僕は考えた。 僕の家計を圧迫させているのは電気代である。
電気なんて、本当はなくてもいいんじゃないか。
そうだ、きっとそうだ。
電気は必要なふりして僕らの生活の中に入り込んでくる。
でも実は、電気がなくたって僕らは生きていける気がする。そう思う。試してみた。
(梅田カズヒコ)
グッバイ電気。
夜、寝る前にブレーカーを落とすことにした。これで僕の部屋からすべての電気が消える。さらば電気、君の活躍はすばらしかったけど、僕にはまぶしすぎたようだ。しばしのお別れを。
ひとつ分かったことがある。自分の部屋からいっさいの灯りが消えることは、予想以上にショックだということだ。例えそれが自分でわざとブレーカーを落としただけだとしても。
まだ何かに困ったわけではないが、すでにかなり不安だ。なんだ、この「あたり前のものを失われてしまった感」は!
暗闇に浮かぶパソコンのデスクトップ。
ブレーカーを落とした部屋はまるで時が止まったような状況だった。 そうか。現代において、時間の経過とは時計の針が示す数値とともに電力メーターの数値であるのかもしれない。電力メーターが止まれば、時の流れまで止まる、みたいな。 そんな真っ暗な部屋に唯一ぼんやりと浮かぶ青い画面があった。パソコンの画面だ。パソコンは停電時用のバッテリーが用意されているためブレーカーが落ちても動いている。
このあと、パソコンの主電源も落とし、電池で動くようなものの電池もすべて取り外した。さっきは心細いようなことを書いたけど、電池をはずしていく作業は楽しかった。普段必要としている電化製品を「えいやっ」とすべて止めていく作業はなんだか威勢が良い感じがする。
では、寝ます。おやすみなさい。 でも、モデムの電気が止まったため、ネットはできなくなった。
目覚める
モーター音的なものが一切なくなったおかげで部屋はすごく静かだった。隣部屋の人の寝息まで聞こえてきた。おかげでいつもよりぐっすり眠れた気がする。
注:今回の原稿の写真は部屋の照明がないため全体的に薄暗い雰囲気です。
寝ぼけ眼で目覚ましをとめようとするけど時計は動いていなかった。昨夜電池をはずしていたんだった。
今、何時ぐらいなんだろう? 時間が分からない。今日は平日、会社に行かなくちゃいけない。寝坊していなければいいが……。
とりあえず朝ご飯でも食べようか。