温泉が、好きだから
「あのう、なんでまたハムの会社が温泉を作られたのでしょうか?」
単刀直入に切り出す。おそらく温泉が始まってから5万回は聞かれただろう質問だが、伊藤さんはニコニコ答えてくれた。
「もともと、今温泉のある場所は豚の牧場だったんです。ミートピアとして営業をするうちにお客様が増えて、ありがたいことですが、人の多い場所では養豚は難しいんですね。それで牧場を山梨に移すことになりまして。で、空いた土地で何かできないかということになって」
空いた牧場で何か出来ないか。それを考え始めたときに温泉はどうだろうと社長さんが提案されたのだそう。
なぜなら、温泉が好きだから。
好きだから?! 好きだから、温泉なの? 余りにも柔軟かつストレートな発想。
しかし、ただ好きだからという訳ではないらしい。将来的には食だけではなく生活文化全般のゆとりをフォローしたいという方針になっていたことから、温泉の提案は自然な流れでもあったそうだ。
それでも温泉っていくら社長さんの強い願いがあったとしても簡単に沸くものじゃないんじゃないか。
「専門家の方にも難しいとは言われてたんですよ。でも地質調査の結果、まさに牧場の真下に可能性があるということで。で、掘ったら本当に出たんです」
温泉が沸いた時は、社内中これは牧場にいた豚の置き土産だと大騒ぎだったそうだ。豚さんに感謝した碑も建っていた。
しかも沸いたお湯はハンパなく良質な温泉。その健康効果には早くも常連客が大勢いるという。
4歳未満入浴おことわり
お肉からスタートし、全ての食材に対して本物であることにこだわり抜く。その姿勢は温泉でも変わらない。そのこだわりある事情から、4歳未満の子供は入浴をお断りしているそうだ。
「浴室もこだわって天然石をたくさん配置してあるんです。それでお子さんが滑ると危ないですから」
天然石は全国の養豚場からサイボクハムに研修に来た方々が地元に帰った後、石好きの会長さんに宛てて送ってくれたものがほとんどだそう。つまり全国の自慢の天然石が一同に会しているわけだ。
石。もう、とにかく多方向へ本気である。 |