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コネタ


コネタ1037
 
「おかえりなさいませ、お嬢様」メイド喫茶は夢のくに
アキバのホコ天は本当に天国だ

給仕服のコスチュームに身を包んだ"メイドさん"。
今や、居酒屋・マッサージ・ゲームセンター・焼肉店、そして床屋さんなどで大活躍しています。

なかでも「メイドカフェ(一般名称メイド喫茶)」は流行語大賞にもノミネートされ、認知度は高くなってきていますが、そのご奉仕空間へ足を踏みいれたことのある方はそれほど多くはないような気がします。
ましてや中年女など……というわけで、ひがんでばかりもいられません、ただの好奇心のみ、ただそれのみで「メイド喫茶」に行ってきました。
「萌えと奉仕の国」だと思っていたその未知なる空間は、「夢と魔法の国」でした。

「ミイラ取りがミイラになった」そんな、心境です。

(text by 土屋 遊

観光地にふさわしい街、秋葉原

私たちが向かったのは、ごぞんじ秋葉原。

電気マニアの親戚が上京したさいに、電気街に同行したとき以来です。
「萌え」も「オタク」も表面化していなかった時代でした。
あれから十数年、今や初心者用体験ツアーもあります。

『秋葉原』の駅名看板を激写する若者がチラホラ、駅に降りた瞬間からアキバが聖地と言われる証拠をまざまざと見せつけられました。

到着は午前10時半。
開店まで一時間あるので、アキバ名物「おでん缶」の自動販売機を探してみることにしましょう。

 

家族連れが残念そうでした
おしらせ・おでん缶入荷予定日
ドジッコキャラのおてんちゃん

日本一有名な自販機「おでん缶」

私たちは完全ビギナーですので地図を小脇に抱えていましたが、さすがに自動販売機が掲載されている地図ではありません。
それでも、大手電化ショップの店頭で、ハッピを着たお兄さんが

「『おでん缶』自販機は左に行って二本目のカドでーす!」

とスピーカーで怒鳴っていらしたのでとても助かりました。
店頭に積みあげられた「おでん缶」を売っているお兄さんが、なぜ他社自販機のありかを教えているのか、そのカラクリを推測しますと、あつかましいアキバビギナーズが次々に「おでん缶の自販機はどこですかー?」と訊いてくるから。だと思います。
つまり、お兄さんはいちいち教えるのに疲れはて、スピーカーで自販機のありかを叫んでいらっしゃるのでした。ヤケクソです。上司に見つかってクビになったらかわいそう……と同情しました。

自販機のおでん缶はものの見事にすべて売り切れで、深夜のタバコ自販機の形相です。
電化ショップのお兄さんの親切に心を打たれた私たちですので、いまだ叫び続ける彼のもとに戻って「缶のおでん屋 おてんちゃん」を購入しました。おでんを運んでいる最中にすってんころりんのドジッコキャラのおてんちゃんが描かれています。土産に持ちかえると、我が息子と弟で取り合いをしていました。

おでん缶に振りまわされている間に「メイド喫茶」の開店時間が近づいてきたようです。

 

 

退屈しないメイド喫茶の待ち時間

オープンまで30分弱。
店の入り口から、階段づたいに20人以上の人が待っていました。私たちのあとにも次々と萌え待機の群れが押し寄せています。あと10分遅かったら……と思うと恐ろしくなりました。
ソロ男子はもちろん、着ぐるみのようないでたちの女の子や、グループやカップルも多かったのが意外な感じがしましたが、おそらく女最年長者は私だと思います。揺るぎない自信に満ちあふれました。

手前にいた少年4人組は、よくわからないアイドルのスチール写真を次から次へとカバンから取り出してくるので 手品かと思いました。近くにいたカップルの女子はメイドたちへの挑戦状でしょうか、マイクロミニスカートをはいていて、私はそれが気になって気になってしかたなかったのですが、少年たちはてんで興味がないご様子で、開店の瞬間まで手品をくりひろげてくれました。退屈しなくてまったくよかったです。


