１時間くらい探して、ついに、桜色のちいさなカケラを見つけた。

そっと指でつまむ。
これがもう、ものっすごく薄っぺらい。人間の爪よりも薄っぺらい。
少しだけ力を入れたら、パリンと割れてしまいそうだ。ウエハース１枚分くらいの強度しかないように思えた。

大きさも、２センチくらいしかない。

よく考えたら、実物のサクラ貝を見るのは初めてだった。

大島弓子のマンガの、カップルのデートの回想シーンで、
「サクラ貝ひろったわ」「ああこの海ぜんぶ持って帰りたいわ」
なんてセリフがあったけれど、そのセリフを読んだときに想像した貝とは、ずいぶん違っていた。

ホタテみたいな形で、直径１センチくらいで、濃いピンク色、というのを勝手に想像していたのです。

ビニール袋を用意して持っていたのだけれど、これじゃあ持って帰るときに割れてしまうなあ……と思って、急きょ、飲み終わったプラスチックのコーヒー牛乳の入れ物に、ティッシュペーパーをひいて、貝を入れた。

海のそばにいると、時間はあっというまにたってしまう気がする。
２時間半ほど探して、サクラ貝を数枚手に入れた。
探すときは、海を右側にして歩いたほうが、自分の注意力は発揮されるな、と、どうでもいことを発見したりもした。