「……これとか、どうすか?」 「キュンとしますねえ」 「……えええええええ!」
「これは、勝ち組の余裕の発言ですね。人間には勝ちと負けの2種類しかいない、っていう感じで」 「……いや、これが実際の勝ち組ではなく、『戦線離脱組』の発言ととると、せつないものがあります」 「あー、そういう見方もあるんですか」
「これ、男っぽい発言ですね」 「そうですか?」 「つきあってる男がこんなこと言ってたんでしょうか」 「いや、これは、ホスト遊びに愉しみを見出せる人の発言ですよ。私なんか、こんなこと、思いもつかないですもん。ホスト知らないから、ホストにハマる女性にもムカつかないし」 「はー」
「これ、女性の落書きなんでしょうか。男性?」 「いや、筆跡にしても名前にしても、女性ですよ」 「どちらにしても、学生って名前の前に必ずクラス名を反射的に書いてしまいますね」 「私、自分が何年何組だったかとか、一切覚えてないですよ」 「まー卒業しちゃうとねえ。 学生からメールをもらうことがあるんですが、名前の前にクラス名が入っていて『で、何?』と思います」 「それはあれですよ、林さんのメールに『コンテンツ部 林』って書いてあって、それ何? って思うようなもんですよ」 「………」
「……なんで高校生ってわかったんだろう?」 「だから、名乗ってるからですって。……あ、詐称もできますね」
「……これ、なんて書いてあるのか読めないのですが。『魔太郎が来る!』みたいな怖さがありますね。コノウラミ…、のような」 「……ええと、『ゴキブリ コロス イイホウホウ』……あとは読めません」 「え、ゴキブリ!?」 「トイレにいますしね、ゴキブリ。 こういうの字のコは、ゴシックロリータの人かもしれませんね」 「なんで?」 「んー、カタカナ文化ってあるんですよ。自分の名前を、カタカナで書いちゃうようなのって、サブカルの好きな人の感覚といいますか……」 「あ、あるかもしんないですね」
「『だからあなたも生き抜いて』みたいなことをトイレの壁で言われても、説得力ゼロですね」 「『女ののど自慢』で『すごい話やねえ〜』って泣いて、CMあけには内容忘れてるような感じ、じゃないですかね? これはこれでいいと思いますけど」 「放尿後には忘れてるワケですね」