり悲しんだりすることはない。リアル液体としての雨つぶだ。
まずは地面に落ちてくるところから
空から降ってきた雨つぶは、最初に固い舗装に叩きつけられる。
やわらかい土や草に着地できるのは運がいい場合だけだ。たとえば東京都心のばあい、地面の90%ちかくは舗装やビルのコンクリートなどによって覆われているらしい。
ぼくらのドリッピーもあえなくアスファルトの舗装に落下したことにしよう。
そして雨水ますへ
舗装にたまった雨つぶは、表面を伝わり、傾斜にしたがって車道のわきにある雨水ますなどに集まっていく。
そしてその先は、暗くてせまい下水管の中を進んでいくのだ。
下水道管は人間の静脈にあたり、地面の下に網のようにはりめぐらされている。毛細血管にあたるものは直径が20cmくらいしかなかったりもするそうなのだけど(下の写真など)、
参考:東京の麹町付近の下水道管枝線。 超せまいので機械を入れて作業してるところ。
東京のばあい、下水道管の約2割は直径が80cm以上あって、人も入れるくらいの大きさらしい。
東京都下水道局の方にお願いしたところ、なんとありがたくも下水管の中にいれさせていただけることになった。さっそくドリッピーの後を追って中に入ってみることにしよう。