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特集


はっけんの水曜日
農水省の食堂で自給率を考える


ついにスッポン

銀座、某所。
私たちは、気軽には入りにくい、小さな小料理屋風の店の前に立っていた。
スッポン料理を食べに来たのだ。もちろん予約は入れてある。
予算はなんと、ひとり1万円。(注:当連載は取材経費が出ないので、いつも自腹です)

本当なら、お金のある、年上の人に連れてきてもらったりするのだろうが、そんな機会は今まで一度もなかったし、今後もなさそうだ。
「人生でいちどくらい、スッポン食べたいよね」「そうだよねえ」「いっちゃうか」「いきますか!」
というわけで、思いきって来てしまったのだ。
世の中の何パーセントの人が、スッポンを食べたことがあるんだろう? そのうち何%が自腹だろう? とか考えながら、店に入る。

「うちには何を見ていらっしゃったんですかー? インターネット?」
着物を着た店員さんが、にこやかに対応してくれた。
「すっぽん初めて? ほほほほほ」
彼女は運んでくる料理すべてを、丁寧に説明してくれた。


スッポンの卵&生き血

スッポン刺身。

スッポンカラアゲ。
ぞうすい。

スッポンの卵
「体内から取り出した、イクラみたいなものなんですよ。生んだ卵を割ったわけじゃないんです。ほほほほ」
>>味は卵ボーロに似ていた。粉っぽくて甘い。

スッポン生き血
「りんごジュースで割ってあるので、生臭くないですよ。ほほほほ」
>>味は……りんごジュースの味。

スッポン刺身
「赤身と油身です。赤身はしょうゆで、油身はぽん酢で食べてください。ほほほほ」
>>鶏わさと牛タタキとアジのタタキの間くらいの味がしたのは気のせいか。

スッポンカラアゲ
「首のところの肉ですのよ。ほほほほ」
>>鶏のカラアゲとマグロのカラアゲの間の味がしたのは私だけか(R子は「かえるの味」と言った)

スッポンなべ
「透き通ってますでしょ、コラーゲンたっぷりですよ。翌日は化粧のノリが違いますわよ。ほほほほ」
>>スッポンから出た濃厚なダシのクドさに負けそうになった。

スッポン雑炊
「美味しいですわよ、どんどん食べて。ほほほほ」
>>ダシは美味しいけど、卵を入れてしまうとただの卵雑炊と変わらない気がしたのは私だけか。量が多く、店員さんが、無理矢理お茶わんによそってしまうので辛かった。ワンコすっぽん雑炊状態。

彼女は、料理を運んでくるたびに
「おいしいでしょ? おいしいでしょ?」
と言った。
悪意は無かったのかもしれないが、かなり苦痛であった。
店を出たあと、

「そんな、びっくりするほど美味しかねえよーーーーー!」

とR子が叫んだ。確かにまあ、そうかもしれない。っていうか、よくわからない。

もし、スッポンが高級料理ではなく、鶏肉よりも安かったら、こんなに有り難がられるんだろうか……。



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