気を取り直して

次のお店に挑戦だ。
ちゃんと財布を持って来ておいて、本当に良かった。

看板が変なトリミングになっていて店名が分りづらいですが、ここで僕は600円のもやしラーメンを注文した。

ホールのおばさんは常連風なお客さんと親し気に話している。話題は主に病気についてで、「元気に働けるのが一番」という結論におさまっていた。

もやしラーメンを食べ終えた頃、常連さんが帰り僕だけが残った。
このチャンスを逃してはならない。いざ、おばさんに交渉してみる。

「えーと、ラーメン代の代わりにお皿を洗いたいのですが……」

おばさんは割とフレンドリーな方だったので笑って聞いてくれたのだが、厨房の奥から

「あっ？　何？」

という不機嫌な声が聞こえてきた。
話がこじれないうちにお金を払って店を出た。

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まずい。このままだと、ただ単にラーメンを食べ歩いてるだけだ。
既にお腹もいっぱいだし……、でも帰る訳にもいかず、お皿を洗わせてくれそうなお店を引き続き探すが、次からは先に交渉してオッケーだったらラーメンを出してもらう事にした。そうすれば無駄にラーメンを食べなくて済む。

2回断られて僕も少し学んだ。

学校を卒業して最初の就職先は編集プロダクションだった。勉強の為に書店営業をやってこいと言われ、本の見本を持って書店を巡った。少しでもいいのでこの本を買ってください、と頼むのだがこれがことこどく断られる。ひどい時は僕と目も合わせてくれない。

そんな10年以上も昔の出来事が鮮明によみがえってきた。
あの時と同じだ、この辛さ。

いや、同じじゃない。あの頃の僕がタイムマシーンに乗って来て、「お金がないからお皿を洗わせてくれ」と頼んでいる僕を見たとしたら……、しばらく立ち直れないと思う。

「三軒茶屋、ラーメン食いだおれ」
って企画に変更したら駄目だろうか？

駄目だろう。
もう少しがんばってみます。