「また貼られている…」
「確かに俺たちって貼られがちだよな」
「うん
気づくと貼られてる」
「うっすら接着料がついてるから
つい貼られてしまうんだろうな」
「あぁあれ
かなりうっすらだよな」
「しかも俺たちって、
貼られるだけじゃなく
よくメモも書かれないか」
「そうそう
で、そのメモの字が
すごく雑だよな」
「あぁ 雑 雑」
「かなりみんな書きなぐるよな」
「ってことは
もしかして俺たちって、
人間たちに
消費されてるんじゃねぇのか」
「確かに扱いがゾンザイだよな」
「おいおい
そんなこと言うなよ!
自虐的になるなよ!」
「しょうがねぇよ
このマテリアルワールドじゃ、
俺たちなんて
消費されるために
生まれてきてるようなもんだよ」
「よせよ!
自分を卑下するなよ!」
「そうだおまえら
仲たがいはよせよ!
まずは冷静になって
俺たちが存在を軽視される
その原因を考えてみようぜ」
「うん
やっぱ俺たちの
『ふせん』っていう名前が
ついなめられる理由なんじゃないのか…」
「『ふせん』…
たしかにこの言葉の響き
へぼいよな」
「でもなんか
朝ドラのタイトルとかにありそうじゃない?
『おしん』とかみたく『ふせん』とかさ」
「ないよ」
「でもごくたまに
カッコよく
ポストイットって呼ばれることもあるぜ」
「あぁでも
あれはあれで
ちょっと言いすぎ。ハイカラすぎ」
「そうそう。逆に照れる」
「逆にね」
「じゃぁ結局おれたちは
どうしたら今の地位を改善できるんだい?」
「うかつに貼られたりしないよう
そして
うかつにメモを書かれたりしないような
存在になればいいんじゃないのか」
「そうだな
たとえばこんなふうな…」
「…なんだよこれ」
「もはやなにかもわかんねぇよ
こんなんなら
今のままでいいよ」
「そうだな
じゃぁ今のままでいいか」
「じゃぁこれからも
現状維持で
よろしくね」
「よろしく」