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特集


ひらめきの月曜日
 
証券取引所の手サインよ永遠に


いよいよ手サインに挑む

人づてに当時のことを知る方を探した結果、東京証券取引所の立会場で場立ちとして実際に手サインを送っていた経歴のある沼野さんにお話を聞くことができた!

沼野さん。現在も証券会社にお勤め。


--あのう…実は手サインを習得したいと思ってるんですが…。
「え?今はもう使われていないのに?」
--はい。ずっとやってみたいと思ってたんです。
「基本的に立会場での連絡のほとんどは手サインで送ることがでます。そんなに難しくはないと思いますが、実際現場で働いてその必要性が分からないと理解しにくいかもしれませんよ」

むむ。確かに話を聞くと、注文の連絡から市場の気配までいろんなことが手サインで連絡されていたらしく、素人が丸腰で挑めるような世界ではない雰囲気だ。

さわり、といった感じで「ある銘柄の注文の連絡を送る」サインを教えていただいた。

サインは、
 1,銘柄(会社の名前)
 2,その株の単価
 3,何株売るかもしくは、何株買うか
の3ステップで送られる。

 

(1)銘柄

一番最初に何の銘柄を扱うかのサインを送る。例えば、「東京電力」や「三越」などだ。

「取り扱い銘柄全てに固有のジェスチャーのようなサインがあります。例えば、東京電力はトウキョウの“ト”の字を空に書いてからおデコを触る。同じように関西電力は“カ”を書いてからおデコ」
--あ、“電力”の部分をおデコで表すんですね。
「そう。そうゆう音と物を結びつけたサインは多いですね。“商事”だったら障子を開ける仕草だったり。ストレートなジェスチャーもありますよ。“自動車”だったらハンドルを握る仕草とか」
--粋な遊び心みたいなものを感じますねえ。


三越
3を作って肩の後ろへ(越す)
アサヒビール
朝日が昇様子と飲む仕草

伊藤忠商事
投げキッス(チュー)


--真剣な取引の最中に投げキッスってのもまた唐突な。
「ミシンのブラザー社のジェスチャーには胸の前に手でブラジャーの形つくる仕草が入ってましたよ」
--ブラジャーっすか…。
「いや、もう大まじめなんですけどね」

 

(2)単価

続いて、その銘柄をいくらで買うかを伝える。
1〜9までを片手で表す数字は、東京の取引所と大阪の取引所では微妙に違うそう。今回は東京の表し方を教わった。以下が順番に1〜9までのサイン。



--9が難しいですね。
「私は8が苦手でしたねえ。小指と薬指曲げるのが大変で。最初の頃は吊るんじゃないかと思いましたよ」
--ギターのコードのFみたいなもんですね。
「単価は大台ははしょって、下桁を伝えます。50円だったら左手でパー、右手でゼロを作ってもいいし、パーを振るのでもOK」

 

(3) 株数と、それを売るか買うか

最後に何株をどれだけ買うか、もしくは売るかを表す。

「株数と売り買いの別は同時に表します。例えば100株売りだったら、手で作った“1”を押し出します。買いは自分に向けて引く」
--ニュアンス伝わりますね。売っぱらうぞ! 買うぞ! って雰囲気。
「でしょう。基本的に買いは手のひらを自分に向けて、売りは手のひらを相手に向ける。で、千単位は手を横へ、万単位は数字の手を握って表すんです」
--例えば同じ「5」を作った手も、振り方を変えると単位と売り買いの別が変わるってことですね。これは間違えそうですね…。
「手サインは間違えると大変なことになりますからね。私も最初の頃は心労で痩せました」


500株買い
パーを手前へ引く
5,000株買い
パーを横から引く

50,000株買い
パーを顔に向けて握る


500株売り
パーを正面に出す
5,000株売り
パーを横へ出す

50,000株売り
パーを向こうへ向けて握る


さすがに難しいものの憧れの手サインの形がおぼろげに浮き上がってきた。片手だけで9まで数字を表したり、振ったり、引いたり、押したり、出したり、手のひらをあっちに向けたりこっちに向けたり、何となく見覚えのある動き。これがあの手サインなのか!

早速、デタラメに考えたサインで練習してみた。大好きなアサヒビールの株を5千株ほど買い注文してみよう。


アサヒビール133円で4千株買い

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ニュースの株価情報の背景に見たあの手サインの雰囲気を出すにはまだまだ修行が足りないようだが、一歩近づけた喜びは大きい。

プロの場立ちさんたちはどんな練習をしていたんだろう。引き続き沼野さんに当時のお話を聞いてみました。


 

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