「おかえりなさいませ、お嬢様」

いよいよ開店の時間がやってきました。さいわい第一陣でピンクの空間に入店することができました。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

なんと、この年でお嬢様と呼ばれる日がこようとは……。よく考えたらじっさいのお嬢様年齢でも呼ばれたことはありません。

最初にメイドさんから、料金システムの説明を受けました。
メイドとゲームが楽しめるゲーム席と、喫煙席ではチャージ料金が異なります。どちらも500円以下でした。時間制限はないものの、1時間以上経過でオーダーはできなくなるとのことです。それでも、ごゆっくりおくつろぎくださいましてよいそうです。なんだか日本語が不自由になってきました。

訪問したメイド喫茶には、オリジナルメニューが豊富にありました。
お気に入りのメイドさんのプリン
メイドが今朝焼いたマドレーヌ
メイドの手作り萌え弁当……
どれもこれも先着○名さままで。競争心が高まります。なかでも「お気に入りのメイドさんが焼いた玉子焼き」には心ときめきました。上手く焼けていても感激ですし、焦げてしまってもこれまたけなげさに感動します。ようするになにをやっても「萌え」なわけです。でも私はオムライスとカフェオレを注文しました。値段は一般の喫茶店と大差なかったです。

 


萌え文字を崩すのに勇気が必要です

 

秘伝!メイド喫茶を5倍たのしめる方法

カフェオレが運ばれてきました。一見ふつうのカフェオレですが、ものすごくスペシャルでした。そのスペシャル度は想像を超えていたと同時に、メイド喫茶訪問を計画中の方には5倍楽しめるウラ技を伝授いたしますので見逃さないで下さい。

真横でひざまずき、笑顔のメイドさんは砂糖とその量を訊ねてきました。
5杯で、とかえすと、シュガーポットのフタをあけながら
「まあ、甘いものがお好きなんですね?かわいいですね(ハート)」
と言ってくれました。
かわいいですね……
かわいいですね……
今言った、たしかに言った、ふてぶてしさにかけては右に出るものはいないことで有名なこの私をつかまえて「かわいいですね」とこの耳で聞いた。

かわいいですね……。
私は心の中で何度も復唱し、なんだか自分が本当にかわいくなったような錯覚におちいりました。
「1杯……2杯……3ばーい」
と、ゆっくりとティースプーンをカフェオレに入れてくれます。そしてグルグルとかき混ぜてから目の前に差しだしてくれました。
「ごゆっくりお飲みくださいませ」
このカフェオレがスペシャルでなくてなんというのでしょうか。今この瞬間がマンガであったなら、完全に目がハートになっていたところでした。マンガでなくて本当によかったです。
現在私は糖分を控える生活をしていますが、次回訪れるさいには「砂糖、10杯でおねがいします」と言おうと固く誓いました。20杯でもいいです。


ぐるぐるミラクル

 

萌えポーズをなんなくクリアする

お察しのことと思いますが、こちらのメイド喫茶は店内も外からの撮影も許可されていませんでした。たしかにこの状態で撮影可能ならばカメラパニックで負傷者続出する気がします。そのかわり、オプションポラ撮影でメイドさんとツーショットorスリーショットをオーダすることができます。
メイドさんたちに乗せられて、たくさんの人が"萌えポーズ"でキメていました。
取材のつもりではありませんでしたが、数日たっても興奮がさめないので、同行していたデザイナーのツマさんにイラストを依頼しました。そして無事にコネタ発表、みなさまにも夢のお裾分けが可能になったしだいです。

