まったくこなくなった
神保町のハトはかしこいのか、いちど脅かしたらまったくこなくなってしまった。ハト界にタクシー無線みたいなものでもあるのだろうか。
「神保町の公園のニットキャップの男からエサもらわないようにー」
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公園で待つこと1時間。空をハトが横切るが、決して公園におりてくることはなかった。かわりに公園にいた猫を捕まえようとしたが逃げてしまった。すべてに嫌われ
負け負け気分。
ハトをつかまえたいという気持ち、逃げられた悔しさ、見知らぬ人との交流。ハトはつかまえることはできなかったが、それ以上に得るものが多い体験だった。
ハトよ、ありがとう。いつかつかまえてやる。全力で立ち向かう、それがハトに対する礼儀だと思う。
気分は伝説の熊を狙うマタギである。まあ、相手はハトなんですけどね。
おしまい
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