コケ玉を作ってみたいと思っていました。
土を丸めて、草花を埋め込み、コケを貼り付け、雰囲気ある器に盛る。ミニ盆栽のように趣きがあり、また簡単にできるという。
でもどうせ作るなら、何か主題を持たせてもいい。
コケ玉自体、身近に緑を感じたいために自然を切り取って、お借りしてきているものだ。人工の中に自然を表現した、というか。なら、人工的な都会の街から自然を救い出してみるというのもいいのではないだろうか。
まあイデオロギーはそこまで。要は、都会の「チョロ毛」ならぬ「チョロ草」探しです。
(text by 乙幡 啓子)
覆われつくした街、新宿
コンクリートに覆われた都会といってすぐ思いついたのは新宿。これって古い頭ではないだろうか?ともかく、そんなところでけなげに生えている草を探しに出かける。
西新宿のビル街へ向かうが、その前にちょっと歌舞伎町をのぞいてみよう。歌舞伎町に自然に生えているのは、どんなやさぐれた草なんだろうか。
上のように、飲食店の店先などをコケがうっすら覆っていたりする。さぞいろいろな養分が与えられたことだろう。たこわさとかタン塩とか・・・。でも薄すぎて、採取できません。なおも下を向いて歩く。すると、看板にひとつもテナント名の入ってない、空虚な感じのビル入り口に、生えていた。
そして西新宿方面に足を向ける。地面から突き出ている建造物の根元にしか、もう目線が行かない。
そう、「継ぎ目」から生えてくるのだった。当たり前か。たまにアスファルトやコンクリートを突き破る、強い植物もいるが、ふつうはちょっとした隙間を「ここだ!わーい」とばかりに生えてくる。
このように地面をスキャンしていると、やはりこの下、固いものを剥がすとその下は土なんだなあと思える。お、そう言ってるうちにまた見つけましたよ。
採取!都会の雑草
眺めてばかりもいられません。採取せねば。だいぶこういうことには慣れているが、そとから見るとどうなんだろう。
「柱やポールの根元にうずくまり、デジカメで接写し、掘り起こす人」
うわあ、どうなんだろう。 胴乱買ってくればよかった!
家からジッパー袋と、コンビニでもらうスプーンを持ってきた。つまようじでもよかったかもしれない。ほじくって、根元からほじくって、生きたまま袋に収めてお持ち帰りするのだ。
なおもぐっとくる物件を見つけた。よくぞお前ここにいてくれたなあ!と肩をたたいてやりたくなる。
母のもとから離れ、自分の芽生えの時期を楽しみに暮らしていると、再開発とかなんとかで、天井を固いもので覆われてしまったら、あなたはどうしますか。こんなふうに外に出ていけますか。
運がよかったというのもあるだろう。たまたまちょっとした継ぎ目が斜め上方に見えるではないか。そこを目指して、地上に出るまでは死なんぞと根を深く張る。
ちょっと余談だが、別にコンクリートで覆わなくてもいいような場所ってあるだろう。下左写真とか。そこに、当然のようにもさもさ生えている集団がいたが、これは人が「植えた」んだろうか?
というのは、下右写真のように、生えてない一角があったのだ。人間の手で計画的に植えたのならこんなことはないのではないか。ということは、左の集団はただの「雑草」なのだ。すごいパワーだと思う。