大きいことはいいことだ。

現代日本社会において、最も身近に存在する階級は何であろうか。

それはおそらく「ブラジャーのカップサイズ」だ。

果たしてブラジャーのカップサイズというのは、どのように決まっているのか？ 気になって調べたら、思いのほかあっさりした基準だった。

そこでブラジャーのサイズの最果て、ブラヒエラルキーの頂点に位置するであろう、「Zカップ」のブラジャーを作ってみることにした。

（text by 藤原 浩一）

ブラジャーのサイズとは

ブラジャーのサイズとはJIS規格に定められたところによると、トップバストのサイズとアンダーバストのサイズの差をランク分けしたもののようだ。Aカップの１０ｃｍから始まって、B、C、D、…とアルファベットが進むにつれて、それぞれ１２．５ｃｍ、１５ｃｍ、１７．５ｃｍ、…と２．５ｃｍずつ増えていくらしい。で、Zカップになるとその差はいくつになるかというと…

　１０＋２．５×２５＝７２．５（ｃｍ）

となる。 現実味がなくて全然わからない。これはやはりこの目で見て確かめないと。

Zカップのブラジャーを作るにあたって、乳房の部分には風船を使用したいと思う。その風船の大きさの計算をしなくてはならないわけだが、今回は新円おっぱいモデルを使う。本当なら楕円おっぱいモデルで計算したいですが、楕円の周の計算方法なんぞ知らんので無理です。

計算式は

となる。

乳房を模した風船は変形するので、２つの風船がぶつかってしまい減少する長さは、計算の過程で含めることができなかった乳房と胸が接する部分の誤差を補うものと考える。

これが本当に正しいかは定かでないが、今回は仮に半径１３ｃｍの風船を二つ使って、ブラジャーを作ることにした。

ちゃきちゃきつくろうぜ

実際に風船を膨らましながら、大きさを測り半径１３cm程度にする。そうしたら、Zくんのかぶりものを作るやり方で、生地をつなぎ合わせていく。ちくちくと、針で。

ドレッドノート級のおっぱいだから、弩乳か？ いや、夢でしか見られないようなおっぱいだから夢乳…、それとも爆乳を超えた核乳…、いやいや…。

体が行う地味な作業に対して、脳内ではそういった会議が白熱していた。

・・・と、その前に。

ここで、作業を続けて疲れたし、体を休めるためにも、合体させる前のブラジャーを着けてみようかと。

ほら、ホックとか練習しておきたいじゃない！

よし！　つけてみよう！

で、とりあえずつけてみると、胸が苦しい。サイズが小さかったのか、それともこういうものなのか。そして「ブラジャーを着けてる」という、なんとも気恥ずかしいような気持ちが。初めてブラをつけた女子もこんな気分なのだろうか。赤飯が食べたい。

その比類なきプレッシャーは、JISによる規格を超越し、まさに乳なる神、神乳と呼んでよいと言っても過言ではない。いや、過言か。過言だな。

バストトップのサイズはちゃんと測れているか定かではないが、概ね１５０ｃｍ前後でZカップと言えるだろう。

まとめ。

カップサイズの頂点とも言える、Zカップにあこがれて、実際に作ってみた。しかし、なんとも言えない心地がする。（下手なパーティーグッズみたいなものが出来たからではない。）考えてみれば、西洋の彫刻などをみるに、乳房は皆小ぶりで引き締まっている。日本の春画でもそれほど乳房が重んじられている様子はない。

ひょっとしたら巨乳至上主義というのは、現代のシステムによって外部から強制され、コード化された性的欲望の表れなのではないだろうか。そして、外部から指示された欲望を自分自身の欲望だと思い込んでいる…。

巨乳は虚乳、微乳は美乳。

巨乳をよしとするあなたの欲望が、本当にあなた自身のものなのか、もう一度問い直してみてはどうでしょうか。

…どうでしょうか、と。