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特集


はっけんの水曜日
 
四ツ葉のクローバーをさがして



10分経過。

「……え?」

私の指先に、四ツ葉のクローバーがあった。

信じられない。




「……あ、あった……です」
「え? ほんと!?」
「ほんとだー!」
「すごいすごい、あるじゃあん」
「やっぱ1人よりも、3人でさがせば、見つかるんですよ!」
「私も見つけたいー!」

四ツ葉を発見したカブの周辺を探すと、ざくざく、ざくざくと、他の四ツ葉が見つかりはじめた。

「あった!」
「ここにもあった!」
「これも、これも」
「なんだ、あるじゃない!」



四ツ葉はなぜか、みな、キズだらけで、虫食いのものが多かった。

「これ、アレですかね、しあわせはキズだらけで手に入れるもの、っちゅー意味ですかね……」
「さあ、ねえ」
「どうかなあ、フフフ」

四ツ葉探しに飽きたタカセさんが、花で冠を編んでくれた。

「うえ、そんなん編めるんですか! スゲー」
「いやね、今、思い出しながら、やってるんですけどね……何年ぶりだろう」
「私、幼稚園のとき、いじめられて友だちいなかったから、花の編み方も、リリアンも、チェーリングも、出来ないんですよねえ」

憧れの花冠。頭に乗っけてもらう。




初めてかぶった花冠は、少しひんやりしていた。

「そうだ、鼻笛吹いていいですか?」
「ハナブエ?」
「民族楽器かと思うんですけどね、私の持ってるやつはプラスチックの安いやつだけど……コレです」
「ほおー」
「自分のアパートじゃ大きい音が出せないから、ちゃんと吹いたことがないんだけど。吹いてみますね」




プアー、プアー、プアー、プアプアプアープアー。「ハトポッポ」を上手に吹くカキタさん。

「すごおい」
「やってみます?」

私は鼻から空気を出した。……鳴らなかった。

「うわ、これ難しいんだ」
「コツをつかめば吹けますよ。プアープアー。……楽しい! 嬉しい! こんな大きな音で吹いたことなかったから。公園で音出すのって、いいですね」

私達は寝っころがって、カキタさんの鼻笛を聴いていた。「ハトポッポ」の次は「キラキラ星」だ。きーらーきーらーひーかーる、おーそーらーのーほーしーよ。




けっきょく、四ツ葉は1ダースほど見つかった。

タイフードフェスに戻って、またビールを飲んだ。

「……で、幸せって何なんですかね?」
「四ツ葉って、本にはさんでおくと、いつかお金になる、っていう伝説がありますよ」
「やっぱお金か〜」
「そんな、しょうもない結論、言わないでくださいよ」
「……ハハ」
「ああ、ビールうまい。タイめし、うまい」
「今日みたいなの、結構しあわせですよ」
「そだね」

日が暮れるまでビールを飲んだ。
四ツ葉は……いま、本にはさんで押し花にしている。
いつか、みんなに、配りたいな、と思っている。



 

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