メイド弁をマスターしよう

ポラ撮影時に耳にしたのですが、メイドさんたちの日常会話は語尾に「〜ぴょん」と付くことが判明しました。
参考例:「ちょっとカメラ持っててぴょん」「いいよぴょん」
また、時間差で出勤してきたメイドさんの挨拶は、
「おはよんよん」
です。
「よんよん」の際には、かるく二度ほど両足で跳ねることが、数人の証言によって明らかになりました。あれからというもの、朝のあいさつは「おはよんよん」に相場が決まりました。メイド弁です。


 

なんの前触れもなく「おたのしみ会」

じっくりと萌えオムライスを味わっていた矢先、とつぜん店内の照明が落とされました。
「おたのしみ会をはじめま〜す」
一部の有志にタンバリンやカスタネットが配布され、じゃんけんゲームがはじめられるとのこと。まず舞台上のメイドさんから、『じゃんけんポーズ』のレクチャーを二回ほど受けたあと、全員参加で『萌え萌えじゃんけん』のスタートです。

メイド喫茶(店名)で
(左手に右手をのせてゆっくり大きく左右にふる)

萌え萌え
(両手にコブシを握り、顔の両側で上下にふる)

じゃんけん
(両手はチョキのカタチで、顔の両側で二本の指を上下に動かす)

じゃんけん
(頭の上でウサギちゃんの耳を作って両手を上下に動かす)

ポン!
(片腕を突き上げてジャンケン)


全員クラスメートの形相

 

メイドミラクル現象

かっこつけて参加しないご主人様やお嬢様など、ここにはひとっこひとりいません。無名アイドルマニアの少年マジシャンも、ミニスカカップルも、萌えジャージを着こんだ常連ソロ男子も、みな一丸となって楽しんでいました。
短時間でこれほど多くの他人と心をひとつにしたのは、特急列車に閉じ込められて6時間立ち往生したとき以来です。
そして勝ち抜いた3人の中に、我が同行者Sさんがいました。舞台に上がって意気ごみを求められ、マイクを突きつけられています。
「ガンバリマスッ!」
声色に耳を疑いました……メイドさんに負けないほどかわいいソプラノヴォイス、どうしたことか首もコクンっと右にたおしています。変声機でも仕込まれているのかと猜疑心がわいてでるのもとうぜんでしょう。
Sさんの次にマイクを向けられた女子も、ラストのオッサンも、パーフェクトなまでに「萌え」をきわめていました。我々はこれをメイドミラクル現象、あるいはメイドウイルスと呼ぶことに……。
同行者Sさんは舞台上で一人勝ちをして、まんまと萌えじゃんチャンプの称号を得ました。
「おめでとうございマス、お嬢サマッ!」
気付けば耳鼻咽喉科の医師をも唸らせたハスキーヴォイスの私も、苦しそうにうわずりながら歓喜の声をあげていました。おそるべし、メイドミラクル。
まさかこの年で「おたのしみ会」に参加できるなんて……高熱にやられてハイになっている、そんな状態にたいへんよく似ています。『夢かうつつか』とはまさにこのことだと思いました。

一日中お嬢様でいたい、むしろできれば死ぬまでお嬢様でいたいものですが、外はすでに100名以上の人がお待ちかねでした。図太い中年女もウイルスに冒されてどこか平常心を失っていたのでしょう、「待っている人にわるいから」と店をあとにしました。

「いってらっしゃいませー、お嬢様」

 

今でもたまに「あれは夢だったんじゃないか」と思うことがあります。

アキバのホコ天にも夢をみた

アキバの歩行者天国で天使のようなかわいい女の子に遭遇しました。
たった一人でピョンピョンと飛びはねながらご自分の宣伝をしていました。
夢の続きをみているかのようです。
ツーショットを願いでましたら「いいよん」とお返事が……。

パソコンに取り込んだ写真を見た瞬間、一気に夢から覚めました。


どうみつくろっても親子です

彼女の名前は吉野みはるちゃん。
近いうちに密着取材をさせていただきたいです。


こんなに自分が必死に撮影しているとは……

 

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