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コネタ


コネタ902
 
分厚さ的に、どこまでがポテトチップか

「超厚」「厚切りポテトをじっくり揚げた」

どちらも最近見かけたポテトチップのあおり文句だ。どうやら、ポテチ界では今その「分厚さ」に人気が集まっているらしい。サクサク薄くて軽いのが売りだと思っていたポテチに新展開だ。

で、思った。これから先、どんどんポテトが分厚くなってきたとすると、最終的にそれってポテチじゃなくてフライドポテトになるんじゃないかと。ポテチがフライドポテトではなく、ポテチとしてあれるのはどれぐらいの厚さまでだろう。その厚みの限界を調査しました。

(text by 古賀及子

まずは問題の分厚いポテチを試食

検証のきっかけになった分厚いのが売りのポテトチップはコンビニを探すとあっさり見つかった。コイケヤの「超厚 オー! チップス」とカルビーの「堅あげポテト」だ。

前者は、これまでの3倍の厚さをアピール、後者は厚さプラスその堅さが売りの様子。どちらも2種類づつフレーバーが並んでいて、ポテチコーナーでかなり幅をきかせている。やっぱり厚さブームは来ているのだ。

ためしに「当社比厚さ約3倍!」と歌い上げる「超厚」と同じカルビーの「ポテトチップス」を買って比べてみた。


本当に3倍の厚みがあるのかたしかに分厚い

その厚さを定規で測ってみる。ところどころでバラつきはあるものの、ポテトチップはおおむね0.7mm、超厚は2mm。確かに約3倍だ。

食べてみると分厚い方はもうパリパリどころではないバリバリ音がした。すごい、ポテチというより煎餅みたい。炭水化物をダイレクトに感じる。

この「超厚」は地が編み目にカットしてあるが、普通にスライスして揚げるとどの程度の厚さまでポテチとして成立するのか。それでは、確かめていきましょう。

編み目がぶつかっている部分がとにかく厚い

ポテトチップの作り方

作り方は、ジャガイモを薄くスライスして揚げる。以上だ。2度揚げするとか、スライスしたら1日干すとかいろいろとテクニックはあるらしいが、基本的には切って揚げるだけでいい。

今回手作りするにあたってネットやら本やらで作り方をいろいろ調べてみたのだが、とにかくどのレシピにも「薄くスライスすることがポイント」と書いてあった。1mm以下というのが目安らしい。

味的にはメイクイーンより男爵が良いそう

手作りポテトチップの概念にはまだ「分厚さ」というのは上陸していないようだ。今日私がその扉をたたくわけですよ、息巻きます!

5段階にスライス

分厚さを変えて揚げくらべるため、4段階の厚さが調節できるというスライサーを買ってきた。0.5mm、1.4mm、2mm、3mmと調節できる。


この実験のためにあるかのようなスライサー0.5mmはさすがに透けるほど薄い

4段階に分けてスライス完了さらに手切りで5mmのも用意した

最初はかなり厚さにムラができてしまったスライス作業だが、切りまくるうちに均一にできるようになってきた。日本料理で、よく新人がかつらむきを練習するが、アメリカ料理ではスライスを練習するのかもしれない。てきとう。

スライスし終わったらしばらく水にひたす。デンプン質が溶けだしたらキッチンペーパーにとって水を切って、揚げていく。なんでも、パリパリのポテチ作りには高温の油でジャッと揚げるといいらしい。

180度の油でガンガン揚げた。

じゅわじゅわ揚げちゅう

さあ、1mm以上の厚みがあるポテトたちの中で、チップの領域に入れるのは果たして何ミリまでなのか。まずは揚げ後の様子をご覧下さい。


0.5mm 元気いっぱいパリパリ1.4mm 問題なくパリパリしてそう

2mm お、わりとパリパリですよ3mm 揚げ直後はパリパリだったが、すぐしなしなに2度揚げして無理矢理パリパリにした

5mm 見るからにチップではない。というか、すみませんこれ明らかに5mm以上ありますね


だんだんホクホクになっていく

早速実食。0.5mmは完全にパリパリだった。水分が飛ぶからか、揚げ前よりも揚げ後の方が薄くなっていて、0.5mmも無いんじゃないかという薄さだ。普通のポテトチップよりもグッと薄い。

1.4mmもまだまだパリパリだった。普通のよりちょっと分厚いくらい。食べ応えがあって美味しい。

問題はここから。まず2mm。円のまわりの部分がパリパリだったので、これはいけると思ったのだが、円の中心がホクホクしてしまっている。いや、ホクホクは結構であって実はこれがかなり美味しかったのだが、ホクホクという言葉はポテトチップの辞書にはない。ポテチ失格である。

食感のグラデーション

3mmはさらにホクホク部分が増え、見るからにこれはフライドポテトだろうという5mmはホクホクを通り越してホックホクであった。ああ、美味しい。美味しいのに申し訳ないが違うのだ、今日の趣旨とは。

以上、ポテトチップとしての限界の厚さは1.4mm程度と言うことが分かった、としたいのだが、調理法を少し何とかすれば、もっと分厚いポテトチップはできるんじゃないか。

じっくり揚げて分厚いけどパリパリを目指せ

さっきは普通のポテトチップを作るという前提で高温の油で揚げた。が、これを低温にしてじっくり揚げたらもう少しパリパリの部分が内部に進行するはずだ。

改めて、2mm、3mm、5mmを用意。今度はじっくり時間をかけて揚げることにした。

“ジュワッ”ではなく、“シュワー”ぐらいで根気よく揚げる

あ、なーんだ、最初から全部これぐらいの温度で揚げれば良かったんじゃん、と思うほどすんなり、分厚くてパリパリのポテトチップが完成した。おおー。


2mm すっかり反り返っていいかんじ

3mm ぷくーっとふくらんでこちらも上々

まず2m。食べると「バリッ」という音がした。おお、ポテトチップだ。ちゃんとチップとして成り立つ食感。そして、3mm。こちらも「ザクッ」という音が。

ただし、3mmのものは割ったらきれいに二つに割れてだいぶ堅く、どちらかというとお煎餅という感じ。

ホクホク感さえ消せばポテトチップとして成立すると思ったのは甘かったのか。ポテトチップたる限界は2mmから3mmなのかもしれない。

5mmのはどうなった


5mm たたくとカチカチいう


やや気落ちしつつも根性で揚げた5mmも食べてみる。「ガリッ」「ボリボリボリ」。美味しい。美味しいし、確かにポテトチップと味は同じなのだが、これ、ポテトチップというより完全に別の何かだ。何だろう。どこかで食べたことがある味なのだが。

あ!

フライドポテトだ。マクドナルドのフライドポテトに、ときどき細くて中まで揚がっちゃってガリガリのやつが入ってるだろう、あれだ。

ガリガリ

ホクホク感を消すことには成功した。が、それでもポテトチップは行くところまで行くとフライドポテトになるということが分かった。

もし、お菓子会社が今後「超ど級に分厚いポテトチップ」の販売を始めたら、それはおおむねフライドポテトのガリガリ部分と変わりないぜ! ということを突きとめた今回でした。でもそんなお菓子出たらぜひ食べてみたい。


 

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