水晶山への道

水晶山のある現地に到着。
右も左も、ぶどう畑だらけだ。小川の流れる音と、たい肥のにおいがした。遠くには山がみえる。

ぶどう畑の中、農道をひたすら歩く。だんだん道の勾配がきつくなっていって、あっというまに息があがった。平地なら結構歩けるのだけれど、傾斜がちょっとでもあると、からきしダメなのです。
「まだ山の入り口でもないですよ」Ｈさんはウズラの卵の入ったスーパーの袋を持って、スタスタ歩いていく。
くそう、と思ってふと見ると、ぶどう畑に吊るしてある鳥よけCDが、なぜか全部「OCN」のCDロムだった。
「これ、農業を営む人に、ニフティからCDロムをプレゼントして、全部ニフティのに変えちゃうっていうキャンペーンやったらどうですか？」
「あははは。くだらないこと言ってないで、ちゃっちゃと歩いてください」
いいアイデアだと思うけどなあ、と思いながらゼイゼイ歩き続ける。そしてやっと山の入り口までたどりついた。

クリスタル発見？

山の入り口は鉄柵でできていた。「有害獣対策用」と書いてある。イノシシよけだろうか。まさかクマじゃないよな、と思いながら、あけて入る。
「イノシシって、突進してきたら、どうしたらいいんでしょう？」
「よければいいんじゃないですか？」
不安だ。
勾配はさらにキツくなり、本格的な山道になった。山登りが趣味の方だったら、「そんなの軽〜いハイキングじゃないですか」と言うのかもしれないが、ふだんパソコンに向かって、ウドンなんか食べて地味に暮らしてる私としては、ものすごくキツい。
ゼイゼイ。「だいじょうぶですかあ」というＨさんの声に、返事も出来ずに山を登る。

……お？

足元に、透明の石が、パラパラと落ちていた。これ？　これが水晶なの？

がぜん元気が出る。うおおおおお、と気合い入れて登る。途中、山中にあった神社のほこらを通りすぎると、上のほうに石だらけのポイントがみえてきた。

採取開始！

「ズリ」（鉱山が操業していたとき、不要な石が捨てられた場所で、鉱物が採集できるところ）に着いた。あたり前だが、石だらけだ。足場は最悪にわるい。ずるずるとすべる。コケたら死ぬなあ、とぼんやり思いながら、足元を見る。

ああ、確かに透明の、それらしき石が落ちている。結晶がついた石が、キラキラ、木漏れ日に反射してひかっている。

軍手をはめて、石をひとつひとつ見る。
シロウトなので、どんな石がいいのか分からない。とりあえず「きれいだと思ったやつ」をひろうことにする。
うわあ、ここにも、ここにも。これもきれいだ。この石には、小さな結晶が、びっしり付いている……うわあ、うわあ。
夢中でひろっていたら、「ほんとにあるんですねえ、すごいやー」と言いながら、Ｈさんはウズラの串揚げを食べていた。

集めていたら、ものすごい量になってしまったので、厳選して、持てる量をスーパーのビニール袋に入れて、山を降りた。