やけくそ気味な夢へと向かって
さあ、余計な思いは脱ぎ捨てて、どんどん風船を膨らませていこう。夢を実現するのに必要なのはそういうことなのだ。今回は普段居間として使っている四畳半の部屋を風船で満たしたい。
夢を叶えるぞー
風船を膨らませるためのポンプも準備したのだが、実際に使用してみると、どうもうまく空気が入っていかない。そのため全て口で膨らませることとなったのだが、5個ほど入れたところで早くも疲れてくる。
風船は全部で300個ほど用意したのだが…。道のり長いな。
それでもなんとか10個ほど膨らませる。おお、部屋の隅にちょっと転がっているだけでもかなりのファンシーだ。
驚くべき風船のファンシー力。真昼の夢がすでにここにある。
小一時間膨らませただろうか、おかしな夢はどんどん加速していく。もう軽くドリームズカムトゥルーだ。
全部息で入れていることもあり、かなり疲れた。視覚的に楽しいことは楽しいのだが、フィジカルへの負担は予想以上にかかってくる。そういうわけでここで小休止、今日のお昼はラーメンだ。
風船に囲まれただけなのに、かなりおかしなことになっているような気がするラーメン。ファンタジー力とラーメン力が妙なバランスで拮抗しているとでも言えばよいのか。
しかし、写真では伝えられないこともある。ラーメンは普通においしいのだが、いかんせん風船がゴムくさいのだ。
楽しい夢の国ではあるのだが、においの方はあからさまゴム臭。直面したのはそんな現実の厳しさ。冷静に考えれば当たり前のことなのだが、実行してみて初めてわかることもある。
あ、電話が鳴り出した。
かかってきたのは仕事の電話。「はい、ええ、その件につきましてはですね…」などと、ビジネスモードに切り替えつつも、囲まれてるのはこんなファンタジーな状況。
テレビ電話でなくてよかった。先方に状況がばれたらふざけているようにしか見えないだろう。
秘密兵器を投入
上に載せた電話中の写真だとかなり風船に囲まれているように見えるが、実はまだまだそうでもない。
近所の人に見られたらすでに言い訳できない状況であるのは確かなのだが、部屋が風船でいっぱいという状態にはまだ遠い。すでに体力的にはつらくなってきているので、ここで隠し玉を使いたい。
先に紹介した風船専門店で買ってきた巨大風船だ。マウスと比べていただけると大きさがわかりやすいかと思うが、かなり大きい。膨らませると直径が60cmにまでなるらしい。
これで一気に体積を稼ぎたい。さあがんばろう。
……確かに大きく膨らむことは膨らむのだが、それだけに吹き込む息の量も半端ではない。吹いても吹いてもあんまり大きくならない。そして吹けば吹くほど、大きくなる様子が実感しづらくなる。
人生の矛盾が暗示的に垣間見えたような気がしたりもしますが、やってることは風船を膨らませているだけです。
さあ、息も十分入れて、口もしばったので巨大風船を仲間たちのもとへと放つ。ただでさえ夢見がちな空間であるのに、その中でも巨大風船はさらなる異彩を放つ。
普通の風船もどんどん膨らませていき、まんべんない感じで風船が室内に広がってきた。しかしまだまだいっぱいという感じではない、夢に向かって黙々と膨らませ続けるのだ。