Yさんは、ご自分がメガネ女子だからでしょうか、ガラス体に異常なる関心をしめしています。
「このガラス体は自分のものだ」
と言わんばかりにひとりじめして離そうとしません。
いつまでも食らいついていたYさんが取り出したものは、コンタクトレンズでした。
ピンセットでなにやらいじくりまわしていたようでしたが、まさかイカのコンタクトレンズを剥がしていたとは……。
少々厚みがあるものの、どの角度から検証しても、人間のソレと区別がつきません。
生イカを持ち歩くといざという時に代用できるので便利、ということが判明しました。
私が近眼であることを理由に、Yさんはイカのコンタクトをしてみてくれと信じられない要求してきました。しかしそこは未来小姑の意地、素直にいうことをきくわけにはいきません。
そこで、「じゃあ食べてみてー」というYさんの言葉につい、「わかったよ」と返答してしまいます。
まず舌に乗せてから、前歯で噛んでみました。想像より固く、つぶすことは不可能なうえに、ものすごい粘着力。強力粘着性両面テープにもまさる粘着ぶりです。上歯と下歯がくっついてしまってビクともしません。
「イカの呪いでは……」
と一瞬あせりましたが、おもいっきりクチを開けて離し、下歯に密着していたガラス体の一部もやっとの思いでこすりとりました。まだベトベトしたものが歯にこびりついています。
疑似体験したい方は、セメダインを丸めて、半日ほど乾燥させたものを噛んでみるといいと思います。試したことはありませんが、おそらく同じ感触でしょう。噛んだ私が言うのですからまちがいありません。
味は「いくら」に似ていましたので、今後「いくら」を食べる時は
「イカの眼球と味が似ているわね」
とさりげなくグルメな自分を演出することができるわけです。
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