●小道具作戦
「学帽とか被ってみましょうよ」 10年のギャップを中々埋められない僕たちは小道具で何とか誤魔化す方向に作戦を変更。 「じゃあ、まずは僕が」 帽子を被ってまずは1枚。
「凄く似合ってますけど…」 林さんの語尾が濁ったので嫌な予感を感じつつプレビューをのぞく。
時代が変わってしまっている。 僕が喫茶店とかでバイトしていたとして、こういう人がやって来たら「面倒臭そうな客が来たな」って思うし、なるべく近寄らない様にすると思う。
「じゃあ、次は僕が」 林さんが学帽を手に取る。
3月3日のレポート「大きな帽子を探して」続編のようになっている。
「あっ、でも学帽は上にチョコンと乗せる感じで大丈夫ですので」 売店のお兄さんがフォローを入れるが林さんの心の扉は閉じかけている。
●希望の光りが差し込む
「学帽はやっぱりやめましょう」
学帽の売店を後にし、もっと卒業生で賑わう場所を目指す。人が多ければ馴染めるんじゃないか? どんどん弱気になっていく2人。
と、その時、林さんが卒業生から声をかけられている。 「写真撮ってもらっていいですか?」
写真撮影を頼んで来た学生は僕たちを卒業生だと思ってくれている。 駄目だ駄目だと思っていたけど、実は馴染み始めているんじゃないか? かすかに差し込む光明をたよりに、更に人ごみに向かっていく。