最近のランドセルは昔と違ってカラフルだと聞く。従来までの黒と赤に加え、ピンク、オレンジ、ブルーなど、色のバリエーションが増えているのだ。
などと、入学シーズンでもないのに唐突にランドセルの話題に触れたのは、是非見てもらいたいランドセルを見つけたからだ。ヒョウ革、クロコダイル革、ニシキヘビ革で出来たランドセル。それら全てが本革だというのだから、カラフルどころの騒ぎではない。
早速、東京都墨田区のランドセル金具メーカー、三協総業さんにお邪魔してそのランドセルを見せてもらった。
(text by 住 正徳)
これが、本物のヒョウ革で出来たランドセルだ。 「カブセ」と呼ばれるランドセルのふたの部分に、本物のヒョウ革が縫い付けられている。
背面と肩ヒモの部分にもびっしりとヒョウ革。
「全部天然革ですからね。今となってはこれだけの革を用意するのは難しいでしょうね」
と、三協総業の薗部さん。
「今となっては」と薗部さんがおっしゃった様に、このランドセルが作られたのは今から30年以上も前のこと。薗部さんが6才になった時、小学校入学を記念してお父様(現・三協総業会長)から贈られたプレゼントだったのだ。
薗部さんは、実際にヒョウ革のランドセルを背負って6年間通学していたという。
薗部さんが使っていたランドセルは、カブセ部分にヒョウ革がある前述のタイプではなく、背面にヒョウ革が縫い付けられたタイプのもの。
「夏場は凄く暑かった覚えがあります。なんたってヒョウ革ですから」
少なくとも、僕の周りには背面がヒョウ革のランドセルを背負ってる同級生はいなかった。さぞかし目立ったのでは?
「背負ってる時は分からない訳ですから、それほどでもなかったと思います。でも、授業参観とかでランドセルを後ろのロッカーに掛けておくと、お母さんたちがざわめくんです。なんだこれ? って」
先生から注意された事は? 変わった事するな、とか。
「いえ、先生もうらやましがっていました」
先生の正直なリアクション。 そんなヒョウ革ランドセルの他にも、本革シリーズはまだある。
ワニだ。
もちろんこれも全部天然革。 今では入手困難な代物だ。
更に、
ニシキヘビの革。
デビット・リンチの映画に「蛇革は俺のシンボルだ」みたいな台詞が出て来るが、あの主人公がこのランドセルを見たらきっと欲しがるに違いない。
非売品です
今回ご紹介した本革シリーズのランドセルは、どれも非売品である。
30年前、百貨店のバイヤーから30万円で譲って欲しいとお願いされたらしい。30年前の30万円だから相当な金額だが、断ったという。お父様からのかけがえのないプレゼントなのだ。値段はつけられない。
「浜崎あゆみさんがヒョウ革のランドセルを譲って欲しいって言ってきたらどうします?」と聞いてみたら、「それはちょっと考えます」と薗部さん。
浜崎さん、チャンスです。
取材協力
株式会社三協総業 東京都墨田区東向島5-42-8 https://www.sakura-catv.ne.jp/~atom-amg/