目的を見失う
「……ちょっと歩くけど、祖師谷大蔵のほうにある直売所も行ってみましょう」
「そうですね……」
また歩く。
がっくり来たけど天気はいいし、そんなに腹は立たなかった。
「ああ、いきなり失敗しましたねえ」
「ねえ……」
「……」
「……」
「……春ですねえ」
「春ですねえ」
「あ、川岸に、菜の花が満開ですよ」
「キレイですねえ」
「水の中、コイも泳いでますよ」
「……あ、ほんとだ。カモもいますねえ」
「カモってアサリに柄が似てますよねえ」
「似てますよねえ」
「おっサギもいますよ」
「シラサギですね」
「シラサギ、エサって何食ってるんでしょうね」
「……コイ?」
「あんな細い鳥が、あんなデカいコイは食えないですよねえ」
「……」
「……セブンティーンアイスの自販機だ。食べていいですかね?」
「どうぞどうぞ」
「……何買うんです?」
「クリームソーダ味」
どうでもいいことを話しながら、ひたすら歩く。
今度こそ迷わないように、分かりやすいけど遠回りなルートをすすんだ。
世田谷は広い。
……商店街もなにも無いところに唐突に、おいしそうなハム&ソーセージの店(スモークハウスTERAという店だった)があった。
「うわ、おいしそう」
「いいですね」
「……私、レバーソーセージ買います」
「私も何か買お!」
温存された買い物欲が、爆発してしまった。私達は、つい高級なソーセージを買ってしまった。
えへへ。ソーセージ、ソーセージ……。
アレ? 今日って何しに来たんだっけ?
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