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コネタ


コネタ926
 
ネジを食べる

今日は、ねじを食べてみようと思う。
(text by 古賀及子

ねじ。


いただきます。

かたい。

ちがうちがう

そうじゃ、そうじゃない。

今日私が食べてみようというのは、ねじはねじでも工具のねじではない。埼玉県秩父地方の郷土料理にそういうのがあるのだ。

全国的に見て郷土料理には、どうしちゃったんだろうと思う名前の料理が多い。青森の「じゃっぱ汁」、岩手の「ばっと」、秋田の「なんばこ」、山形の「だし」、富山の「やちゃら」、愛媛の「ふくめん」、大分の「やせうま」……楽しすぎてきりがない。

秩父地方の郷土料理も例にもれず「つみっこ」、「おっきりこみ」、「つとっこ」など奔放な名前の料理のかずかずが伝えられている。そして「ねじ」である(検索「ねじ 秩父 郷土料理」)。

材料は、こんなかんじ

簡単にいうと、煮小豆に短くカットしたうどん絡めたもののようだ。

作ってみました

ぶちゃけ、ゆであずきの缶詰に生うどんを合えればそれでできてしまうように思える。が、レシピを詳しく調べてみると、小豆はお菓子に使うあんこよりもグッと砂糖が控えめだ。うどんも、厚さ3mm、幅1cm、長さ8cmほどと明確なサイズが出ており、市販品ではまかなえそうにない。

郷土料理のことだ、きっと地元では各家々で伝統の作り方があって、正しいレシピというのはないのかもしれないが、伝統を受け継ぐ私としては市販品でお茶をにごさず先人が残したレシピに忠実に従って作っていこうと思う。

頼まれてもいないのに受け継ぐ気まんまんです。


小豆をよくあらって 一度ふきこぼしたら ことこと柔らかくなるまで煮る

砂糖を加えて さらに煮て おお、あんこだー!

期せずして郷土料理気分満喫

恥ずかしながら、私は普段あまり料理をしない。あんこを炊くのも初めてだ。同居の祖母に聞いたり、母に電話したりしてよろよろ作業した。

小豆は一晩水につけなければいけないイメージだったが、いきなり煮てもOKだということ、小豆はよく煮てから砂糖を加えないと砂糖を加えた後はあまり柔らかくならないこと、最後は水分多めに仕上げないと後で水分が蒸発してパサパサになってしまうことなど、学びまくりである。

本当に母の味を受け継ぐような、郷土料理気分が俄然盛り上がった。

小豆を煮ているあいだ、平行して小麦粉をこねる作業もやっていく。


粉に塩をまぜて 少しずつ水を加えつつこねる 麺棒で薄くのばして

サイズに忠実にカット 結局相当適当なサイズに 茹でたら締めずに釜揚げに

ねじ、完成です

ゆでたての麺(?)があついうちに、こちらも煮上がったばかりのあんをあえる。

この料理が「ねじ」と呼ばれるのは、あずきであえたときにうどんがねじのようにねじれるからではないか、という説があるらしいが、どんなもんでしょうか。


ねじ、です


おや?

麺、ねじれない。麺を切ったときに幅1cmよりやや太くなてしまったのがいけなかったのだろうか。ゆであがった麺はずいぶん太かった。うーむ。

でも、私のことだ、もし母から正確なねじの作り方を伝承していたとしても、作るたびに麺の太さは太くなってしまうんだろう。とすると、これが私にとってのねじなのだ。

もごもご言い訳をしつつ、早速、食べてみた。

いただきます。

……柔らかい。


おいしいですよ!

甘さをおさえたあんこに、うどんを絡ませる。考えてみればこれが美味しくないはずがない。いってみればうどん版おはぎだ。餅入りのお汁粉にも似てる。

水で締めずに釜揚げあつあつの麺とさらに熱いあんこ。おいしい。

決めた! この料理は、我が家でも子孫に伝えよう。何百年か後、東京の私んちの近辺に「ねじ」という郷土料理が伝わっていたら、それを秩父から持ってきたのは私です。


調べてみたら「うどん×あんこ」という郷土料理は秩父だけではなく全国の各所にあるようだ。

愛知に伝わるその名も「じょじょ切り」はお汁粉にうどんを入れたもの。変な名前というところも合わせてねじに似ている。

おもしろい名前オンパレードの郷土料理、これからもぼちぼち作ってどんどん勝手に伝承していきたいと思います。

買った小豆にはもう正月マークが! うへー。
 

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