2軒目の保育園に電話をかけるにあたり、今度は普通の問合せを装ってみる事にした。騙している様になってしまい心が痛むが、後からキチンと説明すれば大丈夫だろう。

--お忙しい中すみません、ちょっとお伺いしたいのですが…
「ええ、どうぞ」
今度は若い女性のようだ。優しい口調で感じもいい。

--近所で保育園を探してまして、そちらは何才児から預かっていただけますか？（すみません、本当は探していません）
「0才児から大丈夫ですよ。お子さんは何才ですか？」
--に、に、2才6ヵ月です。（これは本当）
「男の子ですか？女の子ですか？」
--お、女の子で…（これも本当）

とても親切な対応をしてくれて、保育園のシステムや詳しい場所などを教えてもらった。資料を送ってくれる、とまで言ってくれて、それは丁重にお断りした。

結果的に、4分33秒ほど会話を交わす事が出来た。
電話を切る前に対応してくれた方のお名前を伺った。ここでは仮に「Kさん」としておく。

録音された会話を何度も聞き返しつつ、多田と感想をぶつけあう。
顔の形は？　髪型は？　ああでもない、こうでもない。女性雑誌を何冊かめくる。芸能人、モデルさん、一般の人たち、様々な女性を参考にイメージを固めていく。

そして最終的に僕たちの考えるKさんは、
・年は27、8才
・髪はミディアムショート、パーマはかかっていない
・やや丸顔で優しい印象
・どちらかといえば、垂れ目
・鼻はそれほど高くない
・メイクは仕事柄ナチュラルな感じで
・たぬき　＞　きつね
・犬　＜　猫
・色の落ちた細身のジーンズを履いている

となった。

このイメージをもとに、多田が似顔絵を描く。

試行錯誤の末、約30分ほどで下書きが出来上がった。
下書きを見ながら再びテープを聞いてみる。
うん、うん。かなりいい線だ。

ここで多田から提案が、
「女の子の視点でも描いた方がいいんじゃないでしょうか」
なるほど。
男2人で顔を作っていると、どうしても男目線に片寄りがちで、最終的に自分たちの理想像みたいになりかねない。
急きょ、女性スタッフの山崎にもテープを聞いてもらい、似顔絵をおこしてもらうことに。

「私の印象では、健康だけどなで肩。背はそんなに高くない。というところです」
あまり顔の印象を語っていないので心配ではあるが、とりあえず出来上がりを待つ。

電話を切ってから約1時間半。
ようやく2枚の似顔絵（想像）が出来上がった。