渋谷ハチ公前に裸眼で集合
集合場所まで裸眼で向かいたい。
裸眼会リーダーの林さんからそんな提案があった。飲み会の席でメガネをはずすのではなく、家を出る時から裸眼でいたいと言う。
大丈夫なのだろうか?
集合場所は渋谷のハチ公前、しかも約束時刻は夕方の18時だ。相当な混雑が予想される。そんな中、アンダー0.1のメンバーが裸眼で集まるには危険が過ぎる。
後見人の立場から、お店に移動してからメガネをはずす事を勧めるべきなのではないか?
だが、この「裸眼会」は裸眼の可能性に挑む会なのだ。メンバーの前向きな意見を尊重し、裸眼でハチ公前にやって来るのを待つ事にした。
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約束の時間から10分ほど過ぎた頃、ハチ公前に林さんがやって来た。僕の方を見ているが、僕には気付かない。
「林さん!」
手を挙げて声をかけた。僕の顔を覗き込む林さん。かなりの至近距離。
「ああ、住さん」
最初は冗談かと思ったが、林さんの目は笑っていない。本当に見えてなかったのだ。
そんなやりとりを近くで聞いていた臼井さんが、
「林さんと住さん?」
と、声をかけてきた。恐る恐る手探りで、という物腰であった。
「ええ、林です」
「ああ、よかった」
お互いを確認し終えた後、臼井さんから井上さんが紹介される。林さんと井上さんは初対面。お互い顔を近づけて表情を確認する。初対面とは思えないほど仲良しな2人に見える。
と、ようやく合流出来た安堵感も束の間、これから裸眼でお店を選ばないといけない。
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慎重な足取りでスクランブル交差点を渡る面々。人ごみをかき分け、居酒屋の客引きを引き払い、ようやく「つぼ八」の看板を見つける。
念のため看板に顔を近づけ、店名を確認する林さんと臼井さん。
「うん、間違いない。つぼ八だ」
裸眼会ご一行様、お店に入ります。 |