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特集


ちしきの金曜日
 
京都めぐり珍道中

「林さん、そんな遠くからで本ちゃんと写ってますか?」 「はいはい大丈夫ですよ」

●次は京都御所に!

京都タワーをほうほうの体で立ち去った我々。次に向かったのは京都御所である。

東京に遷都されるまで歴代の天皇が暮らしていたのが京都御所。現在は公園として開放されており、ぼくのような者でも自由に散策できる。

御所の魅力を余すところなくお伝えしたいと思います。

***

 

「 これが内御所と呼ばれる建物で…はうっ! もー、写真撮るときは言ってくださいよう」

一般に開放されているといっても、市民が入れるのは周辺エリアのみ。

たとえば内御所(左写真:今でも天皇家が別荘代わりに使っている)などは、当然ながら立ち入り禁止である。

…てなウンチクを喋っていたら突然、林さんが風景を撮りはじめた。はうっ!

とっさに本を構えてファインダーに入り込む。

林さん、本が写っていない写真を撮ろうとしている……。気を引き締めなければ。

***

 

「じゃあ今から飲みますねー。うおっつ!!」

水飲み場があったので喉をうるおすことに。

「ぼくが水飲みますから撮ってください」

エロ本のイメージショットみたいな感じで本を宣伝しようと思ったのだ。

…が、蛇口をひねったとたんエライ目に遭った。いきなり猛烈な勢いで噴き出してきたのだ。うおっつ!!

林さんはかたわらで笑い転げていた。畜生。

***

 

「これ飲むんですか!?」
「ええ、よろしくお願いします」

「いい写真が撮れましたよー」と妙に嬉しそうだった林さんの表情がくもりはじめた。

「あ、さっきの写真、逆光になっちゃってました。すみません」

まあいいや、掲載しなけりゃ済む話だし。…と軽く流そうとしたら、林さんはさらに続けた。

 林:「もう一度撮りなおしましょう」
 名倉:「えー、もういいですよー」
 林:「逆光で本が黒くつぶれてますよ」
 名倉:「じゃあ今度は水量に気をつけます」
 林:「さっきみたいにしてください」
 名倉:「いやですよー」
 林:「体張らないと本、売れませんよ」
 名倉:「…分かりました」


***

 

「本のため、本のため……」

当然のように蛇口を全開にする林さん。ものすごい勢いで水が噴き出し始める。

くー、これを飲むのか!?

…いや、本のためだ。本が売れるためにはがんばらないといけないんだ。

ようし、やるぞ!!

***

 

「うげっ!!」

思い切って噴水に顔を突っ込む。

うげっ!!

激しい水流が鼻腔に直撃、頭のてっぺんまで貫くような激痛に見舞われた。

ああつらい…。宣伝とはこんなにつらいものなのか。

「はーい、撮りましたからもういいですよ」と林さんが明るい声で。

***

 

京都にお越しの際はぜひ!
やっとの思いで普通に水を飲む。

ここでようやく気がついた。

「なにやってんだオレ!?」

噴水を鼻に入れたからって本が売れるのか? ひょっとしてただの阿呆ですかぼくは?

ええと、京都にお越しの際はぜひ、『一億人のプチ狂気』をお買い上げくださいませ。ゲホゲホ。

さ、早いとこ次に行きましょう!


 

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