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特集


ロマンの木曜日
穴を掘る

何かを掘り起こす訳ではなく、何かを埋める為でもない。何の目的もない穴掘り作業にただ没頭してみたい。説明し難い衝動にかられて穴を掘る。「もうこれ以上は掘れない」「いや、まだいけるはずだ!」。数時間に渡る穴との格闘、地への冒険。男たちの熱いドラマが今始まる。

※ナローバンド対応コンテンツ

(text by 住正徳


荒川の河川敷

ローラーブレードで疾走する若者

このシャベルで掘る

荒川河川敷にて

江戸川区は荒川の河川敷に穴を堀りにやって来た。
天気予報では曇りのち雨と言っていたが、照りつける日差しがジリジリと肌を焼きつけ、じっとしているだけでも汗がにじんでくる。

住「厳しい1日になりそうですね」
林「まめに休憩をはさみながら掘っていきましょう」

僕たちは額から流れ落ちる汗を拭い、穴掘りのポイントを探しながら土手沿いを歩く。
犬を散歩させているオバサン、上半身裸で走る若者、空缶の山をリヤカーに積んでゆっくりとひいている老人……。

住「結構、いますね、人」
林「平日の午前中なのに……」

なるべく人知れず穴を掘りたい。
そう思っていた僕たちは、土手に集まる人々の姿を見て少し気後れする。

 

しばらく呆然と立ちつくしていると、前からローラーブレードを履いた若者が全力疾走で向かって来た。フワーッと生温い風を残し、僕たちの横を抜ける。

2人「……」

住「まあ、悪いことする訳じゃないし……」
林「そうですね、ただ穴を掘るだけですから」

 

土手沿いを更にズンズン進む。
適当な場所を見つくろい、荷物を降ろしレジャーシートを敷いた。

平井大橋に程近いこの場所で、これから穴を掘る。



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