下神明は小さな駅だった。
ホームも狭く、登り、下りともトイレは見当たらない。
改札口も1箇所だけで、そこに向かうまでの間、やはりトイレはなかった。
トレイを探すには改札を出ないといけない。
僕の仮説が真実に近づいていく。
改札を出ると、喫茶店と寝具屋と中華料理屋があった。
この中でトイレを借りる事が出来るお店は中華屋か喫茶店だが、祭日の午前中から営業しているとは考えづらい。
被疑者は失意の中、トイレを求め線路沿いに大井町方面に向かったはずだ。
トイレを求めて大井町へ
道は駅前から高架沿いに大井町に続いているが、駅から1分程で薄暗い路地にぶち当った。
「ビデオ」というネオンが光っている。
何だここは?
「ビデオ」のネオンに吸い込まれる様にして路地の中に入っていくと、DVD、ビデオ、本、アダルトグッズ、という4種類のエロ販売機で4面を囲われた袋小路の様な場所に行き着いた。
両手を広げる事も出来ないくらい狭い、エロの四面楚歌状態。
自動販売機には4台とも大きな鏡が埋め込まれていて、色々な角度の僕が写っている。
自分を見つめ直せ!
エロが僕にそう言っている。
そして、新たな仮説が浮かび上がった。
仮説2:新たな通勤ルートの開拓
被疑者の勤め先は大井町と下神明の中間くらいにある。
普段は大井町駅から歩いているが、実は下神明駅から歩いた方が近いんじゃないか?と思い付く。
今日(1月12日)は休日出勤でうるさい上司もいないし、少しくらい遅れても大丈夫。ちょっと試してみるか。
と、下神明駅で途中下車。初めての道だが、とにかく高架沿いに勤め先まで歩いてみた。
かかった時間を見てみると、なんだ、やっぱり大井町からの方が近いじゃん。という結論に至り、翌日からは今まで通り大井町で下車する日々に。
この仮説が正しければ、下神明と大井町の間、少し大井町よりに被疑者の勤め先があるはずだ。
被疑者の勤め先を突き詰める為、再び大井町方面に歩き始めた。
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